「自宅で荷物を受け取って転送するだけで数千円」危険なアルバイトの実態とは
配信日: 2021.10.26
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、在宅アルバイトを探す人が増えています。令和3年9月16日、国民生活センターは、10代20代の若者に向けて「荷受け代行」「荷物転送」についての注意喚起を行っています。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
在宅で簡単なアルバイト?
自宅にいながら簡単に稼げる、「荷受け代行」「荷物転送」アルバイト。受け取って転送するだけに見えますが、通常のネットショップでは、贈り物等で自宅以外の送り先を指定することができるのに、なぜ、このアルバイトがあるのでしょうか。事例をご紹介します。
SNSや知人から在宅アルバイトを紹介され、相手に連絡をとると、「電化製品や電子機器を指定の場所に送るだけ」「1件ごとに数千円支払われる」と説明を受けます。
続いて「このアルバイトをするためには、身分証明書が必要」といわれ、相手に身分証明書の画像データ、さらに、住所・氏名・生年月日、電話番号、報酬を受け取る銀行口座を伝えます。荷物が来たら、指示どおりに開封せずそのまま転送します。そのため、中身が分かりません。
ところが、この「荷受け代行」「荷物転送」の荷物の中身は、実は、携帯電話やSIMカード等ということがあります。携帯電話やSIMカードは本人確認が必要ですが、相手に伝えた個人情報を勝手に使われて、自分の名義で契約されています。新規契約の送り先は本人確認の住所に送られるため、一度自分の自宅で受け取る必要があるのです。
忘れた頃に、身に覚えのない通信料の請求が来て、そこでやっと自分名義の携帯電話が不正取得されたことに気付きます。
勝手に自分名義の携帯を契約されると、何が問題?
オレオレ詐欺などの携帯電話を使った犯罪を防ぐために携帯電話不正利用防止法がありますが、同法により、携帯電話等の契約には本人確認が義務となっています。個人情報の不正利用での携帯電話の取得は、この法律に違反すると考えられています。自分名義の携帯電話が、犯罪に使われてしまうかもしれません。
また、支払い義務は契約者にあります。荷受け代行の相手が「こちらで払うから、払わなくて良い」と言ったとしても、実際は支払いがない場合は契約者に請求が来ます。契約に使われたクレジットカードが不正利用の場合も、後で契約者に代金の請求が来ます。
解約するには、違約金や端末代金で、1契約あたり数万円の支払いになることもあります。
万が一月額利用や通話料が支払えず強制解約になると、電気通信事業者協会の「不払い者情報交換制度」に登録され、今後携帯電話を持つ際に契約できなくなる可能性もあります。料金に端末代金の分割払いが含まれている場合は、信用情報機関に事故情報が登録されてしまい、クレジットカードやローンの審査が通らなくなります。
「荷受け代行」「荷物転送」は絶対にしない!
収入を得ようとして応募したアルバイトなのに、多額のお金を支払わされるだけではなく、犯罪に使われるかも。「荷受け代行」「荷物転送」は絶対にやってはいけません。
どこへでも荷物が送られる時代にわざわざ個人に転送を頼むのは、そこでしか受け取れない物(本人確認の住所にしか送られない物)を手に入れたいからです。アルバイトの仕事の内容に注意しましょう。
そして、運転免許証や健康保険証、銀行口座などの個人情報を安易に教えないこと。不正取得をされるのは、携帯電話だけではありません。
また、アルバイトを始める前に、家族や周りの人に相談することも大切です。もし、被害に遭ったら、1人で悩まず、すぐに188(消費者ホットライン)へ相談しましょう。
出典
国民生活センター 平成28年7月22日報道発表「「荷受代行」・「荷物転送」アルバイトにご注意!(速報)」
国民生活センター 令和3年9月16日報道発表「–怪しい副業・アルバイトのトラブル- 簡単に稼げて高収入?!うまい話には裏がある…-」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者