更新日: 2022.11.15 その他暮らし

自分のリスキリング(学び直し)を考えてみよう

執筆者 : 宮﨑真紀子

自分のリスキリング(学び直し)を考えてみよう
「リスキリング」という言葉を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。学ぶ・勉強することに注目が集まる理由はどこにあるのでしょうか。人ごとではない実情について考えます。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

今なぜリスキリング?

リスキリングはまだ耳慣れない言葉ですが、「学び直し」を意味します。今なぜ“リスキリング”が注目されるのでしょうか。
 
人生100年時代と言われ、それに従って長く働く必要性が議論されています。数年前ベストセラーとなった「ライフ・シフト(リンダ グラットン著)」でも、「大学で学んだ情報や知識だけで定年まで行きつくことは難しい時代となったので、途中で学び直すことが必要」と述べられています。
 
リスキリングを考えるうえで、中心になるのは資格取得の勉強です。例えば何か資格を持っていれば、転職する場合にも強みになります。資格取得のプログラムに沿うことで体系的に全容を学ぶことができ、合格という目標を掲げることでモチベーションも維持できます。
 
専門スクールに通学していれば、同じ目標を持つ仲間作りも期待できます。これまでもハローワークで就業支援として資格取得プログラムがありました。筆者自身もFP資格との出会いはハローワークのプログラムでした。
 
時間を有効に使える点や費用の面では、オンライン講座などが選択肢になります。無料で手軽に学べるツールも増えています。まずは情報収集が大事です。自分にあった学び方を調べることから始めませんか?
 
ずっと同じ会社で働く場合も学び直しは必要です。社内で求められる職能は変化しています。時代の変化するスピードが加速し、それに応じた知識や技術を身につけることが片手間では難しくなりました。労働人口の減少が進む一方で仕事のIT化が進み、「今後不要になる職種」などと位置付けられる仕事もあります。
 
社内でのリスキリングを推進している事例としては、アマゾンなどの米国が先行しています。会社がスキルアップに投資することで従業員は技術を取得し、新たにエンジニアとしての職種にも配置転換が可能になります。
 
既存のマンパワーで生産性の向上につながるというスキームを構築しているようです。従業員にとっては賃金アップにつながりますので、この流れは加速しそうです。
 
さらにリタイア後に起業を想定している方は、資格者であることを自分の肩書にして信用アップに使うことを目的に資格取得に励むケースもあります。個人で信用を得る手段として、国家資格など認知度のある資格はとても有効です。これまでの経験に資格も付加して生かすことができれば、仕事の内容も多彩に広がるかもしれません。
 

マイペースで始めてみる

以上のような背景からリスキリングが注目されていますが、気をつける点が2つあります。
 
1つ目は、政府の肝入りとなると参入する事業者が増えることが考えられます。バリエーションも広がる一方で、玉石混交となる心配もあります。かつて、有名な英会話スクールが破たんした例もあります。一括で高額な受講料を支払う場合は特に、過去の実績や経営状況なども含めて選ぶことが大切です。
 
2つ目は、“自分にあっているか”をしっかり考えるという点です。リスキリングが注目されると「何か学ばないと時流に取り残されるのでは」という気持ちに駆られるかもしれません。
 
「仕事に結びつくようなこと」「将来役に立つこと」「資格を取る」など考えると、ハードルは高くなります。自分は始められていないのに、会社の同僚や懇意にしている友人が何かの勉強をしている、あるいは資格を取得したと聞くと焦ってしまいます。
 
筆者の相談者さまのなかでも、慌てて○○スクールに申し込んだものの途中で挫折した、という話は多いです。「自分にあっているか」「勉強したいモチベーションが続くか」など、冷静に判断することは必要です。
 
一方で「少し興味があるので、かじってみよう」くらいの軽い気持ちから飛び込むのもアリだと思います。筆者自身も「絶対FPになる!」という強い意志で勉強を始めたのではありませんでした。
 
勉強をしていると伝えた時の、友人のリアクションが印象に残っています。彼女は「お茶のお稽古と同じ感覚で勉強しているのね」と言いました。茶道を習う際、最初から師範を目指す人は少ないと思います。自分に合っていて興味が途絶えないがゆえに、長く続くこともあります。
 
長い人生、何がいつ役に立つか分かりません。趣味から派生して、仕事につながるケースも少なくありません。肩ひじを張らず、なるべく費用もかけず、ちょっと始めてみる姿勢も必要と感じます。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士