【子ども1人10万円】2023年1月に始まる「出産クーポン」は子育て世帯の困窮解消になる?
配信日: 2022.12.06
本記事では、政府が新たに創設した「出産準備金」について、支給対象や内容について解説します。
執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)
2級ファイナンシャルプランナー
出産クーポンの内容と支給条件とは
出産クーポンは、2023年1月以降に妊娠もしくは出産した家庭に対して支給されます。出産クーポンの内容と支給される条件は、図表1のとおりです。
図表1
経済的な支援額 | 1人あたり10万円 |
支給形態 | 現金給付もしくはクーポン券で自治体ごとで判断 |
所得制限 | 制限なし |
出典:内閣府 物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策についてより筆者作成
2023年1月以降に子どもを出産した世帯に対して、妊娠・出産に関する用品や産前産後ケアに活用できる支援給付を行います。金額は子ども1人あたり10万円で、現金給付かクーポンでの支給となる見通しです。
10万円の出産クーポンを利用して、自治体の子育て支援窓口を利用してもらう狙いがあります。妊娠届と出生届の提出でそれぞれ5万円の給付となり、合計して10万円の給付となります。
給付対象となる世帯に所得制限は設けず、希望する自治体は現金での給付も可能です。また、2022年4月から12月に子どもを出産した世帯にも、出産クーポンは給付されます。ただし、支給額は5万円とする案で調整しているため、給付額が少なくなる可能性が高いです。
出産クーポンは、早ければ2022年度中にモデル事業として自治体で運用を開始します。
相次ぐベビー用品の値上げに困窮する子育て世帯の支援策となるか
2022年は、さまざまなベビー用品が値上がりしています。これまでに値上げされたベビー用品を見ると、以下のとおりです。
●ベビー用紙おむつ
●乳幼児用粉ミルク
●ベビーフード
●ベビーカー・チャイルドシート
ベビー用品が軒並み値上がりしたことは、子育て世帯の家計にも影響を与えています。図表2にあるとおり、子どもがいる世帯で2022年9月と2021年9月を比較すると「住居費」以外の項目で支出が増えていることが分かりました。
図表2
2022年9月 | 2021年9月 | 差額 | |
---|---|---|---|
消費支出額 | 約32万円 | 約30万円 | 約2万円 |
食料 | 約8万1000円 | 約7万7000円 | 約4000円 |
住居 | 約1万6000円 | 約2万円 | -約4000円 |
光熱・水道 | 約2万2000円 | 約2万円 | 約2000円 |
家具・家事用品 | 約1万3000円 | 約1万円 | 約3000円 |
被服及び履物 | 約9000円 | 約8000円 | 約1000円 |
保健医療 | 約1万3000円 | 約1万2000円 | 約1000円 |
交通・通信 | 約5万2000円 | 約4万7000円 | 約5000円 |
教育 | 約2万5000円 | 約2万5000円 | - |
教養娯楽 | 約3万円 | 約2万5000円 | 約5000円 |
出典:総務省 家計調査(2021年9月・2022年9月)より筆者作成
特に「教養娯楽」「交通・通信」「食費」に関しては、2021年9月に比べて4000円から5000円程度値上がりしています。また「光熱・水道」もエネルギー価格の高騰を受けて、2021年と比較して支出額が増えている状況です。
ベビー用品に限らず、物価高の影響によって家計の負担は重くなり、収束の見通しが立っていません。経済支援対策として打ち出された出産クーポンが、終わりの見えない家計の支えとなるのでしょうか。
出産クーポンが出生数の減少の歯止めとなるか
2023年1月にスタートする出産クーポンについて解説しました。2023年に妊娠、出産した子ども1人につき10万円がクーポンとして給付されます。妊娠届と出生届を提出することでクーポン券もしくは現金で給付される制度です。
クーポンは子ども用品や産前産後のケアに活用できるため、物価高で家計が圧迫されている状況をある程度解消する効果が期待できます。出産クーポンは、新型コロナウイルス感染症が原因で、出生数が低下している状況の改善を目的に導入された経済支援策です。
一方で、10万円の給付だけでは、出生数の減少を根本的には解決できないという意見もあります。子育て世帯が生活に困窮しないように、今後も継続的な支援が望まれます。
出典
内閣府 物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策
総務省統計局 家計調査
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー