更新日: 2022.08.10 その他暮らし

【1リットル当たり136.2円!】 本当にあったレギュラーガソリンの販売事例。どこで? どうして?

執筆者 : 上野慎一

【1リットル当たり136.2円!】 本当にあったレギュラーガソリンの販売事例。どこで? どうして?
ガソリン価格の高騰が続いています。昨年の年明けにレギュラー1リットル当たり(以下、この単価表示は原則として省略)136円程度だったもの(※1)が、今や170円前後の水準が普通になっている状況です。そんな中、ある日あるガソリンスタンドでは136.2円で販売していました。これって、今ではびっくりするような数字ではないでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

136.2円で給油したのは、こんな場所

今年・2022年6月に所用で岩手県に出掛けたときのこと。4日の朝に盛岡市でレンタカーを借りて向かったのは同県の遠野市。「民話の里」として有名なところですが、街なかの幹線道路沿いのセルフスタンドで給油した際の現金価格がこの136.2円でした。
 
内陸部で山の中の辺鄙な場所といったイメージもありますが、三陸沿岸の工業エリア・釜石からも30キロメートルちょっと。釜石自動車道のインターチェンジも市内に設けられ、花巻で東北自動車道、釜石で三陸沿岸道路と、東西両方面への高速道ネットワークが整っています。しかも、釜石自動車道や三陸沿岸道路の大半は通行料無料です。
 
ちなみに、同じ日の夕方、同県一関市内でレンタカー返車前に給油(セルフスタンド)した際の価格は166円でした。
 

本当は200円を超える状態がしばらく続いている

ガソリン価格の高騰を抑制するため、今年1月から政府の「燃料油価格激変緩和補助金」がガソリン等に投じられています(※2)。【図表1】は、この補助金の効果をグラフで示したものです。
 

 
グラフの下の実線「補助後の価格」を見ると、170円前後で推移していることが確認できます。一方、上の破線「補助がない場合の価格」を見ると、今年5月以降200円を超える水準となっています。
 
わずか10リットルの給油でも、1000円札2枚では足りない計算です。補助金のありがたみを感じるよりもまず、「本当は、こんなにものすごく高くなっているのか!」といった驚きが湧き上がってきませんか。
 
この補助金制度には、【図表2】のような特徴があります。
 

 

キーワードは、「輸送コスト」と「競争環境」か?

都道府県平均ベースで、鹿児島県のガソリン価格が日本一高い数値となった。以前にそんな記事を書きましたが、その理由のキーワードは離島の多さでした。
 
調査サンプル地点を各県内で平準化して設定しているため、輸送コストが大きく販売価格も高くなりがちな離島エリアを多く抱える県は高い平均値になる。そんな説明をしました。
 
では、今回の遠野市のガソリン価格の安さは、どうしてなのか。(※2)の「よくあるご質問」の回答の中にも、「ガソリンの価格は輸送コストの違いなどもあり、地域差が生じるものです」というコメントが確認できます。
 
繰り返しですが、輸送コストの高さはガソリン価格にダイレクトに影響します。ということは逆もそうでしょう。東北地方の製油拠点は宮城県仙台市にあります。遠野市の市街地と周辺高速道路網との位置関係は先述のとおりで、製油拠点から高速道路を利用すれば短時間、そして無料区間の恩恵を受けやすいロケーションです。低価格で提供できる要因の1つと考えられます。
 
また、遠野の中心市街地の幹線道路沿いにはかなりの数のガソリンスタンドが出店しています。筆者が給油したガソリンスタンド以外でも、同じ日に140円台や150円台の価格案内看板を掲出していたところがあったように記憶しています。
 
これが、安さのもう1つの理由。つまり競合店が多い競争環境があると、価格は下がりやすくなるということなのでしょう。
 

まとめ

今回の補助金制度、スタート時は1リットル当たり5円を上限としたものでしたが、その後どんどん拡大されています。先述【図表1】上下の線の差額のように、近時では40円前後にものぼる水準(価格抑制効果ベース)となっているようです。
 
5月31日に成立した2022年度補正予算も、かなりの部分がこの制度のために使われることになります。ガソリンほか燃料油は、国民生活の足元を支える重要な物資。その価格を抑制するために税金が投入されるのは、意義あることだと思います。
 
一方で、「マイカーにガソリンを給油する」というシーンにフォーカスすると、クルマを持っている人だけに恩恵が及んでいるのではないか。こうした不公平感や「使う人がそのコストを負担するという本来の仕組み」が少しゆがめられているといった印象は否定できない。そんな側面もあるのかもしれません。
 

出典

(※1)経済産業省資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(<調査結果一覧>のエクセルファイルで、2021年1月4日の全国平均価格は136.1円)

(※2)経済産業省資源エネルギー庁「燃料油価格激変緩和補助金」

 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

ライターさん募集