更新日: 2021.07.03 その他暮らし

「届出印なんか、そもそもないけど!」 ちょっと慌てるかもしれない書類手続きとは?

「届出印なんか、そもそもないけど!」 ちょっと慌てるかもしれない書類手続きとは?
預金口座振替というサービスがあります。指定した銀行預金口座から定期的に自動引き落としで支払う仕組みで、公共料金、クレジットカード、毎月のマンション管理費や修繕積立金、毎年の会費など、いろいろな支払いが対象となっています。
 
利用経験があったり、今でも利用中だよという方も多いこのサービス。引き落としの銀行預金口座を途中で変えようとしたとき、ちょっと慌てる場合があるかもしれません。どんなことでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

ちょっと慌てた書類手続きとは

それは筆者の知人が経験したことで、ポイントをざっとまとめると【図表1】のような内容です。
 

 
状況をもう少し解説すると、知人がA銀行を変えようと思った動機は、その店舗網の少なさでした。入金や記帳のために一番近い支店に行くのも電車利用で小1時間。インターネットバンキングでの手数料も決して安くはないそうです。
 
こんな事情から、別に口座開設していたB銀行に変更しようとしたのです。こちらは、実店舗を持たずにインターネットによる出入金等が主体の「ネット銀行」といわれているところです(以下、こうした形態を単に「ネット銀行」といいます)。現金は提携銀行のATMを利用する形でしか出し入れができず、しかも硬貨(1000円未満の端数)は扱えません。
 
そんな不便さの一方で、こうした銀行では実店舗を維持するための経費や人件費がかかりません。そのため、預金金利は高めで、入金や引出の手数料や振込手数料は安め(一定回数までは無料の場合もあり)になるなどのメリットがあります。
 
知人も筆者と同世代(60歳代前半)。筆者ともども、ITとかデジタル化には決して明るくはありません。B銀行の口座開設も、よく思い返せばネット上で全部手続きを完了した。つまり、そもそも銀行届出印など登録していなかったことを遅ればせながら思い出したそうです。
 

結局、どうなったの

では、B銀行への変更はできなかったのか。結論からいうと、無事に手続きできたそうです。でも先述の「預金口座振替依頼書」には、届出印を必ず押すように強く求めたコメントがあったはず。一体どうやってクリアしたのでしょうか。
 
預金口座振替依頼書と届出印に関して、ネット銀行での解説の概要をいくつか例示してみます。
 

<ソニー銀行>

●預金口座振替依頼書には通常届出印を捺印する欄があります。
●ソニー銀行では届出印はありませんが、収納企業によっては捺印が必要な場合がございます。その場合は、任意の印鑑をご捺印ください。

 

<住信SBIネット銀行>

●当社では印鑑のご登録をいただいておりませんので、届出印の欄には任意の印鑑をご捺印ください。

 

<楽天銀行>

●楽天銀行には届出印がないため、印鑑は不要です。
●ただし収納企業により届出印が必要な場合には、任意の印鑑をご使用ください。

 
実は「なんだぁ」という内容ですね。知人も手元にあった三文判を押印して書類を提出し、最後にB銀行からメールで案内された内容を処理して、無事変更手続きが完了したそうです。
 
今では預金口座振替の新規手続きがネットでできるところも少なくありません。最初から「届出印なし」が前提であれば誤解もないのでしょうが、最初に届出印での書類手続きをしていると、口座を変更する際の書類上の注意書きを見て慌てることになりかねません。
 
預金口座振替については、全国銀行協会が事務取扱基準を定めています(※1)。その中で、預金口座振替依頼書の標準的な様式も示されていて、当然、銀行届出印を押印する建付けになっています。
 
収納代行企業には、大手銀行系列のところも少なくありません。銀行間で申し合わせた標準様式の記載内容を踏襲しているのも当然です。その結果、届出印がないのが当たり前となっているネット銀行の利用者が、慌てることになるかもしれない現象が発生するわけです。
 

まとめ

金融庁の銀行免許における業態で、「都市銀行」は、みずほ、三井住友、三菱UFJ、りそな、計4行です。「信託銀行」は計13行、そして「その他」が計16行、「地方銀行」と「第二地方銀行」は計100行。ネット銀行はどこも「その他」に属しています(※2)。
 
今回のような届出印の取り扱いの事例を見ても、都市銀行や信託銀行ほかが旧世代、「その他」が新世代といった雰囲気が感じられます。
 
双方に“世代間対立”があるわけでもないでしょうが、“新世代”の手軽さや便利さを享受するためには、利用する側にもITとかデジタル化のリテラシーや使いこなし術が必要になることを実感させられます。
 
[出典]
(※1)一般社団法人全国銀行協会「銀行業務・事務の円滑化」~「預金口座振替事務取扱基準」(預金口座振替依頼書の標準様式は7ページに掲載)
(※2)金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」~「預金取扱等金融機関」~「銀行」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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