更新日: 2022.01.18 子育て

受験シーズンが始まった。併願先を増やすと合格可能性はアップするの?

受験シーズンが始まった。併願先を増やすと合格可能性はアップするの?
新年を迎えると、あっという間に受験シーズンが到来します。大学入試では、今年・2022年の大学入学共通テスト(本試験)は1月15日、16日の実施です。個別の大学・学部の受験先が多くなると、日程があわただしく続く場合もあり大変ですが、受験料の負担もバカになりません。
 
併願先を増やして合格可能性は高めたい。でも受験料の負担増も重い。そんな相克に悩むシーンも少なくないでしょう。併願先を多くすると、合格可能性は本当に高まるのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

志望先のうち少なくとも1つが合格になる確率

大学入試の受験料の相場ですが、大学入学共通テストは1万2000円(2教科以下)か1万8000円(3教科以上)が基本。国公立大学は1万7000円、私立大学で3万5000円くらい(共通テスト利用の場合はもっと低額。医歯薬系学部はもっと高額)となっています。
 
日本政策金融公庫の調査結果(※)によると、大学受験のための費用(受験料および受験のための交通費・宿泊費)の平均値は32.5万円と多大な額です。
 
受験する大学・学部の合格可能性(合格率)は、模擬試験などによって数値化されているケースが多いでしょう。もちろん“番狂わせ”だって珍しくはないかもしれませんが、志望先を決める際の大きな目安となっています。
 
そして志望順位と合格率は、一般的には逆比例の関係だといわれます。上位には「ダメもと(ダメでもともと)」の先があったり、下位は「滑り止め」の位置付けといった具合です。では、併願した各先のどれか1つにでも合格する確率は、どれくらいあるのか。次のような事例で考えてみましょう。

<第1志望先> A大学○○学部 (合格率25%)
<第2志望先> B大学△△学部 (合格率50%)
<第3志望先> C大学□□学部 (合格率75%)

まず、次の2つを考えてください。

(ア) 3つの志望先が全部不合格になる確率
(イ) 3つの志望先のうち少なくとも1つが合格になる確率

(ア)と(イ)を足すと100%ですので、(ア)をまず計算して1から引けば(イ)の確率になるはずです。またそれぞれの志望先の不合格率は100%と各合格率との差なので、(ア)は[0.75(75%)×0.5(50%)×0.25(25%)]という式で計算できます。結果は0.09375つまり[9.375%]ですから、100%から引き算すると(イ)は[90.625%]となります。
 
上記の事例で、3つの合格率数値の単純平均などから(イ)を「50%くらいかな」と漠然とイメージしていたら、何と各合格率数値すら大きく上回る9割以上の確率。ちょっとびっくりするような計算結果かもしれません。
 

志望先が全部不合格になる確率が低いワケ

あることが「そうなる」か「そうならない」か。両方の確率の合計は100%です。そして、「あること」が1つだけではなく2つ3つと増えていくと、全部がそろって「そうなる」または「そうならない」確率は、かなり少なくなっていきます。【図表1】をご覧ください。
 

 
「Aになる」を「A大学○○学部に不合格となる」、BやCも同様に読み替えていただくと、3つのことが全部「そうなる」確率は、青く色塗りした箇所になります。全体の確率100%を示した枠全体から見ると、かなり少ない部分にしかならない。そんなことが視覚的にも理解できるのではないでしょうか。(もちろん、「そうなる」確率が高いものばかりが組み合わさると、青い色塗り箇所は大きくなっていきますが)
 
ちなみに、3つに【X大学◎◎学部(合格率10%)】を加えて「チャレンジ」してみると、少なくとも1つが合格になる確率は[91.5625%]。3つの併願先に合格率わずか10%の“高嶺の花”を追加したにもかかわらず、3つの場合よりもほんの少しだけですが確率は高まります。
 
また3つに【Y大学■■学部(合格率90%)】を加え、もっと「安全策」を取った場合には、少なくとも1つが合格になる確率は、[99.0625%]。ほとんど100%近くまで高まっていくのです。
 

まとめ

とはいえ、むやみに併願先を増やすことはおカネの負担も大変です。また受験スケジュールが無理に立て込んでしまい、1つ1つの試験に万全なコンディションで臨めないというような弊害もありえます。
 
併願先を増やしていくと(それぞれの合格率にもよりますが)志望先の少なくともどこか1つに合格する確率は、確かに計算上は高まることになります。
 
しかし、それよりは今の実力を冷静に把握したうえで、「チャレンジ」と「安全策」をほどよく組み合わせる。オーソドックスですが、そちらのほうが王道だと思います。
 
[出典]
(※)株式会社日本政策金融公庫「ニュースリリース」~「教育費負担の実態調査結果(令和2年度)」(2020年10月30日)
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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