更新日: 2022.03.26 その他暮らし

麺の量が2倍や3倍になっても値段は同じ。これって、おトク? それとも不公平?

麺の量が2倍や3倍になっても値段は同じ。これって、おトク? それとも不公平?
ご飯の大盛りやお代わりが無料。あるいは、麺を大盛りにしても値段は普通盛りと変わらない。こうしたサービスを取り入れている飲食店も少なくありません。さらに、つけ麺やスパゲティで麺の量を通常の2倍や3倍にしても値段は変わらない。そんなお店だってあります。
 
お客にとって、できるだけ増量しないと損のようにも思えます。またお店にとって、大増量ばかり注文されて大変な損につながる心配はないのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

麺自体の原価率は、高くない

まず、お店の視点から考えてみましょう。つけ麺で[値段800円(金額は消費税込み、以下同)、麺の量(ゆでる前)は、(並)200グラム、(中)300グラム、(大)400グラムとも同じ値段]という事例を想定してみます。
 
飲食店の食材や飲料の原価率は低いとよくいわれます。店舗の家賃や共益費、水道光熱費、設備類の償却費、こまごました備品類の費用など、そして人件費。飲食の売り上げから食飲材の原価以外にこれらの費用も負担して、さらに利益も上げなければならない。ですから、当然かもしれません。
 
このつけ麺の食材の原価率が仮に30%だとすると、食材にかけられるのは240円。ここから麺のほかに、スープやトッピング具材のコストも負担しなければなりません。
 
ラーメン系で一番コストがかかるのは、実はスープだと聞いたことがあります。ダシの材料を集め、仕込みに手間と時間をかけてじっくりと仕上げなければなりません。確かに麺よりも高コストなのでしょう。
 
上記の例で、麺のコストが仮に(並)200グラムで40円だとすると、(中)60円、(大)80円。5割増しや倍に増量しても、食材全体の原価率が劇的に増えるわけではありません。また麺の増量を無料にしても、スープやトッピング具材料が同じ割合で増えるわけでもない。増量される(=コストが増える)のは、あくまでも麺だけです。
 
また飲食店の値段は、もちろん競合店の値段動向なども考慮されるでしょうが、かかった原価や期待する利益を積み上げて設定しているケースも少なくありません。【図表1】を見てください。
 

 
(1)だけでなく、(2)や(3)のパターンだってありえるわけです。(2)でも(大)を注文するお客が全体の3分の1以下であれば、トータルでは想定よりもうかります。(3)ならば、(大)以外が注文されるごとに想定よりどんどんもうかっていくわけです。
 
こうした麺の増量無料よりも極端な「食べ放題」も含めて、お客みんなが必ずしも大量に食べるわけではありません。そうした見通しに基づき原価や利益をキチンと計算して、値段が設定されているのです。
 

麺の増量は、ありがたいとは限らない

では、お客の視点ではどうでしょうか。ラーメンやつけ麺など、とにかく麺で満腹感を得たい。そうしたニーズには、増量無料はとてもありがたい仕組みでしょう。一方、スープやトッピング具材もバランスよく楽しみたい人にとっては、麺だけ増量してもらってもうれしくないかもしれません。
 
麺をたくさん楽しみたい人にとっては、量が増えても同じ値段ならば麺の単価が低くなることでコストパフォーマンス(以下、「コスパ」と略称)が高まります。つまり数字が「低い」ほどコスパは「高い」のです。しかし、麺の量には興味がなく増量を選ばない人には、麺の単価とコスパはリンクしません。
 
さらに、スープやトッピングを楽しむことを重視したい人にとっては、麺だけ増量された状態は全体のバランスが欠けて逆効果なのかもしれません。この場合、麺の単価が低くなるとコスパも低くなってしまいます。
 

まとめ

知人から聞いた話ですが、近くの商店街にスパゲティナポリタン専門店が開店。お店のセールスポイントは、「麺の量が300グラムから600グラムまで選べて、しかもどのサイズでも値段は均一」なのだそうです。
 
その知人(関西出身)いわく、「それって、たくさん食べる人の分が値段に乗っかっているだけやないの。不公平で、ウチは行く気がしないわ!」でした。
 
このように、着眼点や視線はさまざまで、人それぞれで考え方も違うと思います。また先述のように、お店のスタンスも決して目玉商品や出血サービスとして提供しているわけではなく、よくも悪くも“計算ずく”のケースが多いのです。
 
「腹も身の内」ということわざもあります。「同じ値段なんだったら・・・・・・」とか「こうしたほうがおトクだから・・・・・・」といった考えだけで増量をするのは、やめておいたほうが無難でしょう。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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