更新日: 2021.09.09 暮らし

高齢の親が自宅を売ってしまった! クーリング・オフできる?

執筆者 : 林智慮

高齢の親が自宅を売ってしまった! クーリング・オフできる?
高齢者の、自宅の売却に関するトラブルに関する苦情や相談が、消費生活センターに寄せられています。


●迷惑な勧誘、長時間の勧誘、うその説明によって、消費者が望まない契約をしてしまう
●自宅を売却し、家賃を払って住み続けるリースバックの仕組みを分からないまま契約
●不動産業者が提示した価格が相場より安いことに、後になって気付く
●判断能力が低下している消費者が契約し、後になって家族等が解約しようとしても、高額な解約料を請求される
●売却後に、シロアリや雨漏り等の修理費等を請求されることがある




などのトラブルです(国民生活センター令和3年6月24日報道発表より)。
 
よく考えたらやっぱり契約をなかったことにしたい。このような場合、「クーリング・オフ」できるのでしょうか?
 
林智慮

執筆者:

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

林智慮

執筆者:

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

不動産は特定商取引法の対象外

急に契約を持ちかけられて、よく考えないままに契約してしまった場合に、特定商取引法ではクーリング・オフという制度が利用できます。
 
クーリング・オフとは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です(国民生活センター「クーリング・オフ」より引用)。
 
特定商取引法では、申込書面(契約書面)を受け取ってから、以下の期間中は無条件で解約できます。
 

●訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入・・・8日間
●連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引・・・20日間

(ただし、通信販売はクーリング・オフの対象外です。不意打ちではなく、あらかじめ広告情報を得て考えた後に申し込むからです)

 
ところで、特定商取引法は、特定の商取引に限定されています。特定商取引法は、消費者が業者のいいようにされないように、消費者を保護するための法律です。そのため、事業者間取引、海外にいる人に対する契約、国や地方公共団体が行う販売や役務等は、特定商取引法の適用除外です。
 
その他にも、例えば、金融商品取引法や宅地建物取引業法等、他の法律の規定によって、購入者や役務の提供を受ける者の利益を保護することができると認められる、販売または役務の提供として政令で定めるものについても、特定商取引法が適用されません(特定商取引法第26条)。
 
自宅を売る場合は、特定商取引法ではなく宅地建物取引業法が適用されます。
 

宅地建物取引業法にもクーリング・オフはあるが・・・

宅地建物取引業法37条の2に、クーリング・オフ(事務所等以外の場所においてした買受けの申し込みの撤回等)についての条文があります。
 
しかし、『宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約について』と条文にあり、業者が自ら売り主である場合に限られます。ただし、自宅を売る場合は、個人が売り主で業者が買い主です。業者自ら売り主ではないので、クーリング・オフの対象外です。
 
特定商取引法の「訪問購入」は、業者の買い取りについてもクーリング・オフができますが、宅地建物取引業法では業者から買う時しかクーリング・オフができません。自宅を売却したら、クーリング・オフができないことを覚えておきましょう。
 
そして、契約する意思がないなら、きっぱりと断ること、よく分からないまま契約をしないことを忘れないようにしましょう。不安に思ったら、近くの消費生活センターや188(消費者ホットライン)へ相談しましょう。
 

業者の禁止行為を記録して、免許行政庁に知らせる

一方、国土交通省では、不動産業者の禁止行為を免許行政庁(国土交通省または都道府県知事)に知らせるよう、呼びかけています。
 
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が契約の締結の勧誘をする際に、次の行為を禁止しています。
 

〔1〕不確実な将来利益の断定的判断を提供する行為(法第47条の2第1項)
〔2〕威迫する行為(法第47条の2第2項)
〔3〕私生活または業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させる行為(法施行規則第16条の12第1号のヘ)
〔4〕勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号または名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行う行為(法施行規則第16条の12第1号のハ)
〔5〕相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(法施行規則第16条の12第1号の二)
〔6〕迷惑を覚えさせるような時間の電話または訪問する行為(法施行規則第16条の12第1号のホ)

(国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください!」より引用)

 
つまり、

●断ったにもかかわらず、しつこい電話勧誘
●長時間、電話を切らせてくれない
●迷惑な時間(深夜や早朝)に電話をかけてきた
●脅迫的な発言
●自宅に押しかけてきて、強引に契約を迫られた
●よく考える時間を与えず、契約締結を迫る
●契約締結時にうその説明を受けた 

などの、禁止行為をした業者について、「日時」「勧誘してきた会社名」「所在地」「免許番号」「担当者名」「具体的なやり取り」を記録して、その不動産会社の免許行政庁に報告しましょう。
 
(宅建物取引業者の免許行政庁の検索は、国土交通省 建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで確認します。国土交通大臣免許業者、都道府県知事免許業者どちらも検索できます)
 
また、個人情報取扱事業者は、個人情報の取り扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めることとされているため(個人情報保護法第31条第1項)、本人からの申し出によりデータ消去等に応じる場合もあります。事業者の個人情報相談窓口に対し、データ消去等の申し出をしておくと安心です。
 
(参照・引用)
国民生活センター 令和3年6月24日報道発表「高齢者の自宅の売却トラブルに注意 -自宅の売却契約はクーリング・オフできません! 内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-」
国民生活センター「クーリング・オフ」
国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください!」
国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者