更新日: 2022.09.20 その他暮らし

「ありそうで、ない」でも、ちゃんと代わりがある切符とは?

執筆者 : 上野慎一

「ありそうで、ない」でも、ちゃんと代わりがある切符とは?
「ありそうで、ない」もの。時点や場所をどの範囲に設定するかにもよりますが、現在の日本ならば、6月や12月の3連休(月曜日か金曜日に国民の祝日がくる)、スイカやバナナの缶詰(日本製、※1)などが一例でしょうか。
 
そして、春・夏・冬と定期的に発売されるあのおトクな切符も、なぜか秋季の設定はありません。しかし、その穴を十分埋め合わせてくれるような代役がいるのです。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

あのおトクな切符とは

秋季設定がないおトクな切符は「青春18きっぷ」。その商品概要は、ざっと次のとおりです。
 
◇JRグループの特別企画乗車券。名前のイメージとは違い、年齢に関係なく誰でも利用できる。
 
◇2022年の発売価格1万2050円(おとな・こども同額)。1人で5回分または5人までのグループ利用ができる。利用期間内に日程を分けて利用することも可能。
 
◇全国のJR線の普通・快速列車の普通車自由席などが1回当たり2410円で1日乗り放題(24時を過ぎて最初に到着する駅まで。東京・大阪の電車特定区間では終電車まで)。新幹線・特急・急行は利用できない(ごく一部の例外あり)。
 
◇2022年のスケジュールは、【図表1】のとおり。

図表1

 
話題としてよく例示されるのが、[東京駅を早朝に出発して在来線を西にひたすら乗り継ぐと、1回分(24時過ぎ到着)でどこまで行けるか]。以前は福岡県の小倉駅でしたが、ダイヤ改正により現行(2022年9月1日時点)では、山口県の新山口駅まで。
 
こうした旅は食事やトイレも慌ただしくて、なかなかつらいもの。実際にしたいかどうか賛否は分かれるでしょう。それでも、東京駅から新山口駅まで普通運賃1万2870円のところ、わずか2410円で列車の旅ができるわけです。
 

秋季の「代役」切符とは

この青春18きっぷ、秋季には発売されません。「季節商品」は4シーズン分がそろっているケースが多いので、ちょっとした意外感があるかもしれません。
 
移動に時間や乗り継ぎの手間がかかる。でも、ゆったりと移ろう車窓の眺めなども捨てがたい。そんな在来線での長旅をおトクに楽しみたい。こんなことを秋季は期待できないのでしょうか。
 
実は「秋の乗り放題パス」があります。2022年は[発売期間]9月10日~10月21日、[利用期間]10月1日~10月23日、[価格]おとな7850円、こども3920円。対象列車が乗り放題となる点は、青春18きっぷと同じ。今回は、鉄道開業150年記念の特典やイベントも用意されています(※2)。
 
青春18きっぷと比べると、3日連続でしか利用できず、複数人でのシェア利用もできません。1日当たり単価もやや割高(約2617円)で、利用期間も3週間ほどしかありません。一方、こども用がおとなの半額で用意されているのは、青春18きっぷにはないメリットでしょう。
 

「代役」は、主役には及ばない?

例えば、1人で2泊3日の旅で青春18きっぷを利用すると、3回分を消化します。利用期間内の別日程であと2回分どう消化するか。1人で1泊2日の旅に出る。2人で少し遠くまで日帰り旅もありでしょう。
 
しかし、一番長い夏季でも利用期間は約50日。春季で約40日、冬季では約30日です。短期間に2度も“各駅停車の旅”に出掛けることに、あまり魅力を感じない人だって少なくないとも思われます。
 
金券ショップでは、シーズンになると青春18きっぷの使いさし(残り回数4回以下のもの)が販売されるケースが多く見られます。5回分買って持て余す人、利用したいが5回分までは必要ないとためらう人。そんな需給ニーズが多いからこそ、使いさし品が店頭に並ぶのでしょう。販売価格も、1回当たりで計算するとJRの正規価格よりも割高なケースが多いです。
 
そう考えると、「3日連続」が「分けて使える5日(回)」に必ずしも劣るとは限らないでしょう。気候もよくなる秋季に、2泊3日の列車旅でおトクな切符を使い倒す。スケジュールさえやり繰りできれば、こちらのほうが価格総額も安くて効率的だ。そんな判断もあるかもしれません。
 

まとめ

秋の乗り放題パスは、考え方によっては主役(青春18きっぷ)が秋季に欠場する穴を十分埋め合わせてくれる。そんな「名代役」だともいえます。
 
コロナ禍の先行きは、まだまだ見通しづらいでしょう。一方、経済を回していく観点からも、広域的な移動制限要請がされる状況は遠ざかりつつあります。
 
もちろん感染対策に万全を期すことが大前提ですが、気候のよくなる秋季にこうしたおトクな切符で旅をする。秋を楽しむ手段として、選択肢の1つに加えてみたらいかがでしょうか。
 

出典

(※1)公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会「缶詰、びん詰、レトルト食品の種類」(本文の第3段落に、缶詰で「ありそうでないもの」に関する記載がある)
(※2)JRグループ「『鉄道開業 150年記念 秋の乗り放題パス』及び『秋の乗り放題パス北海道新幹線オプション券』の発売について」(2022年9月2日)
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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