メンタル不調で休む時、会社に確認しておいたほうがよいこととは?
配信日: 2022.09.20
執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。
確認すべき3つのこと
確認していただきたいことは、以下のとおりです。
(1) 賃金支給の取り扱い
(2) 会社の休職制度
(3) 加入健保の傷病手当金制度
(1) 賃金支給の取り扱い
有給休暇、病気休暇等の残日数を確認し、あと何日取得できるか把握します。無給の病気欠勤や休職発令の適用ルールも確認し、今後「有給から無給に切り替わる」タイミングを理解しておきましょう。
また、休職中に賃金を支給する会社もあるので、水準や条件を調べておく必要があります。この場合、賃金相当分は傷病手当金が減額されます。
傷病手当金が会社経由で支給される場合は、社会保険の本人負担分が控除されることがあるので、この点の確認も必要です。復職後にまとめて清算する場合に比べ、休職中の収入はその分少なくなります。
(2) 会社の休職制度
多くの会社には私傷病時に利用できる休暇・休職制度がありますが、就業規則に規定していない会社もあるかもしれません。また、厚生労働省の調査(※1)によると、「有給の」病気休暇があるのは全企業平均で23.3%にとどまります。自分の会社の療養に使える制度を把握し、慌てずに療養したいものです。
有給の休暇を使ったあとに、無給の休業や休職の制度がどう適用され、期間はいつまでなのか。収入に直結するので、よく理解しておく必要があります。
なお、休職期間が満了すると「自動的に退職」と規定する会社もあります。休職期間上限は、3ヶ月以内から2年以上まで会社により幅がありますが、会社規模が小さいほど短期間の傾向があります。
実は、2022年1月に傷病手当金の同一疾病での支給期間が変更となっています。「最初の支給開始日から暦日で最長1年6ヶ月」から、「支給日のみ通算し1年6ヶ月」となりました。
再発が非常に多いメンタル疾患にとっては朗報ですが、休職可能期間が傷病手当金の受給期間より短い場合は、休職満了日が先に来るので要注意です。また、復職後に再発・再休職した際に、最初の休職期間と通算するのかリセットするのかは、在職期間にも関わる大きなポイントです。
(3) 加入健保の傷病手当金制度
加入する健保組合によっては、本来の給付内容に上乗せした付加給付を定めているケースがあるので、こちらも必ず調べておきましょう。1年6ヶ月を超えた独自給付期間や、給付水準の上乗せなどがあります。
これらの各ポイントは、お休みに入った直後は自分で調べられる心身状態ではないかもしれません。上司や人事部門などのサポート窓口があれば、助けを借りて教えてもらうのがよいでしょう。
状況・状態が少し落ち着いたら確認すること
仕事に復帰する際、「復職支援プログラム」や「試し出勤制度(リハビリ出社)」を設けている会社もあります。一定期間を要すため、実際の運用の確認が大切です。
復帰のための手厚い支援ですが、この期間は基本的に休職期間に含まれることが多く、計画的に実施しないと途中で休職期間満了、退職となってしまう場合も考えられます。ただ、最優先すべきは体調ですので、再発リスクを高めるような無理な出社は控えたいところです。
復帰までの全体像とスケジュールをよく理解しておく必要があります。他にも、会社の貸付制度や、加入している保険(就業不能保険等)の受給可能性、奨学金の家計急変に伴う採用申込など、状況に応じ利用可否を調べておくのがよいでしょう。
支出で気を付けること
給与から控除できなくなる住民税が普通徴収(自分で支払い)に切り替わり、自宅に納税通知書が届きます。1回の徴収額が3ヶ月分と、思いがけず大きな金額で慌ててしまうものですが、これも用意が必要です。
また、成果報酬であるボーナス支給がなくなることが多いため、ボーナス払いのローンなども忘れずに対応が必要です。支払い方法の変更など、必要に応じ金融機関に相談しましょう。
最後に
厚生労働省の資料(※2)によれば、メンタル疾患の多くは傷病手当金の支給期間が1年程度となっており、復職できず退職した方の多くは、支給限度(1年6ヶ月)まで支給を受けています。
メンタル疾患の回復には時間を要し、再発リスクも高いため、腰を据えて療養することが第一です。そのためにも、収入の水準や見通しを早めに把握することが大切と考えます。
出典
(※1)厚生労働省 令和2年就労条件総合調査 結果の概況
(※2)厚生労働省 第78回社会保障審議会医療保険部会 委員提出資料3 健保組合の傷病手当金に係る調査 (平成26年7月7日)
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員