小規模企業共済の通算ってどんなもの?
配信日: 2022.09.20
小規模企業共済には、他の上乗せの老後資金準備にはない制度として、通算があります。本稿では、小規模企業共済の通算を見ていきます。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
通算の前に、小規模企業共済の受取事由の確認
個人事業主のための上乗せの老後資金準備の1つである小規模企業共済の受け取り事由は、厚生年金保険のそれとは異なります。厚生年金保険から受け取ることができる老齢厚生年金の受取事由は、「(所定の要件を満たした上で)65歳に達したこと」です。しかし、小規模企業共済の共済金の受取要件は複数あり、要件によって受け取る共済金も異なります。以下のとおりです。
共済金A:個人事業を廃業した場合や共済契約者が亡くなった場合
共済金B:老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んでいた場合)
準共済金:個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合
他に、解約した場合に受け取れる解約手当金があります。
以上のように、小規模企業共済は65歳にならなくとも、共済金を受け取ることができます。
個人事業が成長すると小規模企業共済を解約することになる?
個人事業主の中には、事業の成長に伴い、法人成りを検討されている方もいるでしょう。個人事業を法人成りすると、準共済金の受取事由となります。つまり、小規模企業共済を解約する、ということです。
昔とは異なり、資本金1円でも会社を作れる時代でもあります。せっかく成長している事業なのに、法人成りに伴い、小規模企業共済を続けることができなくなってしまう事態は、好ましくないでしょう。
小規模企業共済の通算
個人事業を法人成りして会社等の役員に就任した場合、共済金等の支給を受けず所定の手続きを行うことで、それまでの掛金納付月数を通算して共済契約を続けることができます。これを同一人通算といいます。
通算の申出期間は、共済金等の受取事由が生じてから1年以内です。また、通算の申し出ができるのは小規模企業者である場合に限ります。
<小規模企業共済の承継通算>
個人事業を廃業し、配偶者や子どもに継いで(承継して)もらうということもあるでしょう。なかには、個人事業を営んでいた方が志半ばで亡くなり、その事業をすべて引き継ぐ(承継する)ということもあるかもしれません。
個人事業を承継する場合、共済金等の支給を受けず所定の手続きを行うことで、それまでの掛金納付月数を通算して、承継する人が共済契約を続けることができます。これを承継通算といいます。
なお、承継通算ができるのは、旧共済契約者の配偶者か子に限られ、承継通算ができるのも1回限りです。また、承継通算は課税の対象となります。
まとめに代えて
個人事業主が法人成りをし、役員に就任すると、今度は国民年金の第二号被保険者となります。国民年基金や付加保険料(付加年金)は国民年金の第一号被保険者のみ加入できますし、iDeCoは国民年金の第二号被保険者も加入できますが、拠出限度額が異なります。
個人事業主が法人成りした後も、また個人事業に万が一のことがあったとしても、続けることができるのが小規模企業共済です。個人事業の成長や変化が想定される方にはよいかもしれません。
出典
中小企業基盤整備機構 小規模企業共済制度 加入者のしおり及び約款
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役