更新日: 2022.01.25 子育て
奨学金の返還が難しい社会人の救済措置。減額や猶予の要件とは?
この記事では、日本学生支援機構の奨学金で、そうした救済措置を受けるための要件と手続き方法について解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
奨学金の返還が難しいときにできること
日本学生支援機構の奨学金では、返還が難しくなった人への救済措置として、以下のような制度が用意されています。
●減額返還……月々の返還額を少なくする(最長15年、月々の返還額を本来の2分の1または3分の1にし、返還期間を延長する)
●返還期限猶予……返還の期限を延期する(最長10年)
●返還免除……返還の義務がなくなる
ただ、どの制度も誰でも利用できるわけではなく「収入等の条件を満たすこと」と「手続きを済ませること」が必要です。
救済措置を利用できるのはどんな人?
制度ごとに、対象になる人が違います。最も対象者が多く日本学生支援機構も推奨しているのが「減額返還」、利用のハードルが高いものが「返還免除」です。それぞれの対象になる収入の目安は以下のとおりです。
■「減額」を利用できる条件
●給与所得者(会社員など)……年間収入金額325万円以下
●給与所得以外の所得がある人……年間所得金額225万円以下
収入が給与だけの場合は「収入」が基準になりますが、個人事業主など給与以外で収入を得ている人は、収入から経費などを差し引いた「所得」で判定されますので要注意です。
基本は上述のとおりですが、もし扶養している家族がいる場合は「1人につき38万円」を収入や所得から差し引き、その金額が上記条件に合えば申請できます。子どもが多い人や両親を養っている人などはより利用しやすいでしょう。
■「猶予」を利用できる条件
●給与所得者(会社員など)……年間収入金額300万円以下
●給与所得以外の所得がある人……年間所得金額200万円以下
減額よりわずかに基準額が低く設定されています。「収入」で判断する場合と「所得」で判断する場合がある点、扶養している家族がいると利用しやすくなる点は減額と同じです。
(出典:日本学生支援機構「困ったらまず相談 JASSOの制度 減額返還・返還期限猶予」、「経済困難事由 収入等の基準」)
■「免除」を利用できる条件
●本人が亡くなった
●精神もしくは体の障害で働けなくなった
免除の基準は、具体的な数字ではなく「労働能力を喪失」もしくは「労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなった」ときとされています。
死亡の場合は迷う余地がありませんが、障害はその度合いなどによって個別に判断されるため、まずは日本学生支援機構に連絡して免除の対象になりそうか確認する必要があります。
(出典:日本学生支援機構「死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」)
減額や猶予を受けるための手続き
上述の基準を満たしていることを確認したら、次は手続きです。必要な書類を集めて日本学生支援機構に提出しましょう。必要書類は申請する理由(経済困難、失業、災害、傷病など)などによって違いますが、例えば以下のとおりです。
●奨学金減額返還願&チェックシート又は奨学金返還期限猶予願&チェックシート
●マイナンバー届出書
●個人信用情報の取扱いに関する同意書(減額返還で同意書未提出の場合)
経済困難で申請する場合は、以下のうち1つを提出(マイナンバー提出で省略可能)。
●住民税非課税証明書
●所得証明書
●市・県民税(所得・課税)証明書
どれを提出する場合でも、必ず直近のもので原本を用意しましょう。
(出典:日本学生支援機構「減額返還に係る願出用紙」、「一般猶予の申請事由と必要な証明書」)
書類がすべてそろったら、下記の送付先に郵送します。マイナンバーが入っているときは簡易書留で送りましょう。
〒119-0385
独立行政法人日本学生支援機構 猶予減額受付窓口
(出典:日本学生支援機構「奨学金減額返還願等の提出」)
まとめ:奨学金の返還が難しいなら救済措置を活用しよう
奨学金の返還が難しいと思ったら、そのまま放置して延滞するのではなく、事前に手続きをして負担を軽減するようにしましょう。
悩んだときは、日本学生支援機構の奨学金相談センター(TEL:0570-666-301)に電話して問い合わせることもできますよ。
(出典:日本学生支援機構「奨学金相談センター」)
(出典)
日本学生支援機構 ホームページ
※2022/1/25 記事に一部誤りがあったため、修正いたしました。
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表