「高等教育の修学支援新制度」と「国費外国人留学生制度」の内容を比較
配信日: 2022.02.16
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
国費外国人留学生制度とは
国費外国人留学生制度は、日本と諸外国との国際交流を図り、相互の友好親善を促進するとともに、諸外国の人材養成に資することを目的として、1954年度に創設された制度です。 国費外国人留学生には、学修・研究に集中できるよう国家公務員に準じた金額の給与が支給されるほか、招致および帰国旅費や教育費も支給されます。
外国人留学生総数27万9597人のうち国費外国人留学生は8761人となっています(2020年5月1日現在)。最も多いのがインドネシア(888人)、次いで、中国(834人)、タイ(614人)、ベトナム(601人)、韓国(565人)となっています(※1)。
招致および帰国旅費・教育費
国費外国人留学生には(1)招致および帰国旅費 と(2)教育費が支給されます。
(1)招致および帰国旅費
1.渡日旅費 2.帰国旅費について「国費外国人留学生の自国における居住地最寄りの国際空港」と「受入れ大学等が通常の経路で使用する国際空港」間の航空券が支給されます。
(2)教育費
国費外国人留学生が入学する公私立大学等における入学金、授業料および入学検定料のほか、在籍学生全員に対して教育に必要な経費として、学則等により定められている経費が支給されます。
国費外国人留学生給与
2022年度においては、在籍段階に応じて、毎月、国費外国人留学生給与が支給されます。地域によって月額2000円または3000円の加算があります。
(1)大学院レベル
1. 研究生:月額 14万3000円 (高等専門学校、専修学校を含む)
2. 修士:月額 14万4000円
3. 博士:月額 14万5000円
(2)学部レベル
月額 11万7000円
日本学生支援機構の給付型奨学金
住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯で、一定の要件を満たした大学・短期大学・専門学校・高等専門学校の学生が対象です。大学院の学生は対象外です。
給付型奨学金の対象となった学生は、進学後申請により入学金・授業料の減免を受けることができます。給付型奨学金と入学金・授業料の減免を合わせて「高等教育の修学支援新制度」といいます。2020年度の給付型奨学金の新規採用人数は27万2179人(うち大学は19万8910人)となっています(※2)。
(1)給付型奨学金
1.通学先が「大学・短期大学・専門学校」なのか「高等専門学校」なのか、2.それが国公立なのか私立なのか、3.自宅通学なのか自宅外通学なのかにより支給額が異なります。
さらに、住民税非課税世帯(第I区分)なのか、準ずる世帯(第II区分・第III区分)なのかにより給付額が異なります。準ずる世帯は、住民税非課税世帯(第I区分)の3分の2(第II区分)または3分の1(第III区分)の金額になります。
最大支給額は、住民税非課税世帯(第I区分)の学生が私立の大学・短期大学・専門学校に自宅外通学する場合の月額7万5800円です。
(2)入学金・授業料の減免
住民税非課税世帯(第I区分)・準ずる世帯(第II区分・第III区分)、学校種、国公私立の別により減免額が異なります。最大の減免額は、住民税非課税世帯(第I区分)の学生が私立大学に通う場合、入学金約26万円、授業料約70万円となっています。
まとめ
これまでみてきたように、新規採用人数は、日本学生支援機構の給付奨学金が27万2179人、国費外国人留学生が8761人と、日本学生支援機構の給付奨学金のほうが圧倒的に多いことがわかります。
一方、待遇の面では国費外国人留学生の入学金・授業料が全額免除で、月額 11万7000円が給付されるのに対し、日本学生支援機構の給付奨学金は、入学金・授業料が最大96万円減免で、給付額は最大月額7万5800円と、国費外国人留学生のほうが圧倒的によいことがわかります。
出典
(※1)
文部科学省「国費外国人留学生制度について」
(※2)
日本学生支援機構 ホームページ
文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。