更新日: 2019.01.10 その他暮らし
美容院で全く違う髪型!代金を払う義務はある?ない?
こちらがお願いした髪型とあまりにも違う場合や、気に入らなかった場合でも、料金を支払わなくてはいけないのでしょうか?
K子さんの事例を見てみましょう。
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
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弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
親友の結婚式。美容院で髪をきれいにしたら完璧!
K子さん(26歳)は来週、親友の結婚式に参加する予定です。
大切な親友の晴れ舞台であり、久しぶりに高校時代の友人たちに会うということもあり、美容面には今から気合を入れています。
かわいいドレスにネイルアート、肌のお手入れ…あとは美容院で髪をきれいに整えれば完璧です。
K子さんは胸のあたりまであるロングヘアですが、美容院で肩くらいのボブにしてもらい、編み込みなどのアレンジを自分でしようと考えていました。
美容院に予約の電話を入れると、K子さんが希望する日はいつもの担当美容師さんがお休みのようです。K子さんはその日以外に時間が取れなかったので、仕方なく了承しました。
K子さんを担当したのは新人美容師。嫌な予感…
当日、K子さんの担当になったのは若い女性でした。新人の美容師さんのようで、K子さんは少し心配になりましたが、できるだけ詳しく希望の髪型を伝えました。
「友人の結婚式が控えていて自分でアレンジをしたいので、ハーフアップや編み込みができるくらいの長さは残してほしいです。毛先が肩に届くくらいのボブでお願いします。それから、前髪は眉毛と目の間くらいで」
「わかりました」
しばらくするとK子さんは前日の仕事の疲れもあり、カットをしてもらいながらうとうとと眠ってしまいました。
肩くらいのボブと言ったのにショートヘア…どうしてくれるの?
「完成しましたよ」
美容師さんの言葉に目を覚ますと、K子さんは鏡に映る自分の姿に驚愕(きょうがく)しました。
肩くらいのボブと言ったのに、完全にショートヘアです。巻いたりアレンジする長さの余裕などありません。そして、一番ショックだったのが前髪を思い切り切られたことです。眉毛と目の間くらいと言ったのに、眉毛が見えるくらいまで切られてしまいました。
それでも全体のバランスがよく、かわいく仕上がっていれば問題はありませんでしたが、いつもの美容師さんのカットと比べて明らかに下手で、バランスもガタガタでした。
全体が短くなってしまっているので、今から手直しして希望の髪型にすることはできません。K子さんは怒りと悲しみで涙がにじんできました。
―どうしてくれるの!?
K子さんは美容院の代金を支払わなければいけないのでしょうか。また、契約違反で損害賠償を払ってもらうことはできるのでしょうか?東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。
このような場合、「債務不履行」に該当しますので、K子さんは美容院の代金の支払を拒めるばかりか、損害賠償を請求できる余地もあります。
K子さんと美容院との間には、美容契約が成立していますが、美容院には、その契約上の債務として、K子さんから求められたデザインの髪型とするために合理的なカット手法を採用してカットの施術をする義務があります(神戸地裁H22・10・7参照)。
K子さんが注文した髪型の内容は毛先が肩にかかるくらいのボブカットでしたから、完全なショートヘアとは全く異なります。これでは、合理的なカット手法を採用したとは言えないと思われます。
もっとも、髪型のデザインの注文は、抽象的になりがちですし、頭髪の状態、性質にも個人差があります。同じカットを施しても人によって出来栄えが異なることもしばしばです。
ですので、自分が思っていたような結果にならなかったというだけでは、美容院の債務不履行を問うことはできません。
また、この件が裁判沙汰になった場合、どのような注文をしたかなどを立証しないといけません。カットカタログを見せながら「これに近い髪型で」などとお願いしていれば、立証する方法も工夫できますが、完全に口頭での発注となると、立証に苦労するかもしれません。
このことも考慮すると、可能であれば、美容師との話し合いにより、注文と施術の結果が違うところを指摘して、ある程度の減額をしたり、今回の支払はないことにするなどして、交渉することは十分に合理的です。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応