働き方改革よりも注目!?「無期雇用転換」に向けてしておきたいこと
配信日: 2018.04.05 更新日: 2019.01.10
ところが、この春注目すべきは、働き方改革だけではありません。労働関係で注目すべき労働法改正の「無期雇用転換」の影響が、平成30年4月に初めて現れるのです。
今回はこの無期雇用転換についてお話します。
Text:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
労働契約法の改正の影響が出るのは平成30年4月
労働契約法の改正が行われたのは平成24年ですから「なぜ今頃注目するの?」と思う人もいるでしょう。その内容が問題なのです。
これまで、パート、アルバイト、嘱託社員などは、限られた期間の雇用契約で、その契約が終われば、いつでも切られるかもしれないという不安があったはずです。
それがこの改正により、どんな名称であろうと、労働契約を更新し続けながらでも、同じ勤務先での雇用期間が5年を超える場合には、事業主に無期雇用転換を申し入れできることとなったのです。
雇用契約は、採用時にはしっかりと確認すべきですが、そのあと更新が続くと、それがいつまでなのか、どんな条件なのか曖昧になってくるものです。当然、いつからいつまでが自分の契約期間かもわかりませんし、何回更新したかということが曖昧な場合もあります。
アルバイトやパートでは、書面で労働契約をもらったことはないという人もいます。ただ、こんな人でも、今回、労働条件の変更を申し込めるケースもあります。これまでの労働条件はどんな契約だったのか、自分は対象者なのかどうかの確認をしておくべきでしょう。
無期転換を申し込めるってどんな人
繰り返し説明しますが、この改正は、同じ勤め先に有期雇用労働者が通算5年を超えて、繰り返し更新している場合が対象です。
そして、平成25年4月1日以降に開始する労働契約です。これまで何度も同じ条件で雇用契約を更新してきた人は、通算で何年になるかを確認しておきましょう。
注意すべき点もあります。無期雇用契約への転換というのは、正社員になることイコールではありません。あくまでも、突然契約を打ち切られない安定した契約になったという点がポイントです。
無期転換になったことで、給与が上がる、手当がつく、というわけではないことも注意点です。
さらに、自分が無期雇用転換への申し込みができる条件を満たしていたとしても、申し込むのも申し込まないのも自由です。
この申し出をすることで、例えば仕事内容の増加や配転拡大など、転換後に自分にとってのデメリットが見受けられる場合には申し込まないという選択肢もありかもしれません。
事業主の説明をきっちりと聞くことが大切
ここまでで、じゃあ自分にとってはどうなのかわからない、という人へのアドバイスです。
まずはきっちりと会社から自分が締結している労働条件の説明をしてもらいましょう。就業規則を読むのもいいでしょう。会社の規則はさまざまです。会社の説明で納得できない、もしくは不明な点が少しでもあるということであれば、お役所に聞いてみましょう。
「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」では、無期雇用についての説明と問い合わせ先がわかります(http://muki.mhlw.go.jp/ )。
いまはネットでいろいろな情報が得られますが、情報がすべて正しいとは限りません。正しい情報がほしければ、やはり直接問い合わせるのが一番です。
パートなら、急に契約を打ち切られても仕方がないと思っている人もいますし、雇用契約を書面でもらえないのはアルバイトだから仕方ないという人もいます。
無期転換の制度が、非正規労働者の救世主になるとは言い切れませんが、いつ契約を打ち切られるかわからない不安定な身分から解放される、ということはできるでしょう。
会社にとっては大変手間のかかる、けれども対応しないと争いの火種や人件費増を抱えるこの改正、安定した身分を求める労働者にとっては絶好のチャンスとなる改正だけに、この時期の最終確認は、労働者、事業主双方が対応すべきといえるでしょう。
Text:當舎 緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP®。