更新日: 2022.07.26 子育て

高収入のひとり親が受けられる公的支援には、どのようなものがあるの? 確認してみよう!

執筆者 : 伊藤秀雄

高収入のひとり親が受けられる公的支援には、どのようなものがあるの? 確認してみよう!
ひとり親向けの公的支援の多くには、所得制限が設けられています。年収いくらくらいが境目なのでしょうか? 高収入でも利用できる制度はあるのでしょうか? 解説していきます。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

公的支援が利用できる年収水準は?

さて、「高収入」というと皆さんはいくら以上を思い浮かべるでしょうか。600万円、あるいは800万円以上?
 
厚生労働省がひとり親世帯に行った調査(※1.)では年間収入について聞いています。遺族年金や養育費などの収入を除いた就労収入額の中央値は、母子世帯が169万円、父子世帯が350万円です。
 
では、公的支援の所得限度はいくらくらいなのでしょうか。ひとり親のための公的給付で、まず挙げられるのが「児童扶養手当」(※2.)です。全部支給は月額4万3070円、一部支給はその額から1万160円まで所得に応じ減額されます。2人目以降も加算があり心強い制度なのですが、表1の所得限度額があります。
 
表1.


 
子どもが2人までのケースだと、一部でも支給されるのは年収400万円以下が目安とわかります。
 
実は、児童扶養手当の受給可否を支給基準にしているひとり親向けの他の公的支援には、生活支援特別給付金、住宅手当、JR通勤定期券や鉄道・バスの割引・無料パス、水道・下水道料金の免除等があり、年収400万円は、ひとり親にとってさまざまな支援の適用可否が線引きされる水準といえます。
 
収入中央値の金額も加味し、仮に収入400万円以上を「高収入」としてみます。全世帯ではなく、ひとり親世帯にとっての高収入、という切り口です。それでも、母子世帯にとっては年収の2倍以上の金額となりますね。
 
このように児童扶養手当の可否は、他の制度利用にも深く関わります。受給中の方は、他に受けられる支援がないか、今一度ご確認ください。
 

高年収でも利用できる公的支援

年収400万円以上のひとり親世帯が利用できる公的支援には、次のようなものがあります。
 

1. 母子父子寡婦福祉資金貸付金(※3.)

表2.

他にも事業継続、住宅、生活用など12の資金があります。いずれも所得制限はないですが、貸付審査があります。申請および相談窓口は各市区町村です。
 

2. 児童育成手当(※4.)

東京都の独自制度で、子ども1人につき月額1万3500円が支給されます。18歳になった最初の3月31日までの子どもに支給されますが、所得制限が児童扶養手当より緩やかになっています。

<所得制限限度額例>

1人扶養の場合:398万4000円
2人扶養の場合:436万4000円

所得がこの額ですから、収入が400~500万円台でも対象になりますね。学資準備など貯蓄にも役立ちます。
 

3. ひとり親家庭休養ホーム

この名称で確認できたのは東京都と名古屋市ですが、名古屋市は所得制限が児童扶養手当と同
じなので、年収400万円だと利用が微妙です。
 
都内は各区で内容が異なりますが、宿泊施設の利用料補助やテーマパークの無料入場券などです。所得制限がない区、児童育成手当と同水準の所得制限の区、などさまざまです。参考まで新宿区と世田谷区のリンク先を末尾に記載します(※5.)。
 

4. ひとり親家庭ホームヘルプサービス

残業で定期的に生活援助が必要な時、冠婚葬祭、一時的な傷病等の際に、一定期間ホームヘルパーを派遣し、育児や食事の世話などを手伝います。自治体により、所得制限なし、あるいは児童育成手当対象であること、学童保育優先など条件がありますが、所得に応じた負担金で利用できるところが多いです。
 
派遣時間帯や対象年齢上限は自治体により異なります。
 

5. ショートステイ、トワイライトステイ

就労、その他の事情で子の面倒が見られない時だけでなく、親自身が育児疲れから一時的に子どもと距離を置きたい時などに、乳児院や児童養護施設、自治体施設等に預かってもらうものです。これは、市区町村でひとり親に限らず行っているところがあり、ひとり親世帯への利用料割引の設定もあります。
 
泊まりがけで預かる「ショートステイ」と夜間の時間帯に預かる「トワイライトステイ」の2種類があり、対象年齢や連続利用日数など内容は自治体により異なります。
 

最後に

年収が多くても、親との同居有無や仕事との両立など、困難な場面に直面しているひとり親世帯は多いはずです。金銭的な給付はもちろん、これらのサービスで上手に他人に頼り、自分の時間や精神的余裕を確保するのも大切なことと考えます。
 

出典

(※1.)厚生労働省 全国ひとり親世帯等調査(旧:全国母子世帯等調査) 平成28年
(※2.)厚生労働省 母子家庭等関係 ひとり親家庭の支援について 4.経済的支援
(※3.)内閣府男女共同参画局 関連法令・制度一覧
(※4.)東京都福祉保健局 シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビTokyo お金に関すること
(※5.)新宿区 ひとり親家庭休養ホーム
世田谷区 ひとり親家庭休養ホーム
 
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。

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