更新日: 2022.04.19 その他暮らし

ガソリン価格が日本一高いのは鹿児島県だって。それって本当なの? どうして?

ガソリン価格が日本一高いのは鹿児島県だって。それって本当なの? どうして?
ガソリン価格の高騰が止まりません。ポストコロナを見すえて経済活動が世界規模で活発化する中で、ウクライナ情勢が緊迫してついに侵攻化 。原油の需給バランスが大きく崩れていることが背景のようです。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

ガソリン価格が日本一高いのは鹿児島県?

そんな状況下、今年・2022年2月下旬に所用で鹿児島県に出掛けたときのこと。レンタカーで移動しながら用事を済ませた後、夕刻に宿のテレビで流れていたのは、当地・鹿児島県のガソリン価格がここのところ都道府県別で日本一高いというニュースでした。
 
原油は、ほぼ全量が海外からの輸入です。石油精製コンビナートもタンカー接岸拠点の港湾エリアに多いでしょう。ガソリンを含めた石油製品も精製後の輸送コストなどを考えると、港湾エリアから遠いほど割高な印象がありますね 。
 
ざっくり考えるとガソリン価格は、いわゆる「海なし県」で山間部を多く抱えるところが一番高いのではないか。そんな先入観があったので、沿海部がかなり多い鹿児島県のガソリン価格が日本一高くなったという報道には、ちょっとびっくりでした。
 

ガソリンの価格構造のおさらい

まずは、ガソリン価格がどんな構造になっているのか。おさらいをしておきましょう。レギュラーガソリン小売価格を仮に176円(1リットル当たり消費税込み、以下同)とした場合、その価格構成は【図表1】のようになります。
 


 
消費税課税前の段階で、3つのグループの税だけで56.6円が固定的にかかっています。消費税も含めると小売価格176円のうち実に72.6円(約41%)が税金です。
 
また、税金を除いた本体価格も原油価格高騰のために大きく上がっています。小売価格が120円くらいだった頃のざっと2倍になっているのです。
 

キーワードは、「離島」と「輸送コスト」

鹿児島県の話に戻りましょう。「ガソリン価格が日本一高い」データは、経済産業省資源エネルギー庁から委託を受けた石油情報センターの給油所一般小売価格(ガソリン)の週次調査(月曜調査・水曜発表)結果(※1)がもとになっています。
 
冒頭のテレビニュースは2月24日に見たのですが、そのベースになっていたのは同日に公表された(前日の水曜日は祝日だったため)数値です。レギュラーガソリンの全国平均価格は172.0円で、都道府県別で鹿児島県の180.4円は確かに日本一でした。
 
最低値は岡山県の166.0円。14円以上の大差とは、ちょっと驚きですね。ちなみに、2月24日に筆者が鹿児島市内中心部でレンタカー返車前に給油(セルフスタンド)した際の価格は178円でした。
 
この週次調査、全国2000ヶ所程度のSS(サービスステーション)が調査対象で、都道府県ごとに最低でも30ヶ所あります。都道府県内では、地域に偏りがないように対象店を配置しているそうです。
 
この「地域に偏りがない」ことが、今回の疑問を解くカギの1つです。日本は島国ですが、大きな本土4島と沖縄本島以外を離島とする考え方があります。鹿児島県の離島数は、全国ベスト3に入ると以前に耳にしました。
 
こうした離島では、輸送コストなどがかさむためガソリン価格も高くなります。【図表2】をご覧ください。配送難度などを考慮して離島の規模によって、本土との価格差(1リットル当たり)のイメージとして[(大)+6.9円、(中)+9.6円、(小)+14.6円、]と示されています。
 


 
こうした価格差を埋めるための補助金が定例的に予算化され、2021年度に鹿児島県では25の離島で1リットル当たり10円から35円の補助(値引き)が行われています(※2)。
 
今年・2022年1月末から全国一律で始まった補助金とは別のものですが、割高な輸送コストを全部吸収できない場合もあるようです。値引きしてもなお高めの店頭価格がサンプリングされるなどして県全体の平均値を押し上げていることも、「日本一」の背景の1つのように見受けられます。
 

まとめ

ガソリンなどの石油製品の価格調査(定期観測)は、ほかの機関や企業等でも実施しています。サンプルのとり方などによってふれ幅はあるでしょう。また時間の経過による周辺状況の変化などによっても、「価格が日本一高い」ところは変動していくと思われます。
 
とはいえ、石油精製拠点からの輸送が陸路(クルマ)よりも高コストな海路(船)中心にならざるをえないのが離島。そうした離島を多く抱える県が、統計値の世界では“高コスト”のエリアになってしまう。
 
日本は多くの島々から構成される国であることを、こんなことからも改めて実感させられます。
 

出典

(※1)経済産業省資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(<調査結果一覧>のエクセルファイルを参照)
(※2)全国石油商業組合連合会「令和3年度 離島のガソリン流通コスト対策事業実施の手引き」(4ページの「対象となる離島・値引額」を参照)
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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