更新日: 2019.01.10 その他暮らし
給料日前に会社が倒産・・・あれ?未払いの給料ってどうなるの?
最後まで力を尽くすか、船が沈む前に逃げ出すか…。自分の生活にも大きく関わることですから、安易に結論を出すことはできませんよね。
今回は、最後まで会社に尽くしたものの、結局倒産してしまい、お給料も支払われなかったというE子さんの実話を見てみましょう。
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
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弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
希望を胸に入社した新卒のE子さん。しかし、日に日に社員は減っていき…
E子さんは新卒でアパレルの通販会社に就職しました。
従業員は社長とその奥さんを含めて10人以下という小さな会社でしたが、「これから大きくしていきたい」と夢を語る社長の姿に感銘を受け、その会社を選んだと言います。
立ち上げから参加したEさんですが、当初の会社は好調で、「伸びてるな」と手ごたえを感じたそうです。
しかし、入社から2年が経過した頃、ネット通販の注文が少なくなっているように感じました。日に日に従業員は減っていき、それを社長も引き止めません。若手がE子さん一人になった頃、ある人物が会社を訪ねました。
差し押さえの担当者です。アパレルの通販会社であったため、洋服の在庫をあるだけ持っていかれました。E子さんはこの時初めて、会社が危ない状態なんだと、自覚したそうです。
最後は社長と奥さん、E子さんの3人に。「もう辞めた方がいいよ」と社長から言われ
最終的に、会社には社長と奥さん、E子さんの3人だけになりました。
E子さんは社長の力になれれば、と最後まで残る決断をしました。しかし、社長から直接「もうあなたも辞めた方がいいよ」と言われ、退職することになりました。
その時点で2カ月弱の給料が未払いになっていましたが、社長は「会社の備品を売ってお金をつくる。未払いのお金は一番に払うから」と言いました。E子さんは、社長と奥さんの2人で会社をほそぼそと続けるのだと思い、その言葉を信じました。
会社は「自己破産」に。未払いの2カ月弱分の給料はほとんど支払われなかった
しかし、待てど暮らせど、未払いの給料は振り込まれません。退職から3カ月後、「一部だけ振り込んだ」と連絡が来ましたが、それから半年間連絡はありませんでした。
半年ぶりに来た連絡は、自己破産したという報告でした。社長からは、「ここに連絡して」と言われ、自己破産の手続きを代理した弁護士の事務所に連絡をしました。E子さんは、その事務所の弁護士の指示通り書類などを送ったそうです。
結局、E子さんは未払いの給料をほとんど払ってもらえませんでした。
また、社長からは退職の際に、「会社都合ではなく、自己都合ということにしてほしい」と言われました。E子さんは承諾してしまいましたが、自己都合にしたことで失業手当の給付日数が少なかったり、「解雇予告手当」をもらえなかったりと、不都合なことも多くあったそうです。
E子さんは当時を振り返って、「あの時は世間知らずだった」と笑いました。
※物語はフィクションです
会社が倒産し、未払賃金がある場合、どうすればいいのでしょうか。東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。
会社が倒産して破産手続き開始決定がなされると裁判所から破産管財人が選任されます。破産管財人は、会社の資産を売却することでお金(破産財団)をつくります。そのお金を原資として、基本的には、会社に対する各債権者の債権額に応じて按分で配当されます。
その際、労働債権は優先されている(破産手続き開始3カ月前のものに限り財団債権となり、破産手続き開始3カ月以上前のものは優先的破産債権となります。)ため、他の一般債権よりも優先的にお金が支払われます。
しかし、そもそも、倒産した会社に資産が全く残っていなければ、本来、優先されるべき労働債権も支払われないことがしばしばです。
未払賃金がある場合、国の機関が実施している「未払賃金立替支払制度」を利用しましょう。要件をクリアすれば、労働者が会社を退職した日から6カ月前から立替払請求日の前日までに発生した未払賃金の8割(ただし上限があります。)を立替払いしてもらえます。
ただし、「未払賃金立替払制度」も破産手続き開始決定の日から2年以内に請求する必要があります。また、立替払いを請求する際には、賃金台帳などの証拠書類を準備する必要もありますので、できるだけ早く制度を利用した方がよいでしょう。
「言われるがままにしておかず、自分でいろいろと調べればよかった」とE子さん
会社が倒産したとしても、賃金については優先的に保護される制度となっているようですね。破産手続き内でも優先的に支払いがなされる場合もあるようです。
また、それが難しい場合は、たとえ全額の支払いを受けられなくとも、国の「未払賃金立替払制度」を活用することもできるようです。
E子さんは長い間、会社からの連絡を待ってしまい、証拠書類の散逸などもあり国の「未払賃金立替払制度」を利用することができませんでした。
E子さんは、社長に言われるがままにならず、自分でいろいろと調べておけばよかったと後悔したそうです。
会社が倒産しそうだなと感じた時は、倒産した後の行動を予習しておくことも大事です。最後まで尽力した末に、損をしてしまわないように、情報収集をしっかりしておきましょう。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応