更新日: 2021.08.24 その他暮らし

コロナ禍で知っておきたい、労働者の労務管理の疑問を解決!

執筆者 : 當舎緑

コロナ禍で知っておきたい、労働者の労務管理の疑問を解決!
第5波といわれる、新型コロナウイルスの影響が収まる兆しはありません。支援金や雇用調整助成金の特例も何度も延長されている状況で、会社が雇用している労働者の労務管理はどんどん判断の難しい事例が増え続けています。
 
「本人の体調が悪いとき」「家族に発熱者が出たとき」「子どもの保育園が休園になって預ける場所がないから欠勤する」など、さまざまなケースについて疑問が出るはずです。今回は、令和3年7月5日時点で更新された企業向け厚生労働省のQ&Aから抜粋した、新型コロナ時代の労務管理を考えてみます。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

労働者を休業させるときに確認したいこと

労働者を休ませるとき、それはいろいろなケースが考えられるでしょう。コロナウイルスの影響かどうかわからない発熱の症状があるとき、子どもの保育園や小学校が新型コロナウイルスの影響で休園、もしくは休校となったとき、新型コロナワクチンの接種を受けるときなど、労働者側は休みを申請すれば良いのです。
 
ですが、会社側からすれば、有給にすれば良いのか、休業手当を支払えば良いのか、それとも会社の就業規則を変更して、病気休暇の規定を作成すべきか迷うところでしょう。迷った時のために、以下の判断基準を参考にしてみてください。
 

(筆者作成)
 
原則的に、労働者が新型コロナウイルスに感染したのでなければ、労災保険法に基づく休業補償や健康保険法に基づく傷病手当金は支給されません。そのため、会社としては、その時点で有給なのか、無給なのか、欠勤にするのかなどを判断して給料計算に役立てないといけません。
 
本人が発熱などの症状があり、会社側が休業の指示を出した場合には、会社が休業手当を支払う必要があります。では、それ以外に一律に有給手当をつければ良いのでしょうか。
 
ここで注意点です。会社が有給取得を義務付けることはできません。もし、業務上の感染が疑えるのであれば、会社側としても協力する必要があるでしょう。医療従事者ではなくても、新型コロナウイルス感染が業務上とみなされるケースもありますので、会社は協力を求められれば、労働者の補償請求に協力してあげるとよいでしょう。
 
また、新たな受付は休止されているものの、新型コロナウイルスの職域接種が進んでいますが、その際にも有給を取得させるのであれば、あくまでも本人の希望が前提です。労働時間中にワクチン接種をする場合、出勤したとみなすのか、接種後に副反応が発生し、発熱など体調を崩した場合も適用できる病気休暇制度を新設するのかなど、会社側のルールを決めておくべきでしょう。
 

労働条件を変更するときに注意したいこと

新型コロナウイルスの影響が収まらない現状の中、子育て中の労働者や、住居が遠くて通勤時間が長時間かかる労働者のために、テレワーク制度を作ったり、労働条件を変更したりすることがやむを得ない場合もあるでしょう。そんな時の会社の対応で注意点をあげておきます。
 
労働契約の内容を変更する場合、会社が勝手に変更して通知してもそれで終わりというわけではありません。原則として、労働者との合意が必要となります。一方的に、就業規則を変更して不利益変更させることもできません。就業規則の変更に必要な労働者代表の意見書に記入するのは、必ずしも同意である必要がないといってもです。
 
ただ、次の要件を満たすことで労働条件を変更することは可能です。
 
(1)変更内容が、以下の事情などに照らして合理的であること

●労働者の受ける不利益の程度
●労働条件の変更の必要性
●変更後の就業規則の内容の相当性
●労働組合等の交渉の状況

 
(2)労働者に変更後の就業規則を周知させること
加えて、就業規則の作成や変更に当たっては、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表するものの意見を聴かなければなりません。
 
(出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け))
 
今後、新型コロナウイルスの影響がどこまで続くのかわかりませんが、これを機会に会社のルールをしっかりと見直してみることは企業のリスク管理としてもとても大切なことだといえるでしょう。
 
出典
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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