更新日: 2021.08.10 子育て

日本学生支援機構の奨学金の知っておきたい落とし穴

執筆者 : 新美昌也

日本学生支援機構の奨学金の知っておきたい落とし穴
大学生の約3人に1人が利用している日本学生支援機構の奨学金を受けるには、いくつかの注意点があります。申込時に奨学金案内を熟読する方はあまり多くないかもしれません。
 
見落としがちだけれども、知らないと後悔するポイントをいくつか解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

入学前に必要な進学費用の不足分には利用できない。

入学前に必要な進学費用のうち、合格時に支払う初年度納付金は大きな出費のひとつです。これについては、学資保険などで備えているご家庭もあるかと思います。
 
しかし、この他にも、予備校の講習代、模擬試験代、オープンキャンパス参加費用、受験料、入学式に参加するためのスーツ代、パソコン購入費など、一つひとつは少額であってもまとめればかなりの額になるものもあります。
 
これらの費用が不足している場合、高校3年生の春に予約申し込みした日本学生支援機構の奨学金でまかないたいところですが、奨学金は進学後に振り込まれるため、入学前の進学費用の不足分には利用できません。
 
給付奨学金とセットになっている入学金と授業料の減免(高等教育の修学支援新制度)も利用できるのは進学先で手続きを済ませたあとですので、こちらもあてにできません。
 
初年度納付金のような大きな出費だけではなく、少額に思える出費もすべて洗い出しておきましょう。不足分には教育ローンでまかなうことができますので、早めに手続きを進めておきましょう。
 

労働金庫(ろうきん)の「入学時必要資金融資」は10月下旬以降でないと利用できない

低所得のため「国の教育ローン」を借りることができないとき、入学時特別増額貸与奨学金の採用候補者は申込時に選んだ金額(最高50万円)の範囲内で、労働金庫の「入学時必要資金融資」の利用が可能です。申込時には最高額の50万円を選択しておくことをお勧めします。
 
採用候補者の決定通知は10月下旬以降ですので、総合型選抜の入学金等には間に合わない場合がありますので注意しましょう。「入学時必要資金融資」が間に合わない場合に備えて、低所得者を対象とした社会福祉協議会の生活福祉資金「教育支援資金」も検討しておきましょう。
 
申し込みから融資まで基本的に1ヶ月以上はかかりますので、早めに担当窓口に相談するようにしましょう(参考:全国社会福祉協議会ホームページ)。教育支援費(授業料等)は月額6.5万円以内、就学支度費(入学金等)は50万円以内を無利子で借りることができます。
 

無利子の第一種奨学金「最高月額」の利用は、厳しい家計基準を満たさなければならない

第一種奨学金は、進学先が国公立か私立か、大学か短大・専門学校か、自宅通学か自宅外通学かにより、貸与月額の選択肢が決まります。例えば、私立大学に自宅通学する学生が選択できる貸与月額は5.4万円、4万円、3万円、2万円の4種類です。
 
このうち最高月額の5.4万円を借りるには最も家計基準が厳しい「第一種・第二種併用貸与」の基準を満たすことが必要です。多くの方は利用できないと考えておいたほうがよいでしょう。
 
ちなみに、会社員など給与所得者の世帯(4人世帯)では、家計基準の目安(上限)は、有利子の第二種奨学金が世帯年収1100万円、無利子の第一種奨学金が747万円、併用貸与が686万円となっています。
 

給付奨学金は進学先が対象校でないと利用できない

給付奨学金を利用できる進学先は、国または地方公共団体から一定の要件を満たすことの確認を受けた学校に限られます。
 
これ以外の学校に進学しても給付奨学金は利用できません。給付奨学金の採用候補者は進学先が対象校かどうか必ず確認してください。文部科学省のホームページで、学校名や所在県で対象校が検索できます。もっとも進学先に確認するのが確実です。
 
令和3年4月9日現在、学・短大は98%、高専は100%、専門学校は73%の学校が対象となっています(※1)。
 

アルバイトをしすぎると給付奨学金を受給できなくなる

給付奨学金の家計基準のうち所得に関しては、本人(学生)と生計維持者(原則、父母)の合計額によって基準を満たすかどうかが判定されます。
 
アルバイトなどで本人に所得があって住民税が課税される場合、所得の判定に影響がでます。支給区分が変更されたり、奨学金が停止されたりする可能性がありますので、アルバイトのしすぎには注意をしましょう。
 
本人(未成年)の年収が額面で200万円(成年は100万円)を超えると住民税を課税される場合があります(※2)。アルバイトをしすぎて学業に支障をきたし退学処分になった場合には、給付奨学金の返還を求められることがありますので、アルバイトはほどほどに行いましょう。
 

収入が少なくても資産が多いと給付奨学金は受給できない

給付奨学金を受給するには、収入基準だけでなく資産基準も満たす必要があります。具体的には申し込み時点での本人(学生)と生計維持者(原則、父母)の資産額の合計が、生計維持者が2人の場合は2000万円未満、1人の場合は1250万円未満となっています。
 
資産とは、現金やこれに準ずるもの(投資信託、投資用資産の金など)、預貯金、有価証券をいいます。土地・建物等の不動産、貯蓄型の生命保険や学資保険は資産に含まれません。
 
現預金の多い人は、申し込みまでに、保険に組み替えるというのも1つの手です。また、死亡保険金を受けとるときは一括ではなく、分割で受け取ったほうがよいケースもあります。
 
(※1)文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」
(※2)高等教育の修学支援新制度 文部科学省「高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)」 Q4-1-7
 
(参考・引用)
日本学生支援機構ホームページ
全国労働金庫協会「その他 ろうきんの生活応援融資制度」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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