更新日: 2022.09.28 その他暮らし

たくさん買うと割安になる。これって、いつでもおトクなの?

たくさん買うと割安になる。これって、いつでもおトクなの?
同じ品物をたくさん買うと割安になる。例えば、1個1000円のモノを3個まとめて買うと2500円になるといった具合ですが、日常の生活でもよく見かけるシーンかもしれません。
 
これって、本当にいつでもおトクなのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

スーパーで目にしたステーキ肉の販売事例

まずは、あるスーパーで見たステーキ肉の事例です。150グラムくらいの商品が1枚1980円(税別、以下同じ)でしたが、同じ品物の2枚パックでは2980円になっていました。
 
蛇足ながら、2021年4月から税込みの総額価格表示が(再)義務化されています(※)。しかしスーパーなどでは、キリのよい数字をわずかに下回る税別価格のほうを大きく強調した表示が目立ちます。“おトク感”をアピールするためなのでしょう。
 
ここで、1枚当たり単価の差が気になります。2枚パックならば1490円。1枚ものより25%近くも安いのです。2人分や4人分を用意するならば、迷わず2枚パックを選ぶことでしょう。
 
迷うのは、奇数人数の場合。3人用に1枚ものと2枚パックを買うと4960円で、単価は約1653円(1人150グラム)。頑張って2枚パック2つにすると、3枚よりも1000円高くなりますが、1人200グラムも楽しめ、しかも単価は1490円と大きく下がるのです。
 

「参照価格」と「アンカリング効果」とは

消費者が商品の購入を判断する基準となる価格を参照価格といいます。「この商品だったら、このくらいの価格(が妥当)だろう」と自分の経験や価値観をベースに考える。また、チラシや売り場の表示などを見て「この商品は、このくらいするのだな」と認識するケースもあります。
 
この参照価格よりも安いと感じた場合は買いたい意欲が高まり、高いと思ったら意欲は減少します。先述のステーキ肉では、次のような意識になるでしょう。
 
<1枚もの1980円(単価1980円)を参照価格にすると>
 2枚パックは、かなり割安に感じる
 
<2枚パック2980円(単価1490円)を参照価格にすると>
 1枚ものは、かなり割高に感じる
 
どちらが参照価格になっても結局、[1枚ものは避けて、できれば2枚パックで必要な量(かそれ以上)を買いたい]という判断になりがちです。2枚パックの単価である1490円が意識から離れず、まるで頭の中にいかり(アンカー)をおろしてしまったようです。こうした特定の情報が判断に大きく影響する心理状況を「アンカリング効果」と呼ぶことがあります。
 

別のスーパーで目にした乾電池の販売事例では

今度は、別のスーパーで目にした乾電池の事例。こちらも税別表示が大きくされていましたが、単4サイズのパックが次の価格(税別、以下同)でした。

[ 4本パック] 500円(1本当たり125円)
[ 8本パック]  900円(同112.5円)
[12本パック] 1450円(同約120.8円)

4本パック2つより8本パックが、同3つよりも12本パックのほうがそれぞれ総額で安くなっているのは当然でしょう。しかし、4本パックと8本パックを1つずつ買うほうが、12本パックよりも安いのです。これは小さな驚きでした。
 
そうなってしまうワケは、8本パックでの1本当たりの単価がかなり割安な設定だから。たくさん買うほど単価面でもどんどん割安になっていくはず。こんな先入観が必ずしもそうではない場合があることを思い知らされたのでした。
 

まとめ

先述のステーキ肉では、本当は3人分でいいところを割安な単価にひかれて4人分のステーキ肉を買ったときでも、1人分だけ長期保存はできないので、食べ切ってしまう必要があります。肉の単価は下がりますが、実はここまで必要ではない量を食べるとしたら、本当におトクなのか。評価は分かれるでしょう。
 
一方、乾電池の消費期限はかなり長く、保存もしやすいといえます。先述の事例ならば、8本パックをいくつか買っておいても無駄にはならないかも。一番おトクになりそうです。
 
モノの価格(総額)は、【数量×単価】で構成されます。単価は下がるけれど数量が多くなって、結果的に支払う総額が多くなってしまった。今回のステーキ肉と乾電池の事例から考えると、対象のモノが保存しやすいかどうかなどによっても、結果としての“おトク度”は変わるといえます。
 
また、商品の価格は常に変動していますが、売り手が設定する価格に盲点や矛盾は絶対にないのでしょうか。
 
同じ商品ならば、たくさん買うほど単価面でもどんどん割安に値付けされているはずだ。いきなりそんな思い込みをせずに、売り場で実際に検証してみる。ただ割り算をするだけですが、たまにはやってみる価値ありかもしれません。
 

出典

(※)財務省「令和3年4月1日より、税込価格の表示(総額表示)が必要になります!」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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