派遣の3年ルールってどんなもの? 対象外になる場合もあるって本当?
配信日: 2022.10.16 更新日: 2022.10.17
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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目次
派遣社員と正社員・契約社員の違い
派遣社員とはどのような働き方なのか、あらためて正社員や契約社員との違いを比較しながら確認しましょう。
【表1】
派遣社員 | 正社員 | 契約社員 | |
---|---|---|---|
雇用主 | 派遣会社 | 勤務先 | 勤務先 |
雇用期間 | 有期雇用 | 無期雇用 | 有期雇用 |
給与 | 時給制が多い | 月給制が多い | 時給制や月給制など、契約内容によりさまざま |
業務内容 | 派遣契約で定められた業務 | 必ずしも決まった業務ではなく、人事異動などがあれば業務内容も変わる | 契約で定められた業務だが、会社によっては正社員と同じような業務を期待される場合もあり |
※筆者作成
派遣社員が正社員・契約社員と大きく違う点は、雇用主が派遣会社であることです。派遣の場合、派遣会社(派遣元)が派遣社員と労働契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に派遣社員を派遣するものです。
派遣社員は給与を派遣元から受け取り、業務の指示は派遣先から受けることになります。正社員・契約社員の場合は、それら両方を勤務先から受けます。
表1の違いの他にも、正社員では賞与や退職金などがあるのが一般的ですが、派遣社員や契約社員は契約内容によって異なってきます。
また、業務内容では正社員が最も責任範囲が広く、派遣社員は限定的といえるでしょう。
派遣社員の3年ルールとは?
2015年の労働者派遣法改正により、派遣社員の働き方に大きく影響する「3年ルール」という期間制限が設けられました。
このルールでは、同じ事業所の同じ組織単位(いわゆる「課」など)で3年を超えて働くことを基本的に認めていません。一定の手続きを経ることで3年を超えて働くこともできますが、異なる組織単位への異動が必要となってきます。なお、派遣社員としての3年の契約期間が経過した翌日のことを、派遣の「抵触日」といいます。
また、期間制限には以下の「事業所単位」と「個人単位」の制限があります。
事業所単位の期間制限
同じ派遣先の事業所(例えば〇〇支店など)において、派遣可能期間(派遣先で新たな労働者を受け入れてから3年)を超える派遣社員の受け入れが制限されます
ただし、派遣先が事業所の労働者の過半数で組織する労働組合などから意見を聴いた上で、3年を限度として派遣期間を延長することは可能となっています。
個人単位の期間制限
事業所単位の期間制限が延長された場合でも、個人単位の期間制限によって、派遣先の事業所における同じ課などで3年を超えて働き続けることはできません。
例えば、人事課に派遣されていた派遣社員であれば、同じ人事課で3年を超えて勤務を継続することはできません。ただし、経理課など別の課への異動であれば、3年を超えて同じ派遣先の会社で勤務することが可能です。
なぜ3年ルールがあるのか?
3年ルールという期間制限は、派遣で働く方のキャリアアップと雇用の安定を図るための措置として設けられました。これにより、同じ事業所の同じ課などに継続して3年派遣される見込みの場合、派遣元は雇用安定措置を「義務」として講じる必要があります。
1年以上3年未満の派遣見込みの場合でも雇用安定措置の対象にはなりますが、それは「努力義務」となり、派遣元は雇用安定措置を講じるよう努める必要がありますが、必ずしも義務ではありません。
出典:厚生労働省 「派遣で働く皆様へ」
雇用安定措置とは、派遣元が講ずるべき以下のいずれかのことをいいます。
●派遣先への直接雇用の依頼
●新たな派遣先の提供
●派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用
●その他雇用の安定を図るための措置(紹介予定派遣の対象となることなど)
雇用安定措置の対象となるには、派遣社員は派遣元に対し、派遣終了後も就業の継続を希望することが必要です。また、どういった雇用安定措置を講じてもらいたいか希望することができます。
3年ルールが対象外になる場合
派遣で働く場合でも、3年ルールの対象とならないケースもあります。対象外となる派遣社員や業務は以下のようなものです。
●60歳以上の派遣社員
●派遣元で無期雇用されている派遣社員
●終了時期が明確なプロジェクト業務
●日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の社員の半分以下で、かつ10日以下)
●産前産後休業、育児休業、介護休業などを取得する社員の業務
派遣社員の3年ルールの抜け道って?
長く働いていることで職場の環境や業務にも慣れたり、自分に合っている仕事と感じて、3年を超えて派遣先で働き続けたいと思う場合もあるでしょう。そういった場合、継続して働くためにはどのような方法があるのでしょうか。
派遣元の会社で無期雇用となる
「無期転換」とは、派遣元の会社との契約を無期雇用契約に切り替える方法です。以下の条件を満たしていれば、雇用されている派遣会社に対して「無期転換申込権」(無期労働契約への転換を申し込む権利)が発生します。
●派遣元の会社で有期労働契約の通算期間が5年を超えている
●契約の更新回数が1回以上ある
●現時点で同じ派遣元との間で契約している
派遣先で部署を変更する
部署を変更すれば、3年を超えても同じ派遣先の会社で勤務することが可能となります。ただし、この場合は業務内容が変わってくる可能性があるため、同じ仕事を続けられるとは限りません。
派遣先の会社で直接雇用となる
派遣先の会社で直接雇用となれば、3年ルールの制限は受けなくなります。この場合は同じ仕事を続けられる可能性もでてきます。
ただし、直接雇用といっても正社員になれるとは限りません。契約社員やパートといった雇用形態になるケースも考えられ、給与も派遣のときに比べて上がることもあれば、下がることもあり得ます。どのような雇用形態や内容になるのか、しっかり確認することが必要です。
クーリング期間を経る
「クーリング期間」とは、期間制限の通算期間がリセットされる空白期間のことをいい、その期間は「3ヶ月超(3ヶ月と1日以上)」となります。
3ヶ月超のクーリング期間がある場合、同じ派遣先の同じ部署でも、同じ派遣社員を新たに3年間受け入れることが可能となります。
ただし、クーリング期間中は派遣元からの収入が無くなることや、有給休暇もリセットされることなどはデメリットとなるでしょう。
派遣会社を変更すれば3年ルールは適用されない?
派遣元となる派遣会社を変更すれば、派遣期間が3年を越えようとする場合でも3年ルールは適用されず、同じ派遣先の部署で勤務することは可能となるのでしょうか?
この点について個人単位の期間制限は、あくまで派遣社員個人に適用されるため、派遣会社を変えたとしても同じ派遣先の部署で働いている場合は3年のカウントが継続され、3年ルールは適用されます。そのため、やはり派遣社員として3年を超えて同じ派遣先・部署で働き続けることはできません。
まとめ
派遣社員は、自分に合った働き方や勤務地などを選択できるメリットがある一方で、雇用の継続が不確実といった不安要素もあります。派遣における3年ルールは、雇用安定措置も図られた仕組みとして派遣社員の雇用を安定させることを目的にしていますので、しっかり理解しておきましょう。
出典
厚生労働省 平成27年労働者派遣法の改正について
厚生労働法 平成27年労働者派遣法改正法の概要
厚生労働省 派遣で働く皆様へ
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)