更新日: 2022.09.26 その他暮らし

マルチ商法とねずみ講は別物? どんなところが違う?

執筆者 : 小山英斗

マルチ商法とねずみ講は別物? どんなところが違う?
知り合いや、その知人から、何かしらの勧誘を受けた経験がある人は少なくないのではないでしょうか?
 
それは趣味のサークルやボランティア活動のようなものかもしれませんが、中にはビジネス的な話だったりするかもしれません。ここでは、勧誘がきっかけとなる「マルチ商法」と「ねずみ講」の違いについて解説していきます。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

マルチ商法とねずみ講とは


 
まずは「マルチ商法」と「ねずみ講」について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
 

マルチ商法の特徴

マルチ商法は「ネットワークビジネス」ともいわれています。ニュースでも時折トラブルなどが取り上げられることから、違法なビジネスという印象を持つ人もいるかもしれませんが、マルチ商法はさまざまな規制が設けられていながらも、一応は合法となっています。
 
マルチ商法は「特定商品取引法」で、連鎖販売取引に分類されている取引形態の1つです。個人を販売員として勧誘し、さらにその個人が次の販売員を勧誘して組織を拡大させて、組織の中で商品などの取引を行います。
 
特定商品取引法では、その取引を行うために1円以上の金銭負担(特定負担)があるものは、すべて「連鎖販売取引」に該当するとしています。特定商取引法(法第33条)は「連鎖販売業」を以下のように定義しています。
 

1. 物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。)の販売(又は役務の提供など)の事業であって
2. 再販売、受託販売若しくは販売のあっせん(又は同種役務の提供若しくは役務提供のあっせん)をする者を
3. 特定利益が得られると誘引し
4. 特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

出典:消費者庁 特定商取引法ガイド 「連鎖販売取引」
 
例えば、会員が個人に対して「組織会員になれば商品を3割安く購入できるので(特定負担)、他人を勧誘して売ればもうかります(特定利益)」といったように、勧誘して取引を始めるようなケースです。
 

ねずみ講の特徴

ねすみ講の特徴は、紹介者が増えるほど自分がもうかる仕組みとなっていることです。
 
ねずみ講では、すでに組織の会員になっている人が2人以上を勧誘して加入させ、加入者から受け取った会費の一部を自分が受け取ります。残りは自分を紹介した人を含め、先に組織の会員になった上位の人に流れているのが基本的な仕組みです。
 
新たに加入した2名が、それぞれまた2名以上の会員を勧誘するといったことを繰り返し、会員が無限に増えていくことから「無限連鎖講」と呼ばれています。
しかし、人の数は有限であることからも、この仕組みはいつか破綻します。そして、先に会員になっていた人ほどもうかり、後から会員になった人ほど経済的損失を被る可能性は高くなります。
 
1970年代には、ねずみ講による大きな被害も起こり、1979年に「無限連鎖講の防止に関する法律」が施行され、現在は違法となっています。
 

マルチ商法とねずみ講の共通点と違い

マルチ商法とねずみ講の共通点は、主にその勧誘方法にあるといえるでしょう。
 
いずれも不特定多数を広く相手にした広告などではなく、知人などからの口コミや紹介などがきっかけとなることがほとんどです。また、「もうかるビジネスがある」「会わせたい人がいる」といった勧誘の持ちかけ方も似ています。組織の広がり方も似ているといえるでしょう。
 
一方で、主な違いとしては以下が挙げられます。
 

マルチ商法 ねずみ講
法律 合法 違法
商品取引 あり なし

 
会員を増やし続けないと、そのうち破綻するねずみ講と違い、マルチ商法は商品を取引することで利益を上げられるため、商品の流通があれば基本的には破綻しません。
 
また、ねずみ講は先行して始めた人が有利な仕組みですが、マルチ商法では後から始めた人であっても、自分の下に多くの商品を流通させる組織を構築できれば、先に加入していた人よりも稼げる可能性があります。
 

まとめ

ねずみ講は今では法律で禁止されている行為です。ねずみ講の運営者だけでなく、勧誘を行っただけでも処罰の対象となりますので、注意が必要です。
 
一方でマルチ商法は合法ではありますが、その勧誘方法や会費に問題があったり、高額な商品を販売経験がない人が取り扱うといったケースなど、トラブルになりやすい側面があります。
 
いずれにしても知人からの勧誘などでは、話を聞くこと自体、断りにくい場合もあるでしょう。ただし、どのような話であれ、それがビジネスである以上は「簡単にもうかるビジネスはない」ということを前提に、少しでも違法性を感じたり、関わりたくないと思ったら、きっぱり断る意思を持つことが大切です。
 
消費者庁が開設している消費者ホットラインでは、商品やサービスなど消費生活全般に関する相談先として、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口の案内を行っています。
 
消費生活相談窓口などでは、専門の相談員が消費者からの苦情や問い合わせを受け付けているため、もしマルチ商法やネズミ講に巻き込まれてしまった場合、まずは相談してみるといいでしょう。
 

出典

消費者庁 特定商取引法ガイド 連鎖販売取引

e-Gov法令検索 無限連鎖講の防止に関する法律

独立行政法人国民生活センター 全国の消費生活センター等

 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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