更新日: 2022.07.11 その他暮らし
単品と定食で価格バランスが違う! ギョウザの不思議な価格差とは?
運よく並ばずに入れましたが、焼き上がりまで15分くらい待たされるのはいつものお約束。暇つぶしにメニューをしげしげと見ていたら、不思議な価格差に気付いたのでした。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
ギョウザ単品では、何個でも単価が同じだけど……
この店で提供されるギョウザは、俵型の形状のものを大量のお湯や油を使って独特に調理したもので、焼き上がりまで時間がかかるのはそのため。千葉県野田市発祥といわれる有名チェーンの系譜を引くようです。
このようなギョウザが主体で、価格は単品だと何個でもずっと60円(税込み価格。以下同じ)。それ以外の食べ物は、チャーハン、ライスセット(ライス、みそ汁、小皿お新香)くらい。ライスは単品で大盛りやお代わりの設定がされ、お新香はつまみ用の日替わり単品の提供もあります。ここで【図表1】をご覧ください。
ライスセットは、どのギョウザ定食でも同じ量です。①の場合、ギョウザの数が増えるとライスセットの割引額はどんどん増えていきます。一方、ライスセットの価格を固定してみた②の場合には、割引額が増えると同時にギョウザの数も増えているので、おトク度(割引率)の点では量が一番多い16個の定食が最高ではない。数字の面では、おもしろい現象となります。
逓減あり、均等あり。「限界効用」とは
以前に、「限界効用逓減の法則」という用語について説明したことがあります。モノやサービスを続けて消費するとき、機会が増えていくと追加する分から得られる効用(効果や満足度)は逓減(次第に減少)するという意味です。この「限界」はリミット(limit)ではなく、一番近い時点つまり連続した時間の「端っこ」を意味するマージナル(marginal)を示します。
例えば、真夏の風呂上りに飲むビールを思い浮かべてください。最初の1杯は、疲れや喉の乾きを一気に癒してくれるもの。しかし、2杯、3杯と飲んでいっても1杯目ほどの感動や満足感はないように思われる。こんなイメージだと言及しました。
ところで、この店のギョウザは単品では個数が増えても単価は同じ。たくさん買っても割引(単価が安くなる)がないのは、効用(満足度)が逓減しないから。そんな自信が店側にあるのかもしれません。
また、「(加重)限界効用均等の法則」という用語もあります。例えば(A)と(B)2つの財があって、(A)のほうが(B)よりも限界効用が高めだとします。まずは(A)を選ぶ人が多いでしょう。しかしそればかりではいつか飽きてしまいます。
ある予算額があると、(A)ばかりでは飽きてしまう部分は(B)に振り向けられていき、予算額ちょうどになるところでは(A)と(B)のそれぞれの効用(満足度)は均等(バランス)している。食べ物に例えると、「(A)も(B)も、もういいやー」といった状態です。
ここで(A)と(B)を、ギョウザとライス(順不同)で考えてみてください。ギョウザにライスが合うと考える人は多いでしょう。しかし双方の適量バランスは人それぞれで違います。
大量のギョウザを大量のライスで食べたい人からすると、この店のギョウザ16個定食では、ライスの量がもの足りないかも。一方、ライスは欲しいけど少量でいい人ならば、同8個定食だとライス多すぎに感じることだってあるのです。
まとめ
こんな小難しいことを考えながらギョウザを食べたりしないぞ。そうしたお叱りをいただくといけないので、この辺で終わりにします。いろいろ暗算したりしていて、焼き上がりを待つ時間がいつもよりずっと短く感じられた。その点だけは、筆者にとってメリットだったかもしれません。
原油価格の高騰・高止まりや円安基調の継続によって、電気やガスなどの料金値上げが続くと予想されます。小麦粉や油ほか食品関連価格の高騰も続いています。今回のギョウザ店も、次に訪れたときには各価格が値上げされていて、ギョウザ定食のアンバランスにも思える価格設定も変わっているかもしれません。
それはさて置き、量が多くても計算上はおトクにならない場合だってある。また(ギョウザとライスのような)複数の品に対するそれぞれの「適量」の感じ方や基準は、人それぞれだ。そんなことを今回の価格表から考えさせられたのでした。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士