『奨学金』に関する不安・・奨学金ってどうやって申し込むの?
配信日: 2018.05.22 更新日: 2019.01.10
奨学金という言葉は皆さん知っているのですが、奨学金の内容に関しては漠然としか理解しておらず、不安に感じている人が少なくありません。
そこで、今までの14年間で受けた奨学金についての質問の中で、特に質問が多い事項について解説します。
今回は、日本学生支援機構の奨学金の、高校での申し込み方法について解説します。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
奨学金の種類
奨学金の質問で多いのが、日本学生支援機構の奨学金についてです。最もポピュラーな奨学金で、大学生の約3人に1人が利用しています。
奨学金には返還義務のある(借りる)貸与型と、返還義務のない(もらう)給付型の2種類があります。
奨学金の申し込み時期
「奨学金はどうやって申し込むのですか」と奨学金の申し込み方法についての質問をよく受けます。
奨学金は、高校や大学等を通じてインターネットで申し込みます。高校で申し込む方法を「予約採用」、大学等で申し込む方法を「在学採用」といいます。
高校で申し込む場合、第1回(第一種・第二種)は卒業年次の5月中旬~7月中旬、第2回(第二種)は10月下旬~11月下旬などです。
第2回以降募集しない高校もあります。卒業後2年以内の人も在籍していた高校で申し込めます。進学先が決まっていなくても構いません。
なお、高等学校等卒業程度認定試験の合格者は、直接、日本学生支援機構に申し込みます。給付奨学金は、高校では第1回目しか申し込めませんので注意しましょう。
予約申し込み後の流れ
第1回目に申し込むと、10月下旬に高校を通じて「採用候補者決定通知書」を交付されます。この段階では、正式な奨学生ではありません。
進学後、「進学届」を提出して正式に奨学生になります。「進学届」を提出しないと、奨学金を辞退したものと扱われます。
初回の振り込み時期は、4~6月のいずれかとなっています。なお、採用候補者であっても進学先が奨学金の対象校でない場合は、奨学金を利用できませんので注意しましょう。
無認可校や各種学校、専門学校の一部の学科は奨学金の対象ではありませんので留意してください。
進学後は毎年、「奨学金継続願」を提出します。専門学校や私大理系、芸術系はアルバイトの時間の確保が難しいです。
アルバイトに精を出しすぎ留年すると、奨学金を打ち切られる可能性がありますので気を付けてください。
貸与型奨学金のポイント
貸与型には、無利子の第一種奨学金、有利子の第二種奨学金、有利子の入学時特別増額貸与奨学金があります。以下、予約採用の場合を解説します。
申し込み基準として、学力基準と家計基準があります。学力基準について第一種奨学金は、高校1年から申し込み時までの成績が5段階評価で平均3.5以上必要です。
ただし、低所得世帯の生徒についての成績基準は実質的に撤廃されています。
第二種奨学金は第一種奨学金よりも基準が緩やかで、「学修意欲があり、学業を確実に修了できる見込み」があればよいので、ほとんどの生徒が該当します。
従来、第一種奨学金は予算の関係で申し込み基準を満たしていても採用されないケースが多くありました。
現在は予算が拡充したため、申し込み基準を満たせば全員採用の方向にあります。
2018年度入学者の場合、4人世帯の年収(所得)の上限額の目安は747万円(349万円)でした。第二種奨学金の基準は、第一種より緩やかです。
第一種奨学金と第二種奨学金の両方を借りる場合は、第一種奨学金の家計基準よりも厳しくなっています。
第一種奨学金の貸与月額は、学校の種別、通学形態等により、6.4~2万円、第二種奨学金は2~12万円(1万円単位)から任意の金額を選びます。
ただし、第一種奨学金の最高月額は、第一種奨学金と第二種法学金を借りる場合の家計基準を満たしていなければなりません。
第二種奨学金の12万円を選択した場合は、私大の医学・歯学課程4万円、私大の薬学・獣医学課程2万円の増額ができます。
入学時増額貸与奨学金は、低所得世帯だけが利用できます。この奨学金は単独での利用はできません。また、国の教育ローンが使用できる場合は利用できません。
貸与月額は一時金で10~50万円(10万円単位)です。
入学時増額貸与奨学金が振り込まれるのは入学後ですが、採用候補者は、入学前の入学金等について労働金庫がつなぎ融資する制度があります。
申込時に選択した金額を超えて借りることはできませんので、50万円を選択しておくと良いでしょう。
給付型奨学金のポイント
給付型は、住民税非課税世帯や生活保護受給世帯、社会的養護を必要とする学生が利用できます。
社会的養護を必要とする学生以外は高校ごとの推薦枠があり、この推薦枠の範囲内で高校が定めた推薦基準により選考し日本学生支援機構に推薦します。
2018年度の給付人数は全国で2万人です。給付月額は2~4万円です。社会的養護を必要とする学生は、入学時に一時金として別途24万円が給付されます。
貸与型との併用ができますが、高校で卒業年次の第1回目にしか申し込めないなど貸与型とは異なる点がありますので知っておきましょう。
2つの利率算定方式
有利子の奨学金の利率は、卒業などの貸与終了時に決まります。つまり、在学中は無利息です。申し込み時には利率が決まらないので、利率は、年3%を超えないよう法令で定められています。
利率の算定方式は「利率固定方式」と、概ね5年ごとに利率が見直される「利率見直し方式」があります。2019年3月の利率は利率固定方式0.27%、利率見直し方式0.01%と非常に低利でした。
第二種奨学金の利率が高いと勘違いして、利用を諦めてしまう人がいるのは残念です。なお、利率の算定方式は貸与中変更可能です。
保証制度は機関保証がおすすめ
保証制度には、連帯保証人と保証人を選任する「人的保証」と、保証機関の保証を受ける「機関保証」があります。
機関保証は保証料が必要ですが、経済的に余裕のない家庭は自己破産の連鎖を防ぐために、機関保証をおすすめします。
なお、保証料を支払っているからといって「奨学金の返還をしなくても構わない」わけではありません。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。