更新日: 2022.01.08 子育て

奨学金の返済が厳しい…。返済を猶予する方法とは?

奨学金の返済が厳しい…。返済を猶予する方法とは?
大学進学において、およそ半数の学生は奨学金を利用しているようです。奨学金には返済不要な給付型の奨学金もありますが、貸与型の奨学金の場合は社会人になってから返済が始まります。
 
その返済が厳しくなった場合には、どうしたらよいのでしょうか?
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

奨学金についておさらい

奨学金とは、経済的事情で大学や専門学校への進学をあきらめないよう、国や自治体、大学や企業などが各自で設けている「奨学金制度」により、希望者に対して経済面の不安を解消するために給付あるいは貸与されるものです。
 
一般的に奨学金は次の2つの種類があります。


・給付型(基本的に奨学金の返済は不要)
・貸与型(低金利もしくは無利子で借りる奨学金で返済の義務あり)

貸与型では、一定の条件を満たすことで返済義務が免除されるものもあります。
 
奨学金の対象となる条件には、家庭の収入や資産状況、また本人の学業面での成績などがありますが、一般的には貸与型よりも給付型の条件の方が、より経済面で困っている人が対象となるような基準となっています。
 

どのくらい奨学金を借りているの?

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が実施している奨学金制度は、国内で最も知られている奨学金制度の1つです。ここでは返済義務が生じる日本学生支援機構の貸与奨学金を参考に、どのくらい奨学金が借りられているのか見ていきます。
 
日本学生支援機構の貸与奨学金には、以下の2種類の奨学金があります(貸与月額は令和2年度以降採用分)。


・第一種奨学金(無利子、最高貸与月額6万4000円)
・第二種奨学金(有利子、最高貸与月額12万円※)

※大学院の場合は最高で15万円。また進学先によっては2万円、4万円または7万円といった増額が可能。

上記の他にも入学時特別増額貸与奨学金がありますが、これは入学した月に第一種もしくは第二種奨学金に加えて一時金として増額して貸与する利子付きの奨学金で、単独での貸与はありません。
 
第一種奨学金の貸与月額は、対象学校の種類(大学・短期大学・専門学校や国公立・私立など)や自宅通学・自宅外通学かなどによって、2万円や4万円といった選択肢の形で月額が設定されています。
 
一方、第二種奨学金の貸与月額は、大学の場合で月額2万円~12万円(1万円刻み)となり、その金額を自由に決められます。また、第一種奨学金と第二種奨学金は併用することも可能です。
 
なお、令和2年度から始まった新しい給付奨学金の支給を受ける場合は、第一種奨学金の月額が調整(減額)される場合がありますが、第二種奨学金には調整はありません。
 
労働者福祉中央協議会が2019年3月に発表した「奨学金や教育負担に関するアンケート調査」によれば、日本学生支援機構の奨学金での借入総額の平均は324万3000円、毎月の平均返済額は1万6880円となっています。借入総額が500万円以上の人の割合は12.4%と、奨学金を利用している人の1割強です。
 
そして奨学金の返済期間の平均は、14.7年となっています。返済期間が20年超の人も全体の15%ほどいるようですが、例えば22歳で社会人になってから返済が始まり、平均では40歳近くまで返済を続けていることになります。
 

奨学金の返済が困難になったらどうする?

40歳前後までには結婚して、家族が増えることで支出が増加したり、もしくは病気や仕事の事情などで収入が減るといったこともあるかと思います。そのような場合、奨学金の返済が厳しい状況になる可能性もあります。
 
貸与奨学金は借りたお金のため、返済義務はあるわけですが、返済が厳しくなった場合の救済措置として日本学生支援機構には以下の3つの制度があります(日本学生支援機構では奨学金の返済を「返還」と呼んでいます)。
 

減額返還制度

一定の要件に合致していて、毎月の返済額を少なくすれば返していくことが可能な場合、1回の申請につき12ヶ月(適用期間)まで当初の返済額の2分の1、または3分の1に減額できる制度です。
 
適用期間に応じて返済期間は延長され、通算適用期間は15年(180ヶ月)が限度となっています。
 

返還期限猶予制度

返還期限猶予制度は一定の期間、毎月の返済を猶予するもので、返済すべき元金や利子が免除されるものではありません。
 
審査によって承認された期間については返済の必要がありませんが、適用期間後には返済が再開され、それに応じて返済終了期限も延長されます。申請は1年ごとで、適用できる年数は通算10年です。
 

返還免除制度

以下のような場合、申し出により未返済額の全部または一部を免除することができる制度です。


・本人が死亡して返済ができなくなった。
・精神もしくは身体の障害により、働くことができなくなった。または働くことに高い制限があり、返済ができなくなった。

 

まとめ

貸与型奨学金は、貸与が終了したあとに返済義務が生じる借金です。経済的に困難でありながらも学ぶ機会を得るためには大きな支えとなる奨学金制度ですが、何らかの理由で返済が厳しい状況となった場合には、減額や猶予といった手続きを早めに行うようにしてください。
 
出典
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金
独立行政法人日本学生支援機構 平成30年度学生生活調査
労働者福祉中央協議会 「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」並びに「奨学金に関する一斉相談」の結果(概要版)
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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