低所得者世帯やひとり親世帯が受けられる進学支援にはどんなものがある?
配信日: 2021.12.10
そこで今回は、低所得者世帯やひとり親世帯への「高等教育に対する進学支援」について、どんなものがあるか見ていきましょう。
低所得者世帯・ひとり親世帯とは
低所得者世帯とは……
「低所得者世帯」とは、明確な定義はありませんが、住民税非課税世帯を指すことが多いです。
平成22年の厚生労働省の調査によると、総世帯数約4674万世帯のうち、収入が最低生活費1(生活扶助、教育扶助)未満の世帯は約231万世帯で約5%、最低生活費2(生活扶助、教育扶助、住宅扶助)未満の世帯は約311万世帯で約7%となっています。(フロー所得のみの試算)(※1)
またひとり親世帯とは……
「ひとり親世帯」とは、父(または母)のいない子(未婚の20歳未満の子)が母(または父)によって養育されている世帯のことをいいます。
「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯は約123万世帯、父子世帯は約19万世帯で合計約142万世帯となり、そのうち母子世帯が占める割合は約87%を占めています。(※2)
低所得者世帯・ひとり親世帯の進学支援とは
家計が苦しい家庭を支援し、進学の意欲がある学生に修学のチャンスを与えるため、従来の奨学金制度(貸与型と給付型)に加え、令和2年4月より実施されている「高等教育の修学支援制度」があります。
ここでは、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校を対象にした修学支援制度について見ていきます。
具体的な内容としては、従来の奨学金制度に加え、「授業料等減免制度の創設」や「給付型奨学金(返済義務なし)の拡充」が追加されました(※3)。
この奨学金の対象校は、国または自治体の要件を満たした大学・短期大学・高等専門学校・専門学校です。対象者は、「住民税非課税世帯、またはそれに準ずる世帯の学生」で生活保護世帯も含まれます。
この制度は、修学しやすくするために対象者の要件は緩和され、進学前の人については成績だけではなく、レポート等で本人の学習意欲を確認することになっています。ただし進学後の学習状況にはある程度の要件が課されます。
なお高校生への修学支援については、授業料を支援するための「高等学校等就学支援制度」と、授業料以外の教育費の負担を軽減するための「高校生等奨学給付金」などがあります(※4)。
授業料等減免制度とは
「授業料等減免制度」とは、対象者の要件を満たした学生の授業料等を減免する制度で、各対象学校別に、授業料の減免の上限が決まっています。(※3)
授業料等減免の上限額は年間で以下の通りです。(住民税非課税世帯の場合)
(1)大学
国公立 (入学金)約28万円 (授業料)約54万円
私 立 (入学金)約26万円 (授業料)約70万円
(2)短期大学
国公立 (入学金)約17万円 (授業料)約39万円
私 立 (入学金)約25万円 (授業料)約62万円
(3)高等専門学校
国公立 (入学金)約 8万円 (授業料)約23万円
私 立 (入学金)約13万円 (授業料)約70万円
(4)専門学校
国公立 (入学金)約 7万円 (授業料)約17万円
私 立 (入学金)約16万円 (授業料)約59万円
給付型奨学金とは
「給付型奨学金」とは、学校生活を送るのに必要な学生生活費(食費・住居費・交通費など)を補助するもので、返済の必要がありません。(※3)
給付型奨学金の給付額は年間で以下の通りです。(住民税非課税世帯の場合)
(1)国公立大学・短期大学・専門学校
(自宅生)約35万円
(自宅外生)約80万円
(2)国公立高等専門学校
(自宅生)約21万円
(自宅外生)約41万円
(3)私立大学・短期大学・専門学校
(自宅生)約46万円
(自宅外生)約91万円
(4)私立高等専門学校
(自宅生)約32万円
(自宅外生)約52万円万円
その他の奨学金制度とは
その他の奨学金としては
(1)自治体の奨学金制度
貸与型と給付型があります
(2)各大学の奨学金
学校独自の制度で返還免除型や減免型があります
(3)民間の奨学金制度
民間企業やあしなが育英金などがあります
(4)新聞奨学制度
働くことを条件とした奨学金制度です
などがありますが、それぞれに対象者の要件は異なり、貸与型の場合は返済方法も変わります。
まとめ
教育の機会均等をうたい修学支援制度も大分拡充してきましたので、進学の夢をあきらめることなく、目標に向かって進んでいくことができるようになりました。
奨学金の種類はたくさんありますので、進学を目指す人は自分の進路に合った奨学金を見つけ応募しましょう。ただし「貸与型の奨学金を」借りた場合、利子がつくものもあり、返済義務が生じますのでよく検討するようにしてください。
出典
(※1)厚生労働省 生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について
(※2)厚生労働省 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について
(※3)文部科学省 高等教育の修学支援新制度
(※4)文部科学省 高校生等への修学支援
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表