更新日: 2019.01.08 その他暮らし
「書類上だけでいい。保証人になってくれないか?」この言葉が持つ危険性
悩んでしまうものの、今後の関係などを考え、最終的には承諾してしまうかもしれない。という方は多いのではないでしょうか。
ところが、たとえ「書類上だけ」であっても、保証人を引き受けてしまうことで、思いもよらない事態となってしまうことも珍しくありません。
そこで、親友から保証人について頼まれたAさんの事例をみていきましょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
親友から書類上の保証人について頼まれたAさん
「訳あってお金が必要なんだ。書類上だけでいいから保証人になってくれないか?あくまで形式的なものだから絶対に迷惑はかけない。」
そう親友から頼まれたAさん。書類上だけなら・・・と借入額500万円の契約書に保証人として名前を書き、印を押してしまいました。
ある日、AさんのもとへBさんが突然訪ねてきました
ある日、お金の貸主であるBさんがAさんのもとを訪れ、こう言いました。
「親友さんと連絡がつかなくなってしまった。それに、お金を1円も返してもらっていない。あなたは保証人であるのだから、利息や損害金などを含めた600万円について、保証人として払ってもらいたい。」
Aさんは言いました。「確かに私は500万円の借り入れに対する保証人として名前を書き、印を押しました。
しかし、それはあくまで書類上での形式的なものです。それに、契約書に記載された金額は500万円だったはずです。600万円の保証人になったわけではない」と。
それに対し、Bさんは「形式的なものだとかそういったことは関係ない。契約書に名前と印がある以上、あなたは保証人として責任を追うべきだ。それに、元の金額は500万円でも、利息や損害を合計すると600万円になる。」と反論しました。
果たしてAさんは親友に代わり、600万円ものお金を返済しなければならないのでしょうか。
「書類上のみ」の保証人は通用しない
お金の借主である親友さんから頼まれて保証人になったとしても、保証契約自体はあくまでも貸主であるBさんと、保証人となるAさんとの間でする契約です。
たとえ、親友との間で「書類上の保証人として名前を書くだけでいい。実際にお金を返す必要はない。」と約束していたとしても、保証人として契約書に名前を書き、印を押した以上Aさんは保証人としての責任を免れることができません。
また、通常であれば、保証人は催告の抗弁権(まずは主たる債務者である親友に請求してください。と言える権利)を行使することができるのですが、次のような場合には催告の抗弁権を行使することができません。
・主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
・主たる債務者の行方が知れないとき
したがって、Aさんは催告の抗弁権を行使することができず、Bさんからの請求を拒むことができません。
保証人として責任を負うのは元の金額だけではない
保証債務の範囲には、主たる債務の利息や損害賠償のほか、債務に従たる全てのものが含まれます。
そのため、Aさんは元の借入額である500万円だけでなく、利息なども含めた600万円について、保証人として責任を負うこととなるのです。
保証人になること自体は簡単です。書類に名前を書き、印を押すだけで保証人となってしまいます。
ところが、一度保証人になってしまうと、万が一の際に重い責任を負うこととなります。
保証人になってしまった以上「書類上だけで実際には責任を負わない」と言い逃れをすることは許されません。
たとえ親友や先輩から「書類上だけでも」とお願いされたとしても、安易な気持ちで保証人になることは避けるようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー