更新日: 2021.08.24 子育て

奨学金の返し方。お金に余裕のある時、ない時の対処法とは?

執筆者 : 宮﨑真紀子

奨学金の返し方。お金に余裕のある時、ない時の対処法とは?
奨学金の制度を利用して大学などに進学している方は多いです。貸与型の場合は、卒業後に無理なく返すことが重要です。制度に関する仕組みについて深堀りします。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

奨学金が返せない場合は

一般的に利用の多い日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、給付型と貸与型があります。返還(返済)が必要な貸与型の利用者は、令和元年度の実績で約127万人(出典:JASSO年報 令和元年度版)です。内訳は、第一種奨学金(無利息)44.7% 第二種奨学金(有利息)55.3%となっています。随分多くの人が利用していることが分かります。
 
奨学金の返還は、貸与終了後7ヶ月目から始まります。3月に卒業して10月から、基本的には最長20年間で返すことになります。とても長期間におよびます。申込時に「借り過ぎに注意しましょう」という警告があるはずですが、10年20年の間には、さまざまなことが起こります。
 
例えばコロナのような事態が起きた時、返還が困難になることもあります。返還が困難になった時は、なるべく早く対処することが重要です。方法としては2つあります。
 

(1)減額返還

月々の返還金額を2分の1または3分の1に減らすことができます。減らすことにより返還期間は延びますが、利息が増えて返還総額が変わることはありません。2分の1・3分の1は選ぶことができます。1年ごとの願出で、最長15年です。
 
返還方式として、所得連動返還方式を選択している人は利用できません。また延滞すると審査されませんので、延滞するまでに願い出ることが大切です。
 

(2)返還期限猶予

月々の返還を先に延ばすことができます。先に延ばした分、返還完了期間は延期されます。(1)と同様、利息が増えることはありませんので、返還総額に変更はありません。1年ごとの願出で最長10年です。(1)で減額返還中であっても、その返還が困難な場合は願い出ることができます。
 
返還は毎月27日に口座引落で行われますが、口座引落ができなかった場合は翌月にまとめて引き落とされます。引き落としが困難になってそのまま放置していると返還すべき金額も増えていきます。
 
さらに延滞するとクレジットカードが作れなくなるなど、困ったことになります。またその分を他の金融機関で借り入れると、負のスパイラルに陥ってしまいます。心配になったら、取りあえず早く対処方法をJASSOに相談することが大切です。
 
奨学金相談センター ナビダイヤル 0570-666-301(月曜~金曜 9:00~20:00(土日祝日・年末年始を除く))
 

余裕がある時は繰上返還も

奨学金の返還が困難になった場合の対処法について考えましたが、逆にお金に余裕がある時に繰上返還についても考えます。
 
就職して少し生活に余裕ができた時、余裕資金の使い道として、奨学金の繰上返還も選択肢に入れてはいかがでしょうか。奨学金は毎月口座引落されますので、他の光熱費などと同じく「毎月決まって支払う」感覚になっていると思います。
 
繰上返還すれば、15年間「毎月決まって支払う」の期間短縮ができるだけでなく、第二種奨学金(有利息)の場合は支払利息を減らすこともできます。JASSOのホームページ(※)に繰上返還例が掲載されています。
 
通常返還した場合と繰上返還した場合の返還金額表を参照すると、毎月の返還金額が同じでも内訳は違います。回数が進むと利息の占める割合が少なくなります。つまり早期に繰上返還するほうが、支払利息を減らす効果があることが分かります。
 
繰上返還には、全額繰上返還と一部繰上返還があります。手数料はかかりませんので、例えば「今年の夏休みは旅行に行けないので、その分を繰上返済する」というやり方も良いと思います。ライフプランを考えると、10年・20年の間には、結婚や出産、子育てや教育費などの費用がかかるイベントが想定できます。早期完済することで精神的な負担も軽減できるかもしれません。
 
借りる時はある程度時間をかけて返済計画を立てる場合も、返済途中で見直しをすることは少ないようです。奨学金だけでなく、住宅ローンやその他の借り入れにも共通することですが、自分の借り入れ状況を把握することは、家計収支の改善になります。順調に返済することが第一優先ですが、ひと工夫することも視野に入れてはいかがでしょうか。
 
(※)日本学生支援機構(JASSO)「奨学金」
 
(参考・引用)日本学生支援機構(JASSO)ホームページ
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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