会社を廃業するときにかかる費用はいくら? 手続き方法まで解説
配信日: 2022.05.26
実際に廃業する場合にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。廃業する際の手続き方法についても解説します。
執筆者:荒木和音(あらき かずね)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
日本における廃業の現状
中小企業庁によると、2021年時点で日本企業の倒産件数は年間で6030件です。一方、資産が負債を上回った状態で企業活動を停止する休廃業の件数は、5万件前後に上ります。
世界水準でみれば、日本の廃業率はさほど高いとはいえないものの、新型コロナウイルス感染症の影響次第で、今後廃業する企業が増える恐れがあります。
廃業する企業が増えている一因となっているのが、後継者不足の問題です。経営者の平均年齢は上昇傾向にあり、2020年時点では62.5歳となっています。しかし、61.5%の企業において後継者が不在となっているため、やむをえず廃業に追い込まれている企業が多いといえるでしょう。
廃業費用と手続き方法のまとめ
会社を廃業するためには「解散手続き」を経る必要があります。解散するためには、次のうちいずれかの要件を満たさなければなりません。
・定款で定めた存続期間の満了
・定款で定めた解散の事由の発生
・株主総会の決議
・合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る)
・破産手続開始の決定
・会社法第824条第1項または第833条第1項の規定による解散を命ずる裁判
廃業手続きの流れ
会社の廃業手続きは、主に次のような流れで行われるのが一般的です。
1.株主総会での解散決議・清算人選任決議
2.会社の解散と清算人の選任を登記
3.会社解散の届け出
4.官報による会社解散の公告
5.清算手続きの実施
6.清算結了登記
解散をするためには清算手続きをしなければなりません。清算をする株式会社は「清算株式会社」と呼ばれ、清算人をおくことになります。
株主総会で解散と清算人を決定したあとは、2週間以内にそれぞれ法務局への登記が必要です。登記が済んだ後は、解散手続きとして税務署や年金事務所に届出を行います。また、国が発行する官報で会社解散の事実を開示しなければなりません。
加えて、財産目録や貸借対照表などの決算書類を作成し、確定申告を行います。清算が終了したら登記をして手続きは完了です。
廃業にかかる費用
廃業時にかかる主な費用は図表1の通りです。
【図表1】
弁護士や司法書士、税理士などの専門家に手続きの代行を依頼する場合には、その分さらに費用がかかります。在庫や設備の処分費用や借りている不動産の原状回復費用などが発生するケースもあるでしょう。
廃業以外の選択肢もある
廃業するには各種登記費用や専門家への依頼費用など、多くのコストがかかります。手続きについてもいくつかのステップを踏む必要があり、従業員や取引先への影響も懸念されます。可能であれば廃業以外の選択肢を検討するのが望ましいでしょう。
具体的には休眠会社にする方法や、近年増加しているM&Aにより事業再生をする方法などがあります。ただし、休眠会社にする場合も一定の登記手続きが必要となる点や、M&Aが必ず成立するわけではない点には注意しましょう。
出典
中小企業庁 小規模企業白書より 第1部 令和3年度(2021年度)の小規模事業者の動向
e-Gov法令検索 会社法
e-Gov法令検索 法人税法
日本年金機構 適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き
法務局 株式会社解散及び清算人選任登記申請書
全国官報販売協同組合 官報公告掲載料金
法務局 株式会社清算結了登記申請書
法務省 休眠会社・休眠一般法人の整理作業について
執筆者:荒木和音
2級ファイナンシャルプランニング技能士