更新日: 2019.01.10 その他暮らし
母子家庭の約10%が生活保護世帯…離婚する前に知っておきたいお金のこと(1)
DVなど緊急事態は除いて、離婚を考え始めたら実際に離婚をするかどうかは別にして、準備期間として1年以上は必要です。
この間に、資格やスキルを身に付けたり情報収集をしましょう。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
母子世帯の家計の現状
厚生労働省「平成28年度 全国母子世帯等調査結果報告」によると、母子世帯の平均年間収入(母自身)は243万円、うち就労収入は200万円となっています。
総務省「平成26年全国消費実態調査」を見ると、母子世帯(年間収入階級200~300万円、世帯主の平均年齢39.7歳、平均世帯人員2.61人、持ち家率13.5%)の家計の収支は以下のようになっています。
1カ月の実収入は187,527円、可処分所得(実収入-社会保険料・税金)は168,998円。
支出は、食料44,013円、住居34,804円、光熱・水費15,125円、家具・家事用品6,114円、被服及び履物6,716円、保健医療4,295円、交通・通信27,049円、教育11,373円、教養娯楽12,587円、そのほかの消費支出18,709円。
計180,784円となっており、11,786円の赤字です。
母子家庭の収入は、2人以上の勤労者世帯(世帯主の年齢35~39歳、平均世帯人員3.74人、持ち家率68.3%)の収入(実収入461,114円、可処分所得383,233円)の半分以下です。
公営住宅にはすぐに入居できないので、離婚後は親と同居しなければ、民間の賃貸住宅に入居せざるを得ません。家賃は都市部では、月7~8万円かかるでしょうから、手取りで20万円以上は欲しいところです。
離婚前に離婚給付の取り決めをしよう
家計の再建には、収入を増やす、支出を減らす、資産運用しか方法はありません。
しかし、専業主婦だった人や小さな子がいると正社員で働くのは難しく、就労収入を増やすのは容易ではありません。また、支出を減らすといっても、ギリギリの生活を送っている母子世帯にもっと節約をしましょう、といっても実効性がありません。
そこで、離婚前からしっかり収入を確保する準備をしましょう。
就労以外に収入を増やす方法として、離婚前に離婚給付の取り決めをしっかり行うことが大切です。主な離婚給付には養育費、財産分与、慰謝料、年金分割があります。
まず、養育費について見てみましょう。
多くの女性が子どもを引き取って育てますので、養育費の取り決めをしてから離婚をすることがとても大切です。離婚を急ぐあまり、養育費は要らないとするケースもあります。しかし、養育費は子どもの権利ですから親が奪うことはできません。
また、離婚後の生活のなかで養育費があれば、生活が楽になります。先の厚生労働省の調査によると、平均月額は43,707円となっています。これがあるかないかは大きな差です。
養育費の支払いを確実にするため、養育費の取り決めは公正証書にし、「養育費の支払いが不払いになったら、強制執行をしてもよい」という旨の記載(執行認諾文言)を入れることが必須です。
一方、厳しい現実もあります。
同調査によると、養育費の取り決めをしている人は42.9%にすぎません。また、現在も受けている人は24.3%ですので、途中で養育費が支払われなくなってしまうケースも少なくありません。
次に、財産分与に関して、よく揉めるケースにマイホームがあります。
住宅ローンが残っている場合、どちらが家に住むのか、ローンはどちらが払うのかで揉めるケースが少なくありません。妻と子が住み続け、夫がローンを支払うケースでは、夫がローンを払い続けるのか保証がありません。
このように住宅ローンを巡っては複雑な問題が絡みますので、弁護士に相談するとよいでしょう。法テラスであれば無料で相談できます。
慰謝料は離婚の原因が浮気以外は請求するのは難しいでしょう。
裁判で仮に認められても、せいぜい100~200万円程度です。弁護士に頼む場合、弁護士費用を考えたら割に合いません。
年金分割には、合意分割と3号分割の2つがあります。
合意分割は、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を、当事者間で分割することができる制度です。
3号分割は、国民年金の第3号被保険者であった人からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における、相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です(当事者の合意は不要)。
ただし年金がもらえるのは、自分が老齢年金を受給できるようになってから、ということは知っておきましょう。
詳しくは、年金事務所に相談してください。
離婚後は年金の種別が変更になりますので、手続きを忘れずにとりましょう。
離婚前に国民年金の3号被保険者であった人は、離婚後に働いて第2号被保険者になるか、自営業者等であれば第1号被保険者になります。
第1号被保険者の場合、自分で国民年金に加入し自分で保険料を支払うことになります。滞納すると障害年金などももらえなくなります。滞納に注意しましょう。
離婚給付の時効に注意
離婚給付は離婚後に請求することもできます。しかし、一定の期限内に請求しないと請求できなくなるので、注意しましょう。
時効に関し、慰謝料は離婚から3年以内。財産分与、年金分割は2年以内。離婚時に養育費の支払いを取り決めていた場合、原則、5年の時効期間が定められています。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。