更新日: 2022.05.09 子育て
アルバイトをする大学生の子どもがいるなら知っておきたい。税金・社会保障の「壁」
もちろん、自分たちの娯楽費に使う目的で働く場合もありますし、家庭からの仕送りでは生活費が足りないため、その不足額を補う目的でアルバイトをする人もいるでしょう。
ただ、学生のアルバイトであっても、その収入次第では扶養から外れる可能性があるほか、税負担や社会保険料負担が発生する可能性もあることを知っておきましょう。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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103万円の壁
アルバイトで得た収入が年間103万円を超えると、親の扶養から外れることになります。
■親への影響
子どものアルバイトによる給与収入が103万円を超えた場合、子どもは親の扶養から外れてしまいます。
扶養控除(※1)には配偶者控除などがありますが、大学生の子どもを扶養している場合、多くは「特定扶養親族」の対象となることから、扶養控除額も63万円と高額に設定されています。
一般の控除対象扶養親族の控除額が38万円となっていることからも、その差はかなりのものであることが分かります。
もし、子どものアルバイト収入が103万円を超え、扶養の対象から外れてしまうと、親はその分、扶養控除の適用を受けられなくなります。そのため、その分、親の税金負担も増えることになります。
130万円の壁
アルバイトによる収入が年間130万円を超えると、学生の場合、所得税および社会保険料の負担が発生します。
■所得税の負担
原則としてアルバイト収入が年間103万円を超えると、所得税の納税義務が発生します。アルバイトで得た収入は一般的に「給与収入」に該当します。
給与収入の場合、「給与所得控除(※2)」が適用されますが、その際アルバイトで得た収入額が162万5000円までであれば、その収入額から55万円の控除を受けることができます。
さらに、基礎控除の48万円が適用されることから、55万円+48万円=103万円が、所得税が課税されないボーダーラインといえます。
ただし、学生の場合は「勤労学生控除(※3)」の適用を受けるため、さらに27万円の控除を受けることができます。
したがって、55万円+48万円+27万円=130万円が、学生のアルバイト収入が非課税となるボーダーラインです。
仮に年間のアルバイト収入が140万円だった場合、140万円から給与所得控除の55万円が差し引かれ、さらに基礎控除の48万円および勤労学生控除の27万円を差し引いた10万円に対して所得税が発生します。
■社会保険料の負担
学生であってもアルバイト収入の額が130万円を超えると、社会保険料の負担が発生します。
一般的には親の扶養から外れ、国民健康保険に加入することになり、所得金額に応じた保険料を支払うことになります。
また、1週間の所定労働時間、およびひと月の所定労働日数が正社員の4分の3以上という状況であれば、アルバイトでも勤務先の社会保険(健康保険)、および厚生年金に加入することとなるため、社会保険料の負担が発生します。
その他の注意点
学生であっても20歳以上になれば国民年金保険の加入対象となり、保険料納付義務が発生します。中には学生のうちは保険料の納付を猶予してもらえる「学生納付特例制度(※4)」の利用を考えている人もいるのではないでしょうか。
ただし、この学生納付特例制度を利用する際には、所得要件を満たさなければならない点に注意が必要です。この学生納付特例制度を利用できる所得基準は以下のとおりです。
「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」
したがって、複数のアルバイトを掛け持ちしており、年間の所得額が基準を超えた場合はこの特例制度を利用できず、国民年金保険料を納付しなければならない点を覚えておきましょう。
さらに、奨学金を利用している場合も注意が必要です。
奨学金を利用するためには家計基準を満たす必要があり、それを超えてしまうと奨学金の減額や、給付もしくは貸与停止の措置が取られる可能性があります。
奨学金を利用している場合は、自分が利用している奨学金の内容や家計基準などの要件を確認しておきましょう。
まとめ
大学生となり時間にも余裕ができ、アルバイトを始める人も多いと思いますが、収入額によっては親の扶養を外れることになるほか、所得税や社会保険料の負担が発生します。
親の税負担に影響する103万円の壁や、アルバイトをしている子どもに影響する130万円の壁については、しっかりと内容を理解しておくことが大切です。
もちろん、それらの税負担があっても問題ないということであれば、アルバイトを続けて収入を確保するという選択肢もあるでしょう。
しかし、収入(所得)が学生納付特例制度や奨学金にも影響することは、知らない人もいらっしゃるのではないでしょうか?
これを機に、子どもがどのくらいの収入を得ているか(得るつもりなのか)、そしてそれによる影響について、しっかりと親子ともに認識しておくことをおすすめします。
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1180 扶養控除
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1410 給与所得控除
(※3)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1175 勤労学生控除
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
独立行政法人日本学生支援機構 ホームページ
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員