更新日: 2021.12.27 その他暮らし

「Wきっぷ」といわれてピンとくる? ご当地ならではのおトクな割引切符とは

執筆者 : 上野慎一

「Wきっぷ」といわれてピンとくる? ご当地ならではのおトクな割引切符とは
先般、福島方面を旅する機会がありました。JR福島駅の構内で見かけたある広告ポスターで「おやっ」と思わされたのは、おトク度合いの大きな違いでした。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

福島で目にした「Wきっぷ」とは

普段の生活エリアで電車・地下鉄・バスなどを利用していると、運賃が割安に設定された切符や回数券の情報が耳に入ってくることがあります。実際に利用して、おトク度合いを実感している方も少なくないでしょう。
 
旅先で、そのエリアだけのこうした乗車券の存在を目にすると、いつもは触れる機会がないだけに新鮮な思いがするものです。
 
福島駅で見たポスターで広告されていたのは、「Wきっぷ」(※1)。2枚セット1ヶ月間有効で、往復利用や片道2回(2人)利用ができるもの。別に特急券を購入すれば、新幹線の利用も可能です。掲載されていたのは、次のような概要でした。
 

<区間> <価格(大人)> <普通運賃(大人2回分)> <おトク金額>
福島~仙台 1560円 2680円 1120円
福島~郡山 1460円 1720円 260円

 
距離(営業キロ)は、福島・郡山間に比べて福島・仙台間は7割以上長く、どちらの運賃も同じテーブル「幹線」で計算されますので、普通運賃(大人、切符)が、福島・郡山間に対して福島・仙台間が6割近く高くなるのは当然でしょう。
 
しかし一見して感じるのは、2つの区間でのWきっぷのおトク度合いの大きな違い。行き先が仙台ならば通常の運賃に比べて割引率が40%以上ですが、郡山だと15%程度しかありません。どうしてなのでしょうか。
 

おトク度合いに大きな違いがあるワケ

その違いは、他の交通機関との競合があるかどうかでしょう。福島・郡山間は、JR在来線で50分ほどです。高速バスも運行(片道運賃900円、専用回数券利用で同800円)されていましたが、赤字や台風災害の影響で2019年10月に運休し、その後運行終了しています。
 
一方、福島・仙台間の高速バスは1日片道18便が運行(片道運賃1300円、専用回数券利用で同1100円)され、乗車時間約1時間20分もJR在来線利用とほぼ同じ。片道運賃の優劣は、[JRWきっぷ780円 < バス回数券1100円 < バス運賃1300円 < JR普通運賃1340円]となかなか熾烈です。
 
このWきっぷ、仙台・山形間にも設定があります。普通運賃(大人2回分)2340円のところ1560円と、約33%割引のおトクさです。こちらも、高速バスが多数運行(片道運賃1000円、専用回数券利用で同900円など)され、乗車時間約1時間10分もJR仙山線快速より(道路混雑がなければ)短くなっています。
 
こちらの片道運賃の優劣も、[JRWきっぷ780円 < バス回数券900円など < バス運賃1000円 < JR普通運賃1170円]。鉄道と高速バスがしのぎを削る区間として有名です。
 
競争がある環境下では、交通機関利用者は割引措置の恩恵を受けられる場合が多い。このことは首都圏や近畿圏などに限らず、その他の都市エリアでも同じであることを実感させられます。
 
一方で、回数券や割引切符を廃止したり縮減したりする動きも進んでいます。採算性を高めるとともに、紙の切符や窓口での対面販売をネットによる予約・購入、場合によってはICカードでの乗下車に切り替えていこうとする。つまり、省力化・デジタル化・ペーパーレス化の流れにもつながっているのです。
 
今回のWきっぷと同じように、JR九州でも使い切りやすい2枚の回数券型割引乗車券「2枚きっぷ」がありますが、今年2021年4月以降その多くが販売終了となるなど見直しが進んでいます(※2)。
 

まとめ

コロナ禍も、緊急事態宣言が今年9月30日をもって全都道府県で解除されて小康状態が続いています。予断は許しませんが、観光支援事業「Go To トラベル」も来年2022年1月から2月頃に全国レベルで再開する見通しが喧伝されています。
 
旅を個人で手配する場合でも、目的地との往復交通と宿泊がパッケージとなっている商品が多彩に用意されています。そのため、飛行機、新幹線、特急などの往復交通手段があらかじめ決まっている旅のスタイルが少なくありません。
 
しかし、目的エリアに行ってからさらに都市間を移動するような旅程であれば、普段の生活圏の中ではなじみのないおトクな切符が利用できる場合があるのです。手間は、出掛ける前のちょっとした下調べだけ。覚えておいて損はないでしょう。
 
[出典]
(※1)JR東日本「おトクなきっぷ」~「W(ダブル)きっぷ(2枚つづり)」
(※2)JR九州「割引きっぷ見直しのお知らせ」(2020年12月24日)
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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