年収800万〜900万でも子育て世帯は余裕なし? 公的支援の所得制限とは
配信日: 2022.09.27
しかし、高所得であっても子育て世帯は特にお金がかかり、子育て支援制度に関しても所得制限を受ける可能性がでてきます。ここでは、公的な子育て支援制度の所得制限について解説します。
執筆者:勝川みゆき(かつかわ みゆき)
ファイナンシャルプランナー2級・AFP
年収800万円と900万円の手取り額
年収とは一般的に、社会保険料や税金が引かれる前の支給総額を表します。そのため、実際の手取り額は年収の額よりも少なくなります。
健康保険料(介護保険料含む) 約46万7千円
厚生年金保険料 約71万3千円
雇用保険料 約2万4千円
所得税 約46万5千円
住民税 約44万9千円
800万円から、これらの社会保険料や税金を引くと、手取り額は約588万円です。
健康保険料(介護保険料含む)約51万5千円
厚生年金保険料 約71万3千円
雇用保険料 約2万7千円
所得税 約64万8千円
住民税 約53万9千円
900万円から、これらの社会保険料や税金を引くと、手取り額は約655万円です。
実際には、家族構成などにより控除額が変わるため、手取り額は人によって大きく変わります。日本の税金制度は、年収が高いほど税金を多く払う仕組みになっています。
子育てに関する公的支援の所得制限
ここでは児童手当と、子どもの教育費負担が特に増える高校生以上の主な公的支援を紹介します。
児童手当
児童手当の支給は、所得制限限度額と所得上限限度額がそれぞれ決められています。これらの額は、総支給額から給与所得控除などを控除した後の所得額で確認します。
所得制限限度額未満の場合、3歳未満の児童1人当たり1万5000円、3歳以上小学校卒業前までは1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は一律1万円が支給されます。しかし、所得が制限限度額以上かつ上限限度額未満の場合には、児童1人当たり月額で一律5000円の支給となります。
年収が800万〜900万円の場合には、児童手当の額が減る可能性が出てくるため、自分の所得額と照らし合わせて注意しておくとよいでしょう。
扶養親族等の数 | 所得制限限度額 | 所得上限限度額 | ||
---|---|---|---|---|
所得制限限度額 (万円) |
収入額の目安 (万円) |
所得上限限度額 (万円) |
収入額の目安 (万円) |
|
1人 | 660 | 875.6 | 896 | 1124 |
2人 | 698 | 917.8 | 934 | 1162 |
3人 | 736 | 960 | 972 | 1200 |
出典 内閣府 児童手当制度のご案内
高校生などを対象としたもの
保護者の経済的負担を軽減する目的で、授業料を支援する高等学校等就学支援制度と、授業料以外を支援する高校生等奨学給付金の2つの制度があります。
・高等学校等就学支援金制度
国公私立問わず、高等学校などに通う生徒に対して、国から支給されます。支給を受けるには所得要件を満たす必要があり、年収の目安は1030万円(両親が共働きで扶養控除対象者が1人の場合)か910万円(両親のうち一方が働いている場合)です。
・高校生等奨学給付金
授業料以外の教育費(教科書費や入学学用品費、修学旅行費など)を支援する、返還不要の給付金制度です。この制度は、生活保護世帯や住民税非課税世帯などの低所得世帯を対象としている制度であるため、収入が一定程度ある世帯は対象外となります。
大学生などを対象としたもの
進学意欲のある者が、家計の経済状況に関わらず大学などへ進学できるよう、文部科学省は2020年4月から高等教育の就学支援制度を実施しています。この制度は、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯が対象となっており、支援を受けられる世帯収入の目安も380万円程度となっています。
教育費は計画的に準備することが必要
文部科学省による子供の学習費調査(平成30年度)では、子ども1人当たりの学習費総額(年間)は、公立中学で約49万円、私立中学で約141万円、公立高校で約46万円、私立高校で約97万円となっています。総務省統計局の家計調査(家計収支編 二人以上世帯 2022年 年報)によると、4人世帯の1ヶ月の消費支出は、31万5402円です。この統計では、教育費は2万6091円、住居費は1万5319円となっています。
しかし、先ほどの文部科学省の学習費調査と照らし合わせると、例えば私立高校と私立中学に通う2人の子どもがいる場合、1ヶ月当たりの教育費は約19万8000円かかります。年収800万円の手取り額が1ヶ月約49万円と考えると、決して経済的に余裕があるとは言えないでしょう。さらに、住宅ローンなどで住居費にお金がかかる場合、より経済的に厳しくなるのではないでしょうか。
子育て世帯にとって、子どもの教育費は必ずかかるお金でありながら、将来いくらかかるか正確に測れない部分があります。そのため、高所得世帯であっても、家計管理を誤れば、将来子どもの教育費で苦労することになりかねません。子どもの将来のために資産管理をしっかりとしておくことが必要ではないでしょうか。
出典
国税庁 民間給与実態統計調査結果
全国健康保険協会 令和4年度保険料額表
厚生労働省 令和4年度の雇用保険料率
総務省 個人住民税
東京都主税局 個人住民税の概要
文部科学省 高等教育の修学支援新制度
文部科学省 高校生等への修学支援
文部科学省 子どもの学習費調査
内閣府 児童手当制度のご案内
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)年次 第3表
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP