更新日: 2022.08.18 その他暮らし
節税に使える! 中小企業経営者・フリーランス・自営業者が知っておくべき「経営セーフティ共済」制度とは?
どんな制度なのか、メリットだけでなくデメリットもあわせて簡単に解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
経営セーフティ共済とは?
経営セーフティ共済は「中小企業倒産防止共済制度」ともいいます。取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった(売上・報酬が未入金のままになった)場合に、自社も連鎖して経営状況が悪化したり、倒産したりしてしまう事態を防ぐための制度です。
加入して掛け金を支払っていれば、もしものときには、掛け金の最大10倍(最大8000万円)までの範囲でお金を借りることができます。
掛け金の金額は月5000~20万円の間で5000円単位で自由に選択でき、法人なら「損金」、個人事業主なら「事業所得の必要経費」として計上できます。不要になれば解約でき、解約時には「解約手当金」が受け取れます(納付月数が12ヶ月未満の場合は掛け捨てとなります)。
加入できるのは、「継続して1年以上事業を行っている中小企業者」です。会社はもちろん、自営業者やフリーランスなどの個人事業主、企業組合や協業組合なども対象です。
ちなみに、経営セーフティ共済は「小規模企業共済」と同じ、「独立行政法人中小企業基盤整備機構」という組織が運営しています。
経営セーフティ共済のメリット
経営セーフティ共済のおもなメリットは以下の2点です。
1.ピンチに備えられる
取引先の倒産というピンチに備えられます。あてにしていた入金がなくなって自社の経営が困難になりそうなとき、すぐにお金を調達できるのは安心につながります。
しかも、共済金の貸し付けは「無利子&無担保&保証人なし」で利用できます(ただし、借りた金額の10分の1に相当する掛け金の権利が消滅します。その分、解約手当金として受け取れる金額が減るということです)。
返済(償還)期間は貸付額に応じて5~7年とされています。一度も延滞せず決められた期限より1年以上早く返済できれば、「早期償還手当金」を受け取れます。
2.節税に使える
経営セーフティ共済の特長として見逃せないのが、「節税に使える」という点です。掛け金は全額「損金」または「必要経費」として処理できるため、掛け金を多くすればするほど、利益や所得に対して課される税金を少なくできます。
個人事業主なら、所得税や住民税はもちろん、国民健康保険料(国保)も安くなります。少々ややこしい話になりますが、支出内容によって、経理上どう処理できるかが違います。
経営セーフティ共済は「経費」として処理できます。国民健康保険料は「控除」が増えても安くなりませんが、「経費」が増えれば安くなります。
例えば、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金は「控除」なので、所得税と住民税は軽減できても、国民健康保険料を安くする効果はありません。
「国保が高い……」と悩む個人事業主にとって、その負担を合法的に抑えられる経営セーフティ共済は、貴重な存在です。
経営セーフティ共済のデメリット
一方、加入にあたっては注意しておきたい点もあります。
■早期解約だと元本割れ
経営セーフティ共済を解約すると、「解約手当金」を受け取れます。掛け金を支払った期間が40ヶ月(3年4ヶ月)以上なら、掛け金の全額が戻ってきます。
ただ、それより早く解約した場合は元本割れ(支払った金額より受け取る金額の方が少ない状態)になります。12ヶ月以上支払っていれば8割以上は戻ってきますが、12ヶ月未満だと一切戻ってきませんので注意しましょう。
■解約手当金には税金がかかる
先述のとおり、掛け金を支払っている間は節税になります。ただし、解約手当金を受け取ると「益金」または「事業所得の収入金額」として計上することになるため、税金がかかります。
税金の負担を抑えるには、赤字か、なるべく売上が少ないタイミングで解約するのがおすすめです。
まとめ
中小企業経営者や個人事業主だからこそ、活用できる制度はいくつもあります。経営セーフティ共済もその1つといえるでしょう。
解約のタイミングを見計らう必要がありますが、うまく活用すれば「リスク軽減×節税」の一石二鳥が狙えます。一度検討してみてはいかがでしょうか。
出典
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構) 経営セーフティ共済
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構) 経営セーフティ共済(平成30年9月版)
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執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表