更新日: 2021.12.07 子育て

国の教育ローンと日本学生支援機構の奨学金、最近の改正事項を知っておこう

執筆者 : 新美昌也

国の教育ローンと日本学生支援機構の奨学金、最近の改正事項を知っておこう
大学等に進学するにあたって進学費用が不足する場合、日本学生支援機構の奨学金がよく利用されていますが、奨学金は進学後に振り込まれるため、入学金などには利用できません。進学前の不足分は教育ローンでまかないます。これらの最近の主な改正事項を押さえておきましょう。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

国の教育ローンの改正事項

国の教育ローンは、国が株式の100%を保有する日本政策金融公庫の教育ローンです。
 
民間金融機関の教育ローンと比べ、「世帯年収の上限がある」「金利が固定金利のみ」「ひとり親など家庭の状況に応じた金利・返済期間・保証料の優遇がある」「自治体による利子等補給が受けられる場合がある」「在学期間中は元金の返済を据え置き、利息のみの返済ができる」「日本学生支援機構の奨学金との併用ができる」などの特長があります。
 
高校、大学、専門学校などの入学前であっても学費や下宿代などのまとまった費用を、350万円(一定の場合450万円)の範囲内で借りることができます。奨学金の借り主は学生ですが、国の教育ローンは保護者が融資を受け保護者が返済します。
 

▽2021年11月1日より受験費用が合格前でも利用できるようになりました。

大学などの受験料、受験のための交通費・宿泊費などの受験費用は、これまで大学などの「合格後」に融資されていましたが、「合格前」でも利用できるようになりました。
 
なお、入学する学校の入学金や授業料は、変更前と同様に「合格後」に融資を受けることになります。
 

▽2021年11月1日より金利が変更になりました。

民間金融機関の金利は変動金利が主流ですが、国の教育ローンの金利は完済まで変動しない固定金利のみです。
 
金利は年2回見直しを行われ、5月と11月のそれぞれ1日前後に改定されます。ただし、市場金利が大きく変動した場合には、5月と11月以外にも金利を改定することがあります。2021年11月1日に、年1.66%から年1.65%に改定されました。
 

▽2020年4月からの融資限度額が拡充!

融資限度額は、改正前は、子ども1人あたり350万円、留学資金の場合450万円でした。改正により、(1)自宅外通学、(2)修業年限5年以上の大学(昼間部)、(3)大学院のいずれかの資金に利用する場合も融資限度額が450万円に拡充されました。
 

日本学生支援機構の奨学金の改正事項

日本学生支援機構(旧日本育英会)の貸与奨学金は、学校を通じて、生徒(学生)自身が貸与を受け、卒業など貸与終了後に生徒(学生)自身が返済します。高校、大学、専門学校などへの「進学後」に資金が生徒(学生)自身の口座に毎月一定額が振り込まれるといった特徴があります。
 
返済が必要な貸与型奨学金には無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金、有利子の入学時特別増額貸与奨学金があります。また、原則返済不要の給付型奨学金があります。
 

▽高等教育の修学支援新制度がスタート

今までにない最も大きな変更は、2020年4月から「高等教育の修学支援新制度」がスタートしたことです。
 
経済的な理由で大学等進学を諦めないように、という趣旨から、大学等の授業料・入学金の免除または減額と、日本学生支援機構の返済義務のない給付型奨学金がセットになったものです。
 
住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)および準ずる世帯(第Ⅱ・Ⅲ区分)の学生が対象です。給付奨学金だけではなく、授業料等の減免を受けられるのは画期的です。
 
大学等で給付奨学生として採用された場合、支給額は私立大学(昼間部)に自宅から通学する場合、第Ⅰ区分(満額支給)は月額3万8300円、第Ⅱ区分(3分の2支給)は2万5600円、第Ⅲ区分(3分の1支給)1万2800円です。入学金は最大26万円免除、授業料の減免は最大70万円です(第Ⅰ区分)。
 
なお、給付奨学金に採用されるためには、資産基準、学力基準も満たす必要があります。資産基準は、生計維持者が2人の場合2000万円未満、1人の場合1250万円未満であることが必要です。
 
学力基準については(1)高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること、または(2)将来、社会で自立し、および活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること、となっています。高等教育の修学支援新制度は、学力よりも学ぶ意欲を重視する制度となっています。
 
ただし、奨学金の対象でない大学等に進学した場合は、給付奨学金や授業料減免等を受けることができませんので注意が必要です。また、成績が著しく悪い場合などは受給済みの奨学金の返還を求められる場合がありますので、しっかり学業に励んでください。
 
なお、この新しい給付奨学金と併せて第一種奨学金の貸与を受ける場合、貸与を受けられる月額の上限額が制限されます。
 

▽2020年4月より在学猶予制度の取り扱いが変更されました。

大学、大学院、高等専門学校、専修学校の高等課程または専門課程に在学している期間は、願い出により、最短の卒業予定年月まで返還期限が猶予される「在学猶予制度」があります。
 
この制度は本来、在学中の返還を猶予することにより、在学中に貸与終了した学生が、学業に専念して将来の返還に備えるように便宜を図ったものですが、この制度を悪用し返還を制限なく先送りにするケースがあることを踏まえ、在学猶予制度の適用期間を「無制限」から「最長10年」に変更しました。
 
出典
日本学生支援機構 ホームページ
日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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