不妊治療と仕事、どちらも続けるためにすべきこととは?
配信日: 2022.04.07
不妊治療は珍しいことではなくなり、夫婦の約5.5組に1組が不妊検査や不妊治療を経験し、赤ちゃんの16人に1人が体外受精で生まれています(※)。
その一方で、不妊治療を行うにあたり高額な治療費、そして仕事との両立がネックになっています。
不妊治療を行っている、主に妻は、勤務先で身体的にも精神的にもさまざまなストレスを抱えていることがあります。ストレスを軽減し、治療と仕事を両立するための手段はないのでしょうか?
執筆者:宮野真弓(みやのまゆみ)
FPオフィスみのりあ代表、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
子育てファミリーや妊活カップルのライフプランニングを中心に活動しています。
結婚や妊活、出産、住宅購入など人生のターニングポイントにおけるお悩みに対して、お金の専門家としての知識だけでなく、不妊治療、育児、転職、起業など、自身のさまざまな経験を活かし、アドバイスさせていただきます。
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不妊治療の悩みとは
不妊治療の悩みは、大きく分けると「お金」「時間」「メンタル」の3つがあります。
お金の面に関しては、令和4年4月から不妊治療の保険適用が始まりました。それにより、これまで1回40~50万円といわれていた体外受精は15~20万円程度に、男性不妊治療と体外受精を併用した場合には、1回60万円程度かかっていたものが25~30万円程度になる見込みです。
一方で、特定不妊治療費助成事業は廃止されるため、金銭的な負担はあまり減らないともいわれています。
この点については、高額療養費制度を利用したり、医療費控除を利用したりするなどして、負担の軽減を図ることになります。
保険適用が始まってから、制度が微調整されたり、新たに助成制度が設けられたりする場合もありますので、常に新しい情報をキャッチできるようにしておきましょう。
不妊治療と仕事の両立、何が難しいの?
「お金」「時間」「メンタル」の3つの悩みは、それぞれが独立しているわけではなく、例えば「治療費が高額である(金銭面)。そしてそれがいつまで続くかわからない(メンタル)」というように重なり合っています。
特に、不妊治療と仕事を両立する上では「通院のための時間を作らなければならないが、仕事を休むのが心苦しい」というように、時間とメンタルの悩みが絡むことが多いです。
厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題ついての総合的調査報告」によると、不妊治療をしたことがある労働者のうち34.6%が「仕事との両立ができなかった」と回答しており、不妊治療経験者の6人に1人が両立できずに仕事を辞めています。
仕事と不妊治療を両立できずに仕事を辞めたもしくは不妊治療をやめた、または雇用形態を変えた理由は、「精神面で負担が大きいため」「通院回数が多いため」「体調、体力面で負担が大きいため」と続きます。
不妊治療と仕事の両立が難しい理由の1つに、あらかじめ通院スケジュールを立てることが難しい点も挙げられます。
なぜ、不妊治療は通院のスケジュール調整が難しいのでしょうか?
それは、女性の生理周期に合わせて治療が進むため、突発的で頻回な通院が必要になるからです。卵胞の状態によっては、受診した翌日に再度受診しなければならないことも珍しくありません。そして、最適なタイミングを逃すと1ヶ月待たなければならなくなります。
さらに、薬の副作用で体調が悪くなることもあります。1、2ヶ月のことであればそこまで問題にはならないかもしれませんが、治療回数を重ねるにつれ、仕事への責任感や周囲への心苦しさ、上司や同僚の無理解(プレ・マタニティーハラスメント)などにより、精神面での負担が大きくなっていきます。
不妊治療と仕事との両立のポイント
では、どうしたら不妊治療と仕事を両立できるでしょうか。
仕事と不妊治療を両立する上で会社に希望することとしては、柔軟な休暇制度や勤務制度のほかにも「有給休暇など現状ある制度を取りやすい環境づくり」や「上司・同僚の理解を深めるための研修」等が挙げられます。
近年では、休暇制度などを充実させる企業もあり、また、新型コロナウイルスの影響で、テレワーク制度が利用できるようになった企業も増えたと考えられます。
まずは勤務先で使える制度がないかどうかを確認しましょう。
職場に理解を求める手段としては、「不妊治療連絡カード」というものがあります。
治療の時期や配慮が必要なことを、不妊治療を行う医師に記入してもらい、勤務先に提出します。勤務先に不妊治療をしていることを伝えるときや、会社の制度を利用するときなどに活用できます。
会社に不妊治療を打ち明けるかどうかは判断が分かれるところです。デリケートな問題なので、必ずしも打ち明ける必要はありません。
ただし、打ち明けることでフォロー体制を整えてもらえる場合などもあります。直属の上司に言いにくい場合には、人事部に相談するとよいかもしれません。
治療と仕事を両立しやすい病院を選ぶこともポイントです。勤務先に近い病院なら、注射のみ、簡易な検査のみの場合などであれば時間単位年休で対応できる場合があります。
早朝・夜間診療を行っている病院であれば、仕事の前後に通うこともできますし、自己注射を取り入れている病院であれば、通院回数を減らすことができます。
不妊治療をしながら、それ以前とまったく同様に働くことはできないケースは多いです。何を優先したいのかをよく考えて、必要なサポートを受けましょう。
そして、急な通院に備えて情報共有を徹底することや、通院のない日にはしっかり働くことも大切です。
出典
(※)
厚生労働省 不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック
厚生労働省 不妊治療に関する取組
厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に関して厚生労働省として初めての調査を実施しました ~「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査事業」の調査結果報告書を公表します~」
執筆者:宮野真弓
FPオフィスみのりあ代表、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者