更新日: 2021.09.29 その他暮らし

クーリング・オフできる契約って? できない場合は諦めるしかないの?

執筆者 : 林智慮

クーリング・オフできる契約って? できない場合は諦めるしかないの?
私たちの生活は、さまざまな「契約」で成り立っています。賃貸住宅、スマホの購入、電子書籍や音楽配信などの契約書を交わすものはもちろん、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで商品1つ買うことも売買契約により成り立っています。
 
契約は、契約の申し込みに相手が承諾すると成り立ちます。
 
いったん契約が成立すると、一方から勝手に取り消すことはできませんが、事業者の不当な勧誘等により、なかば無理やり契約させられるという悪徳なものもあります。「おかしい……」と思いつつも解約ができないと思っているその契約、取り消しができるかもしれません!
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

まず、クーリング・オフ(無条件解約)できるかどうかを見る

事業者と消費者の間には、情報の量や質、交渉の格差があります。事業者に都合の良いように話を持って行かれ、思いもよらぬ意思表示をしてしまうこともあります。
まず、その契約がクーリング・オフ(無条件解約)できるかどうかを見ましょう。業者から法定書面が交付されています。
 
消費者を守るために、契約が成立した後でも、消費者に一定の熟慮期間を与えて、期間内であれば無条件で消費者から一方的に解約できるのがクーリング・オフです。
 
特定商取引法の場合、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入は8日間、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引は20日間の熟慮期間があります(通信販売はクーリング・オフの対象外です)。
 
法律で定められた事項を記載した書面を受け取った日を含めた日数です。もし、該当する取引で、規定の日数が過ぎても書面が交付されていない場合は、クーリング・オフができます。
 
他にも、宅地建物取引業法(宅建業法)は、事業者が売り主で、業者ではない者が宅地建物を買う場合で、かつ、事務所以外の場所で契約した場合は、クーリング・オフできます。また、金融商品取引法では、投資顧問契約のみクーリング・オフできます。
 
取り消されると、最初から無効であったとされ、双方受けていた利益は返還します。具体的には、事業者に内容証明郵便を送ります。
 

クーリング・オフができない場合はどうする?

ところで、適用外や熟慮期間が過ぎてクーリング・オフができない場合、取り消しができないのでしょうか。
 
もし、業者がクーリング・オフ妨害をした場合、クーリング・オフは延長されます。そうでない場合は、消費者契約法に従います。
 
事業者の不当な勧誘によって契約した場合や、消費者の不利な契約条項がある場合は、消費者契約法によりによる契約の取り消しができます。消費者契約法は事業者と消費者の間で締結したすべての契約(労働契約を除く)が対象となります。
 
事実と違うことを言われた(不実の告知)、絶対にもうかると言われた(断定的判断の提供)、良いことばかり告げて重要な不利益な事をワザと言わない(故意による不利益事実の不告知)、これらによって『誤認』してしまい契約した場合や、契約するつもりはないので帰ってほしいと伝えても帰らない(不退去)、帰りたいのに帰れない(退去妨害や監禁)ので、『困惑』して契約した場合。
 
そして、解約した場合に、消費者が大きく不利益を被る契約条項(事業者の損害賠償責任を免除する、消費者が支払う違約金の額を過大に設定する、年14.6%以上の遅延損害金を定める、消費者の利益を一方的に害する)による契約は、取り消しができます。
 
取り消しができることに期限があり、間違いに気付いてから1年、契約締結から5年間です。ただし、消費者による『誤認』『困惑』の証明が必要です(クーリング・オフは無条件解約)。
 
他にも、訪問販売や電話勧誘販売で、通常に必要とされる分量を著しく超える量の商品を買わされた場合(過量販売)は、契約してから1年以内の解除期間があります。
 
また、連鎖販売取引や特定継続的役務提供の場合は、クーリング・オフの期間が過ぎてしまっても、残りの契約について解約が可能です(違約金が必要な場合もあります)。
 

制限行為能力者

ところで、未成年者が法律行為をするときは法定代理人の同意が必要です。同意を得ず行った契約は、取り消すことができます(未成年者取消権)。被年後見人・被保佐人・被補助人の制限行為能力者(保佐・補助は特定の法律行為について)も同様です。
 
取り消したら最初から無効となり、双方が利益を全額返還しなければなりませんが、例えば化粧品を開封して使っていても、使いかけの商品を返品すれば良く、代金は全額の返金を受けます。
 
そして、契約をする人が意思能力を持っていない場合(認知症等)は無効です。また、公序良俗違反の契約(犯罪にかかわる、人倫に反する、ギャンブル、人権侵害や暴利行為)は、そもそも無効です。
 
解約できるかどうか不安なときは、188(消費者ホットライン)、お近くの消費者センターに相談しましょう。また、未成年者取消権は、現行では20歳未満が対象ですが、令和4年4月1日より18歳未満が対象になります。成年年齢が2年早まります。成人までに契約の知識を身につけておきたいですね。
 
出典
岩見沢市消費者センター「消費者契約法による契約解除」
山形県 最上消費者センター「最上消費者センターニュース8月号」(令和2年8月1日発行)
消費者庁「消費者契約法」
消費者庁「あなたの契約、大丈夫?」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者