更新日: 2021.08.26 子育て
高所得世帯は教育費の支援を受けられない? 支援策の年収制限は?
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さらに、大学の費用もかかります。私大の場合、進学する学部で学費が大きく異なりますが、理科系に進学した場合、4年間で約590万円かかります。(※1)(※2)教育費の支援策は多くありますが、高所得世帯は利用できるのでしょうか。
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執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
目次
改正で児童手当の特例給付について、高所得者が対象外
児童手当は中学生以下の子どもが対象です。3歳未満は1人あたり月1万5000円、3歳以上は月1万円(第3子以降は3歳から小学校卒業まで同1万5000円)が支給されます。子どもが2人いる会社員の夫と専業主婦(モデル世帯)の場合は夫の年収が960万円未満が対象で、現行法では960万円以上は特例給付として児童1人あたり月5000円が支給されます。
改正法により特例給付は、世帯主(世帯合算は導入せず、主たる生計維持者の所得で判断)の年収が1200万円以上は、特例給付が廃止されます(※3)。令和4年10月支給分から適用されます。なお、併せて、毎年受給者に提出を求めている現況届の届出義務は廃止される予定です。
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高所得世帯は高校等の教育費支援制度を利用できない
高校等の教育費支援制度には、授業料が無料になる「就学支援金」、授業料以外の教科書費・教材費・学用品・通学用品等を支援する「奨学のための給付金」があります(※4)。
さらに、東京都には、資格取得費用・検定試験費用等を支援する「給付型奨学金」があります。私立高校に通う場合は、「就学支援金」に加え、自治体独自の授業料軽減制度がある場合があります。
これらはいずれも所得制限があり、高所得世帯は利用できません。
例えば、就学支援金は、年収約910万円未満の世帯が対象で、支援額は年額11万8800円となっています。私立高校(全日制)に通う場合、年収約590万円未満の世帯の支援額は年額39万6000円です。
奨学のための給付金は、生活保護世帯、年収約270万円未満(住民税所得割非課税)の世帯が対象で支援額は年額約3万~15万円となっています。なお、年収は目安であり、世帯構成等によって変動します。
高所得世帯は奨学金を利用できない
大学生の約3人に1人が利用している、日本学生支援機構の奨学金も所得制限があります。
高校で申し込む予約採用の場合、貸与奨学金の4人世帯の年収の上限(目安)は、会社員等の給与所得者は、無利子の第一種奨学金が747万円、有利子の第二種奨学金が1100万円となっています。返済不要の給付奨学金は、約380万円未満の世帯の生徒が対象です(※5)。
なお、大学や専門学校進学後に申し込む在学採用では家計基準が異なります。
高所得世帯は「国の教育ローン」を利用できない
「国の教育ローン」も扶養する子どもの人数に応じて世帯年収の上限が設定されています。例えば、会社員などの給与所得者の場合、扶養する子ども2人の世帯年収の上限は原則890万円となっています。「国の教育ローン」は民間の教育ローンに比べ、金利や返済期間など有利な点が多いです(日本政策金融公庫ホームページを参照)。
「国の教育ローン」を利用できない場合、金利の高い銀行等の教育ローンを利用せざるを得ませんので不利になります。
高所得世帯は「大学独自の給付奨学金」を利用できない
大学独自の給付型奨学金の多くは「経済的困窮度」と「学業成績」を採用の基準としています。
例えば、慶應義塾大学「学問のすゝめ奨学金(入学前予約型給付奨学金)」は、父母の「令和○○年度の所得証明書」記載の収入・所得金額を合算した金額が給与・年金収入金額1000万円未満(税込)、事業所得金額514万円未満(税込)の者となっています(※6)。
上智大学修学奨励奨学金は「家庭の状況にもよりますが、家庭(父母合計)の年収が給与収入で 700 万円(税込)、または営業所得等で 400 万円を超える場合は採用が難しくなります」としています(上智大学ホームページより参照)。
このように、いくら勉強ができても高所得世帯の学生は、大学独自の給付奨学金を利用できない場合があります。
まとめ
大学等のお金が不足した場合、通常は「国の教育ローン」や奨学金などの利用が可能ですが、教育費の支援制度のほとんどには所得制限があり、通常、世帯合算で判断されるので高所得世帯は利用できません。
高所得世帯の親は、子どものために節約を心がけ大学等の教育資金を早めに準備することが大切です。
出典
(※1)文部科学省「平成30年度子供の学習費調査/調査結果の概要」
(※2)文部科学省「令和元年度 私立大学等入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
(※3)内閣府「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案の概要」
(※4)文部科学省「みんなに知ってほしい 高校生への2つの支援」
(※5)日本学生支援機構「奨学金」
(※6)慶應義塾大学「2022年度 慶應義塾大学 学問のすゝめ奨学金 募集要項」
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。