【渋滞は11兆円の損失!?】渋滞が引き起こす「損失額」について解説
配信日: 2022.07.14
本記事では、そもそも渋滞とは何か、高速道路渋滞の多発地点、そして渋滞による経済的損失の規模などについて紹介します。
執筆者:八木友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
渋滞とは
日本道路交通情報センターは、どのような状況で「渋滞」と呼べるかについて、次のように定義しています。
●高速道路は時速40キロメートル以下
●都市高速道路は時速20キロメートル以下
●一般道は時速10キロメートル以下
なお、高速道路における主な渋滞原因は、次の3つです。
●交通集中渋滞
●工事渋滞
●事故渋滞
このうち、交通集中渋滞は全国における全渋滞の約64%を占めています。
高速道路の渋滞の多発地点
2019年に高速道路で起きた渋滞を、地点別に「渋滞損失時間」の順で並べたものが図表1です。
なお、渋滞損失時間とは、「本来、有効に使えたはずなのに、渋滞によって失われた時間」のことです。例えば、図表1の1位に当たる「上り・海老名JCT~横浜町田間」は、年間171.5万人の時間を171.5時間失わせたことになります。
図表1
順位 | 渋滞損失時間※ | 道路名 | 方向 | 区間名 |
---|---|---|---|---|
1 | 171.5 | 東名高速道路 | 上り | 海老名JCT~横浜町田 |
2 | 167.0 | 中央自動車道 | 上り | 調布~高井戸 |
3 | 116.6 | 東名高速道路 | 上り | 東名川崎~東京 |
4 | 110.6 | 東名高速道路 | 下り | 横浜町田~海老名JCT |
5 | 105.6 | 東京外環自動車道 | 内回り | 外環三郷西~草加 |
※(単位:万人・時間/年)
出典:国土交通省 高速道路の交通状況ランキング
渋滞による経済的損失額
国土交通省が2015年に「高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針」を取りまとめた際の調査では、1人当たり年間で約40時間の渋滞損失時間があるとされています。
調査は2012年時点で、この年の日本の総人口は、約1億2700万人でした。したがって、総人口に対して渋滞は、40時間 × 1億2700万人=約50億時間もの無駄な時間を作ってしまったことになります。
そして、2012年の日本の最低賃金は時給749円だったため、749円 × 50億時間 = 約3兆7000億円です。これは、最低賃金で計算していますので、当時の給与所得者平均年収の408万円で計算すると数字がさらに膨らみます。平成24年の労働者1人の平均労働時間は7時間45分で、平成24年の土日祝合計が116日を休みと仮定した場合、損害額は約11兆円となります。
まとめ
交通渋滞は通過に時間がかかるため、有効に使えるはずだった時間を使えなくなります。有効に時間が使えないと生産性にも影響します。反対に、道路状況が良いと、経済的損失も減少することになります。
出典
公益財団法人日本道路交通情報センター よくあるご質問
NEXCO西日本 渋滞原因解説
国土交通省 高速道路の交通状況ランキング
国土交通省 基本方針に関するデータ集
総務省統計局 人口推計(平成24年10月1日現在)
厚生労働省 平成24年度地域別最低賃金額改定の答申について
厚生労働省 平成24年就労条件総合調査結果の概況:結果の概要(1労働時間制度)
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター