更新日: 2022.08.24 その他暮らし

公営競技(レース)の「特払い」。聞きなれない用語から見えることとは?

執筆者 : 上野慎一

公営競技(レース)の「特払い」。聞きなれない用語から見えることとは?
今年・2022年7月3日に金沢競馬のあるレースで「特払い」の珍事があった。そんな報道がされていました。わざわざ報じるくらいだから、かなり珍しいのだろう。ひょっとしたら、とんでもない「大穴」でも的中したのか。
 
このニュースのヘッドコピーだけ見たとき、そんな先入観がありましたが、実は金額面では全然違いました。どんな内容だったのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「特払い」とは

ファンの方以外には聞きなれないと思われる、この「特払い」。日本中央競馬会のサイト(※1)では、次のように解説されています。
 
「投票法毎に勝馬投票の的中者がいない場合には、競馬法により、その投票法に投票した購入者全員に対して、特払いとして払戻率70パーセント台の投票法では100円につき70円、払戻率80パーセントの投票法では100円につき80円の払戻を行うことをいう。ただし、WIN5で的中者がいない場合には、競馬法により、払戻対象総額を次回のWIN5にキャリーオーバーするため、特払いを行わない。」
 
通常の宝くじは発売済の各番号の中から抽選をするので、必ず当選者がいます。一方、公営競馬のように各回レースでの順位などを予想して投票する場合はどうか。投票方式が複数の順位を組み合わせて予想するタイプによっては、的中者がいないケースがありえます。
 
冒頭の金沢競馬では、「3連単」の投票券(馬券)で的中者が誰もいなかったため、このレースで3連単を購入した人全員に馬券100円当たり70円を払い戻したようです。
 
なお3連単とは、出走する馬が4頭以上の場合に発売され、「1着、2着、3着となる馬の馬番号を着順通りに当てる馬券」で、「着順通りに当てないと的中にならないため、難易度は高いですが、配当は高くなりやすい傾向にあります」と説明されています(※2)
 
この特払い、特定の組み合わせへの“投票漏れ”によって発生するわけです。投票数が多くなるほど“投票漏れ”が起こりにくくなりますから、投票数(売上高)に左右されやすい側面が推測できます。
 
実際に、中央競馬では数十年間発生していない一方、地方競馬では今回のように時たま見られるようです。いわゆる「公営ギャンブル」の競輪、オートレース、ボートレースでも発生していて、それぞれの運営団体のサイトでも特払いに関する解説や特払いをしたレースの概要を確認できるものがありました。
 

「特払い」で70パーセントも払い戻されるワケとは

先述の特払いの解説の後半には、的中者がいない場合の「キャリーオーバー」についての記述が見られます。宝くじの「ロト7」や「ロト6」、スポーツくじ「BIG」などでもキャリーオーバー制度があるので、【ある回で的中者がいない場合、その回の投票者には配当がない】ことは当たり前のようにも思えます。
 
そう考えると、的中者が誰もいない場合に対象の投票券購入者全員に一定の払い戻しがされる特払いは、少し意外な感じがするかもしれません。しかも、その払戻率が70%とかなり高いのです。
 
先述の競馬の特払いの解説には、「競馬法により」というフレーズが2回も出てきます。
 
競馬に限らず他の3つの競技も含めた「公営」レースの賭け事には、それぞれ根拠となる法律があります。各払戻金の率も、それぞれ条文で70%以上(75%以上のものもあり)を基準に定めるとされています。
 
払い戻されない部分は、いわば“運営経費”です。的中者がいなかった場合、運営経費以外は払い戻す。そうした方針に基づいて、特払いの払戻率もそれぞれの根拠法で決められているのでしょう。
 

まとめ

競馬、競輪、オートレース、ボートレース。4つの公営競技(レース)は、イメージも含めてそれぞれかなりの違いがあると思います。
 
一方で、的中者への払戻率、そして的中者がいなかった場合の「特払い」の率が同じような水準で決められている点には、「公営」ならではの同質性や類似性がうかがえます。
 
ところで、同じく「公営」の宝くじも一種のギャンブルです。以前にも書きましたが、この宝くじ、実は払戻率が50%弱しかありません。
 
一番身近で、手軽で、敷居も高くない。一見した「ギャンブル性」も各公営競技ほどは感じられない。そんなイメージのある宝くじが、実は払戻率ではずぬけて低いという意外性。今回の特払いの話題から、また思い出してしまいました。
 
それはさて置き、宝くじも公営競技も一獲千金の「夢」を買う側面があるものです。ただし、夢は結果が出た瞬間に「現実」に変わります。あくまでも自己責任の範囲で楽しみましょう。
 

出典

(※1)日本中央競馬会「競馬用語辞典」~「特払い」

(※2)日本中央競馬会「馬券の種類」~「3連単」

 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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