【FP解説】児童手当、どのように変わった?
配信日: 2022.07.12
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
児童手当とは
改正前の児童手当の概要をざっくりおさらいしましょう。
児童手当は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に支給される手当です。支給額は、0~3歳未満が月額1.5万円、3歳~中学生が月額1万円です。第3子以降は3歳~小学校まで1.5万円になります。
ただし、所得制限があり、児童を養育している方の前年の所得が一定以上だと児童手当は支給されません。たとえば、扶養親族等の数が3人(児童2人+年収103万円以下の配偶者のケース等)の場合、収入額の目安960万円以上だと児童手当は支給されません。
そのかわり、特例給付(所得の上限額はありません)として一律5000円が支給されます。
共働きの場合は、所得の高い方の所得額で判断されます。夫婦の合算ではありません。子ども1人あたり支給額の合計は約200万円になりますので、貯めておけば子どもの大学等の入学金や授業料などに使えます。
お子さんが生まれたときや、他の市区町村から転入したときは、現住所の市区町村(公務員の場合は勤務先)に「認定請求書」を提出する必要があります。市区町村の認定を受ければ、原則として、申請した月の翌月分の手当から支給されます。公務員の場合は、児童手当は勤務先から支給されます。
申請が遅れると、原則、遅れた月分の手当が受けられなくなりますので、ご注意ください。 支給時期は原則として毎年6月、10月、2月で、それぞれの前月分までの手当が支給されます。
6月分以降の児童手当等を受けるには現況届の提出が必要です。現況届は、毎年6月1日の状況を把握し、6月分以降の児童手当等を引き続き受ける要件を満たしているかどうかを確認するために必要な書類です。現況届が未提出の場合は、6月分以降の手当が受給できなくなります。
改正の内容
令和4年(2022年)6月分以降については、現況届の提出が原則不要になりました。ただし、各市町村によっては、引き続き現況届の提出を求めることもありますのでご注意ください。
「特例給付」に新たに所得の上限額が設けられました。10月支給分(6~9月分)からは、児童を養育している方の所得が一定以上の場合、児童手当等(児童手当・特例給付)は支給されません。扶養親族等の数により所得限度額は変わります。
たとえば、扶養親族等の数が3人(児童2人+年収103万円以下の配偶者のケース等)の場合、収入額の目安960万円未満では上記の児童手当額が支給されます。960万円以上1200万円未満では児童手当は支給されませんが、特例給付が支給されます。1200万円以上では、児童手当も特例給付も支給されません。
なお、収入はあくまで目安であり、実際は、所得から一律控除8万円および雑損、医療費、小規模企業共済等掛金、障害者、寡婦・ひとり親または勤労学生控除額を差し引いた後の金額で、所得制限を確認します。
なお、所得とは自営業の方の場合、収入から必要経費を差し引いた額(確定申告の総所得金額)を指し、給与の方の場合、源泉徴収票の給与所得控除後の金額を指します。収入と所得は異なりますので注意してください。
共働きの場合は、所得の高い方の所得額で判断される点は変更ありません。
(出典:内閣府 児童手当制度のご案内)
まとめ
毎年6月に提出していた「現況届」が、令和4年6月分以降は原則不要になり、一定以上の所得の方には、10月支給分より「特例給付」が廃止になります。
ただし、例えば千代田区のように、6月以降、所得上限額超過により児童手当の支給対象外となる中学生以下の児童を養育する方にも、新たに次世代育成手当として、「特例給付」と同額の月額5000円を支給する自治体もあります。月5000円と高所得者にはわずかな金額に感じるかもしれませんが、15年間の支給総額は大きな金額になります。
お住いの自治体の制度を調べてみてはいかがでしょうか。
出典
内閣府 児童手当制度のご案内
千代田区 次世代育成手当(区独自制度)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。