更新日: 2022.09.07 その他暮らし

年金受給者でも生活保護は受け取れる? 年金受給者の受給条件を解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

年金受給者でも生活保護は受け取れる? 年金受給者の受給条件を解説
公的年金の受給開始年齢は、原則65歳です。もしも60歳で定年した後、仕事を継続しないと、収入が少なくなってしまうでしょう。「年金だけでは生活できない」という方も少なくありません。
 
生活保護は、最低限度の生活を保障することを目的とした、最後のセーフティーネットです。
 
では、最低限の生活を送るために年金だけでは足りない人は、生活保護を受け取ることができるのでしょうか? そもそも生活保護や公的年金とは、どのような制度なのでしょうか?
 
両制度の違いや、ダブル受給が可能なのかについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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生活保護と年金

生活保護と公的年金は、どちらも日本で生活する人を対象とした福祉制度です。しかし、両制度は、目的や対象、条件といった制度上の違いがあります。
 
両制度の違いについて理解し、その上で、両方を同時に受け取ることができるのか考えてみましょう。
 

生活保護とは?

生活保護とは、生存権を保障する日本国憲法第25条に基づき、資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために経済的支援を行う国の制度です。
 
居住する地域の役所の福祉課で申請すると、経済状況に関する厳格な審査が実施されます。
 
生活保護を受給できる主な要件は以下のとおりです。

・世帯収入が最低生活費(地域や家族状況によって決まる)を下回る
・病気やけがで働けない
・自宅や自動車などの財産がない
・家族の経済的な支援が受けられない

これらの要件を満たすことで、世帯単位で生活保護を受給することができます。日本全国で生活保護受給者は約200万人、約160万世帯となっており、生活保護を受給することは決して珍しくありません。
 

公的年金とは?

公的年金とは、社会保障の観点から国が運営する年金制度であり、現役引退世代の老後生活の安定が目的です。日本は「国民皆年金」という運営方法を採用しており、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する必要があります。
 
公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。国民年金は、すべての人が加入を義務付けられている基本の部分であり、厚生年金は、会社員や公務員が国民年金の上乗せとして追加で加入します。
 
さらに、会社や個人で加入する私的年金を、「3つ目の年金」と捉えることもあります。公的年金は生活保護とは異なり、現在の収入や資産があっても受け取ることができます。
 

年金受給者でも生活保護は受け取れる

結論からいうと、年金受給者であっても生活保護を受け取ることはできます。「年金受給者は生活保護を受け取れない」という規則は存在しません。
 
生活保護は、経済的困窮者を救済するセーフティーネットです。収入が最低生活費に満たない場合に、差額を支給してもらうことができるのです。公的年金とは制度の性格が異なるので、年金を受給しても最低生活費に満たないときには、生活保護を受給することが可能です。
 
生活保護は、最低限度の生活保障を目的にしている国の制度ですので、受給することは国民の権利です。年金だけで生活することが困難である場合、積極的に利用しましょう。
 
しかし、年金受給者であれば誰でも生活保護を受給できるわけではありません。年金を受給している状態で、生活保護を受け取る条件を満たしている必要があります。
 

年金受給者でも生活保護を受給する条件

年金受給者であっても、ほかの人と同様に、生活保護を受給するための要件を満たす必要があります。生活保護を受給するための要件を、もう一度確認してみましょう。

・世帯収入が最低生活費(地域や家族状況によって決まる)を下回る
・病気やけがで働けない
・自宅や自動車などの財産がない
・家族の経済的な支援が受けられない

最低生活費は、地域や家族状況によって異なります。
 
例えば、厚生労働省社会・援護局保護課の「生活保護制度の概要等について」(令和3年)によると、東京都23区内で1人暮らしをしている高齢者単身世帯(68歳)の最低生活費は、13万1680円です。受給している年金の金額が13万1680円を下回るときにその差額を受け取ることができます。
 
最低生活費を満たしていても、自宅や自動車、ブランド品などの財産があれば、換金しないといけません。これ以外にも、生命保険に加入しているときには解約し、解約返戻金を生活費に充当します。
 
そして、家族の経済的な支援が受けられないことも要件の一つです。家族や3親等以内の親族に「扶養照会」が実施され、扶養してもらえないか確認されます。
 
年金受給者であれば、子どもなどが対象となるでしょう。しかし、子どもに親を扶養する意思がない場合には生活保護を受給できます。また、親族から支援を受けていても、年金と合わせて最低生活費に満たない場合、差額を生活保護として受給できます。
 

年金受給者が受給できる生活保護の金額

年金受給者は要件に該当した場合、生活保護を受給できますが、どのくらいの金額を受け取れるのでしょうか?
 
生活保護で受けられる金額は以下の計算式で求めます。

受給金額=最低生活費-世帯収入(年金含む)

最低生活費は、東京都23区内の1人暮らしで13万1680円ですが、地域や家族状況によって変動します。
 
収入とは世帯収入のことで、世帯の家族の収入を合算して求めます。受給している年金は収入に含まれるので、年金の金額が大きいと、生活保護で受給できる金額が小さくなります。
 
このように年金受給者の場合、地方自治体ごとに決まっている最低生活費から年金を差し引いた金額が生活保護の受給金額となります。
 

まとめ

この記事では、年金と生活保護の制度の違いやダブル受給について解説しました。
 
2つの制度は目的や趣旨が異なるので、条件さえ満たせば両方を受給することが可能です。条件を満たしているか分からない場合には、役所の年金課に問い合わせてみましょう。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護の被保護者調査(令和3年1月分概数)の結果を公表します
厚生労働省 【生保基準】最低生活費の算出方法(R4.4)
厚生労働省社会・援護局保護課 生活保護制度の概要等について(令和3年)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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