更新日: 2022.06.28 その他暮らし
「障害者扶養共済制度(しょうがい共済)」ってどんな制度?
どんなものなのか簡単に解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
障害者扶養共済制度とは?
障害者扶養共済制度(愛称:しょうがい共済)の概要は、次のとおりです。
・誰が……障害のある人を扶養している保護者が
・何のために……障害のある人の生活の安定や将来への不安軽減のために
・何をすると……毎月一定の掛け金を納めることで
・どんなときに……保護者自身が亡くなったり重度障害状態になったりしたときに
・何を得られる……扶養していた障害のある人に終身一定額の年金が毎月支給される
ひとことでいうと「障害のある子とその親のための保険」のような制度です。
都道府県や指定都市(大都市)が実施していて、自治体によっては「心身障がい者扶養共済制度」のように呼んでいる場合もあります。
障害者扶養共済制度を利用できる人の条件
この制度を利用するためには、保護者も扶養されている側も、所定の条件をすべて満たしている必要があります。
・障害のある人を扶養している保護者
・加入年度の4月1日時点の年齢が満65歳未満
・特別の疾病または障害がなく、生命保険契約の対象となる健康状態である
・障害のある方1人に対して、加入できる保護者は1人
・次のいずれかに該当する
-知的障害がある
-身体障害者手帳を所持し、その障害が1級から3級までに該当する
-精神または身体に永続的な障害があり、その障害の程度が上記と同程度と認められる
・将来独立自活することが困難であると認められる
年金を受け取る側(障害のある人)には、年齢の制限はありません。
障害者扶養共済制度のメリット
この制度は必須ではなく、任意で加入できるものです。加入すると、以下のようなメリットがあります。
■メリット1:親が亡くなったとき、子ども(障害のある人)が年金を受け取れる
保護者が死亡または重度障害状態になった場合、障害があって扶養されていた人は毎月2万円(2口加入の場合は4万円)の年金を、一生涯ずっと受け取り続けられます。
掛け金は加入する年などにもよりますが、図表1のとおりです。
【図表1】
出典:独立行政法人福祉医療機構 心身障害者扶養保険事業 しょうがい共済制度のごあんない
以下の2つの条件を両方満たすと、その後の加入月から掛け金が免除(支払う必要がなくなる)になります。
(1)「継続して20年以上加入した」
(2)「年度初日(4月1日)の保護者の年齢が65歳となった」
(出典:厚生労働省 障害者扶養共済制度 P18/16、独立行政法人 福祉医療機構 心身障害者扶養保険事業)
また、自治体によっては、生活保護を受けている人や収入が急減した人、災害に遭った人などを対象に、掛け金を減免する(支払う金額が減る)ところもあります。
年金のほか、1年以上加入した後、保護者より先に障害のある人が亡くなってしまったときには「弔慰金」、5年以上加入した後、途中でこの制度の加入をやめるときには「脱退一時金」が受け取れます。
ただ、どちらも「20年以上加入していても25万円」など、金額としては多くありません。
■メリット2:税金の負担が軽減される
この制度の掛け金は、全額が所得控除の対象になります。つまり、掛け金を納めれば納めるほど計算上の「所得」が少なくなり、所得税や住民税の負担が軽くなります。
所得が少なくなれば、今まで所得制限で特別障害者手当などを受け取れなかった人でも受け取れるようになるかもしれません。
また、もしものときに受け取る年金には、所得税・住民税・相続税・贈与税のいずれもかかりません。
まとめ
障害者扶養共済制度(しょうがい共済)は基本的に、障害のある子を扶養している親が、自分が亡くなった後に備えて、子のために加入しておく保険のような制度です。
加入を検討している場合や申し込みをしたい場合は、お住まいの都道府県の障害福祉課に気軽に問い合わせてみましょう。
出典
厚生労働省 障害者扶養共済制度 案内の手引き(令和4年3月)
厚生労働省 特別障害者手当について
大阪市 心身障がい者扶養共済制度
独立行政法人福祉医療機構 心身障害者扶養保険事業 しょうがい共済制度のごあんない
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表