医療費は日本全体でいくら使われているの? 年度ごとの増加率なども紹介
配信日: 2022.08.26
本記事では、日本の国民医療費やその財源について解説します。
執筆者:八木友之(やぎ ともゆき)
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター
国民医療費の内訳
ここでいう「国民医療費」とは、該当する年度内に医療機関などで、傷病の治療に使った費用を合計したものを指します。この費用の中には、医科・歯科診療にかかる診療費用、入院時の食事・生活費用、訪問看護医療費などが含まれます。
傷病の治療費に限定しているため、正常な妊娠・分娩(ぶんべん)に要する費用や健康の維持・増進を目的とした健康診断、予防接種などに要する費用は含みません。
また、国民医療費は公費(国庫・地方合計)、保険料、患者負担を財源としています。
2019年度の国民医療費の内訳など
2019年度の国民医療費の総額は、約44兆円でした。国民医療費の内訳は、公費(国庫・地方合計)から約17兆円、保険料から約22兆円、患者負担などで約5兆円です。
なお、2019年の一般会計歳出は約102兆円です。そのうち社会保障関連費用は歳出の3分の1以上である約34兆円、この約34兆円のうちの約半分が国の医療費負担分です。
国民医療費の変遷
国が年度ごとに国民医療費の統計を取るようになったのは、1985年度になってからです。1985年度からの統計によると、数回だけ国民医療費が前年対比で下がっている年もありますが、費用は年を追うごとに増加しています。
2019年度の約44兆円という国民医療費は、1985年度の約16兆円と比較すると3倍近く増えていることになります。
また、国民所得から見ても、所得に占める医療費の割合が増加しています。1985年の国民所得に対する国民医療費の割合は約6.1%、2003年には約8.2%、そして2019年には約11.0%を記録しています。
なお、2022年の国の予算は約108兆円で、そのうち社会保障関連費用は約36兆円と2019年度を上回っています。
健保組合も高齢者医療の負担をしている
後期高齢者医療制度を利用する方は年々増えていますが、この後期高齢者医療制度を負担しているのが、大企業の健保組合です。
健保組合とは、常時700人以上の従業員がいる事業所などが、事業主の申請により厚生労働大臣の認可を受けて設立した組合です。KDDI株式会社やNTT株式会社などの大企業がそれぞれの健保組合を運営しています。
この健保組合からの高齢者医療への拠出は3兆円にも上るといわれています。
まとめ
国民医療費は年々増加し、国民所得に対する割合も増加し続けています。少子高齢化により増加傾向は今後も続くと見られています。国民所得に対して国民医療費が占める割合も増加し続けており、国民医療費が他で必要になる費用を圧迫してきていることがわかります。
国民医療費によって他に使わなければならないお金がなくなってしまわないよう、一人ひとりが健康に気を付け、元気に楽しく生活したいものです。
出典
厚生労働省 令和元(2019)年度 国民医療費の概況
農林中金総合研究所 国内経済金融
財務省 令和4年度予算のポイント
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター