奨学金の返還を放置すると大変なことに!返済が難しいときの救済措置とは
配信日: 2022.01.11
社会人になってから数年は、収入も少ないので、その間には返還が難しい場面もあると思います。返還が難しければ、放置せず救済措置の利用を考えましょう。
放置すると延滞金が必要になるほか、3ヶ月以上で信用情報機関に個人情報が登録され、クレジットカードやローンの利用が制限されるなどのデメリットがあります。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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2つの救済措置
日本学生支援機構の貸与奨学金の返還が難しくなったときの救済措置には、大きく「減額返還制度」と「返還期限猶予制度」の2つがあります。
「減額返還制度」は1回あたりの返還額を2分の1や3分の1に減額する制度ですが、減る分、返還期間が2倍、3倍になります。1回の願い出につき適用期間は12ヶ月で最長15年間まで利用できます。
会社員など給与所得者は年間収入金額325万円以下(給与所得以外は所得金額225万円以下)が対象です。「返還期限猶予制度」は、返還を先延ばしできる制度で、延長した期間の分だけ返還期限が後ろに延長されます。通算10年間利用できます。
ただし、災害(災害原因が同一の場合は、災害発生から原則5年が限度)、傷病、生活保護受給中、産前休業・産後休業および育児休業、一部の大学校在学、海外派遣の場合は10年の制限がありません。年間収入金額300万円以下(所得金額200万円以下)が対象です。
この2つの救済措置を利用しても、利用しない場合に比べ総返済額が増えることはありませんので安心してください。
所得に応じた返還方式
日本学生支援機構の奨学金の返還方式には、毎月の返還額が一定の「定額返還方式」と本人の前年の課税対象所得に応じて返還額が変動する「所得連動返還方式」があります。私立大学自宅生で月額5.4万円(無利子の第一種奨学金)を借りた場合を考えてみましょう。
4年間の貸与総額は259.2万円です。返還期間は15年間。「定額返還方式」では返還月額は1万4400円になります。これに対し、「所得連動返還方式」では卒業後、「毎年の課税対象所得の9%÷12」の金額を毎月返還することになります(最低返還月額は2000円)。
ただし、返還初年度(返還を開始した月から最初の9月まで)の返還月額は、定額返還方式の半分の額(最低2000円)です。この間、この金額での返還が困難な場合は、申請により2000円での返還が可能です。
具体的には、年収200万円(課税対象所得62万円)なら月額4700円、年収300万円(同119万円)は同8900円、年収400万円(同179万円)は同1万3500円、年収500万円(同246万円)は同1万8500円、年収600万円(同313万円)は同2万3500円など、となります。
このように年収400万円強以下なら、定額型より返済負担が軽くなります。なお、返還中に返還者が被扶養者となった場合は、返還と扶養者の課税対象所得の合計額に基づいて算出されます。
「所得連動返還方式」が向く人、利用できる人
▽向く人
「所得連動返還方式」は前年の年収が低いときは返還額が少なく、高いときは返還額が多くなるしくみなので、年功序列型賃金の会社に勤める方は無理なく返還できます。
逆に、年収がなかなか増えず低い期間が長期化すると、なかなか返還が終わらず50代以降も返還が続くリスクがあります。
▽利用できる人
この返還方式を利用できるのは、2017年以降に無利子の第一種奨学金を借りた人が対象です。第二種奨学金の採用者にはこの返還方式はありません。保証制度は保証料が必要な「機関保証」にしなければなりません。
また、この方式を選択した場合は「減額返還制度」を利用できません。
地方自治体や企業の返還支援
自治体や企業による奨学金の返還支援が増えています。貸与奨学金を借りた方はこのような返還支援を活用するのも一つの方法です。就活のときに、希望する企業に、奨学金の返還を支援する制度があるか、聞いてみるとよいでしょう。
出典
日本学生支援機構 ホームページ
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。