謎の業者「サブリース業者」 ここ最近サブリース業者の家賃保証トラブルが多数
配信日: 2018.04.17 更新日: 2019.07.04
報道によると、「実現できない賃料で勧誘され、購入代金よりも価値の低いシェアハウスを買わされた」として、シュアハウス運営会社(サブリース業者)が提訴されました。
被害にあった物件所有者はお気の毒ですが、一般消費者と異なり、賃貸人である物件所有者も不動産事業者です。消費者並みの保護はありません。
サブリース業者と契約する際は、サブリース業者と対等な業者間の取引であることを十分理解し、契約書をしっかり読み込みましょう。
また、不動産業の経営者として、事業計画は業者任せにしないことも大切です。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
サブリース契約とは
「全室を一括して借り上げます」「家賃保証があるから初心者でも安心」をうたい文句に、アパート経営を勧める広告をよく目にすると思います。
アパート経営を勧める不動産業者は、おおむね物件を所有者から一括して借り上げ、借り手(入居者)に転貸(又貸し)します。不動産業者に10~20%の手数料を支払えば、入居者募集の手間が省けますし、空室が出ても家賃保証をしてくれますので、初心者でも安心してアパート経営ができそうです。このような仕組みがサブリース契約です。
また、相続税対策を考えている人にとっては、アパートを建てることによって不動産の評価減を得られるので、魅力的に思えるかもしれません。
しかし、家賃保証があるからと、気軽に借金をしてアパートを建てたものの、数年後に家賃が減額され、ローンの返済ができなくなるケースもあります。
こうなれば、不動産投資で収益を得るどころか多額の借金を抱えることになり、相続税の節税効果どころではなくなるでしょう。
サブリース契約を締結する前に事業計画を慎重に検討する
アパート経営は、不動産投資という事業を行うことです。十分な利回りが得られるかチェックしましょう。不動産投資の利回りには、表面利回りと実質利回りがあります。表面利回りは、年間の想定家賃収入を物件価格で割ったものです。
実質利回りは、諸経費を考慮したものです。具体的には、年間の想定家賃収入から修繕費、固定資産税、管理会社への手数料などを差し引いた金額を、物件価格(購入時諸経費含む)で割ったものです。
重要なのは実質利回りです。満室を保つこと、余分な経費をかけないことがポイントになります。サブリース業者を利用すれば手数料が発生します。一方、家賃保証があります。
しかし、数年後には賃料減額の可能性があります。実質利回りは低下します。
賃料減額に応じなければ、サブリース契約を解除されるかもしれません。さまざまな事態を想定して事業計画を立てることが大切です。サブリース業者の提示する収支計画はバラ色のシナリオである点は注意が必要です。
投資物件の近くに新築物件が建てば、賃料は下げざるを得ないでしょう。古くなれば賃料を維持するために修繕や設備を新しくするなど必要です。
バラ色のシナリオだけではなく、最悪のシナリオも想定して何パターンか収支計画を作りましょう。
サブリース契約を締結する際の注意点
物件所有者がよく勘違いしているのが、家賃保証です。サブリース契約では、定期的に賃料が見直される契約になっています。近隣の家賃相場の下落や入居状況によって賃料が減額される可能性があります。
もともとの想定家賃が高い場合があります。家賃相場を調べておきましょう。また、空室保証とうたわれていても、入居者の募集時等に賃料支払いの免責期間が設けられている場合がありますので注意しましょう。
賃料減額に応じない場合、契約期間中でも契約を解除される可能性があります。一方、物件所有者からは、サブリース業者が気に食わないとしても基本的に契約を解除できません。貸し手である物件所有者の立場は弱いのです。
契約後にもさまざまな費用がかかります。修繕費用やエアコンなどの費用は物件所有者の負担になる場合が一般的です。契約後の費用の負担について確認しておきましょう。
サブリース住宅に入居する人のチェックポイント
物件所有者とサブリース業者間の契約(原契約)の終了によって、入居者は退去しなければならない場合があります。ただし、原契約に「この契約が終了したときは、サブリース業者の地位をオーナーが引き継ぐ」旨の規定があれば、退去する必要がありません。契約書をチェックしましょう。
入居者がサブリース業者に賃料を前払いしている場合、前払い分の賃料を支払っていても、物件所有者から賃料を請求された場合は二重に支払わなければならないケースがありますので注意しましょう。
なお、物件所有者は入居者に直接賃料を請求することができますが、月毎の賃料をサブリース会社に支払っていれば、物件所有者に二重に支払う必要はありません。
最近はサブリース物件が増えていますので、入居者は入居予定の物件がサブリース物件かどうか不動産会社に確認するようにしましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。