更新日: 2019.01.10 その他暮らし
知らなきゃ損する!2018年4月から【フラット35】の借入対象費用が拡充された8項目とは?
今年4月からその制度が拡充されました。
Text:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
【フラット35】の概要
【フラット35】は、民間金融機関が住宅金融支援機構(以下「機構」と略称)と提携して提供する「全期間固定金利型」の住宅ローンで、全国300以上の金融機関が取扱っています。
主な商品概要(申込要件など)は機構が全国共通で定めていますが、ローンを提供する各金融機関によって、商品名・融資金利・融資手数料・申込時提出書類等は異なります。
全期間固定金利型ですので、変動金利(半年型)や当初固定金利型の住宅ローンに比べると金利は高めで、毎回の返済額も多くなります。
仮に世の中の金利が今後上がった場合でも借入時点の金利で固定されますので、毎回の返済額が増える心配はありません。今後もしも金利が下がる局面になったりすると、金利が固定されていることは逆にデメリットとなるわけです。
ちなみに最近の金利水準は、機構が次のとおり公表しています。
住宅金融支援機構 フラット35 金利情報https://www.simulation.jhf.go.jp/flat35/kinri/index.php/rates/top
金利以外にも、各民間金融機関が独自に取扱う住宅ローンと比べての長所・短所はいろいろとありますが、おなじみの住宅ローンのひとつといえるでしょう。
2018年4月から制度拡充された内容は?
この【フラット35】ですが、2018年4月(4月1日借入申込受付分)から制度が拡充されたことをご存じでしょうか。機構の公表内容を項目だけ記すと次のとおりです。
1.地域活性化型の拡充
2.借入対象費用の拡充
3.リノベ(性能向上リフォーム)の制度変更
4.アシューマブル(債務承継型)ローンなどの制度変更
このうち「借入対象費用の拡充」について詳しく見てみましょう。これまでは借入対象とならなかった費用のうち以下が対象として追加・拡充されました。
(1)金銭消費貸借契約証書に貼付した収入印紙代(買主負担分)
(2)登記の登録免許税
(3)登記のための司法書士報酬または土地家屋調査士報酬
(4)融資手数料(住宅ローン事務手数料)
(5)火災保険料(積立型商品を除く)及び地震保険料
(6)仲介手数料
(7)既存住宅売買瑕疵保険付保費用(中古住宅購入のみ)
(8)ホームインスペクション(住宅診断)費用
諸費用も、結構な金額になります
新たに借入対象となった各諸費用の実際の金額はケース・バイ・ケースですが、価格4000万円の物件とすると上記(1)(2)(3)(4)(5)の合計で100万円を超える場合も珍しくありません。
仲介業者を通して購入する場合、価格4000万円の物件でさらに上記(6)の仲介手数料だけでも約136万円になります。
各民間金融機関が取扱う住宅ローンでも、審査結果次第では上記のような各諸費用まで借入できる場合がこれまでもありましたが、公的な【フラット35】でも導入されたのは、大きな制度拡充でしょう。
もちろん、【借入金は返さなければならないので、余分に借入できるとしても、返済しなければならない金額がその分増えるだけ】なのは自明のこと。無理をした借り過ぎには、当然注意が必要です。
こんな考え方もあります
次のような2つのケースを考えてみましょう。
借入金額をできるだけ抑えて長年にわたる元利金の返済を少しでも減らすためには<ケース1>の方が有利ですが、虎の子の手持ち資金を50万円にまで減らしてしまうことには、精神的プレッシャーを多く感じる人も多いのでは?
子育て、自身や家族の健康状況、勤め先の業況やそこにおける自身の状況・・・長い人生で何が起きるかは誰もわかりません。
不測の事態が発生した場合への備えを考えると、(金額的にいくら位が妥当なのかは人それぞれだとしても)自己資金をある程度は手元に残しておきたいのが人情でしょう。
単なる経済合理性とか損得計算を超えた判断として、<ケース2>の方を選ぶ人も決して少なくはないと思われます。
まとめ
上記で<ケース2>の方を選んだ場合、借入金額は350万円増えます。
この増えた分の元利金の返済を【自己資金をより多く手元に残して、何があるかわからない長い人生へ備えるための〝安心料〟のコストなのか・・・】と悲嘆する必要は必ずしもないでしょう。
もちろん借り過ぎは禁物ですが、自己資金に余裕資金が将来積み上がってくれば借入金の一部繰上返済もできるのですから、無理なく返済可能な範囲内であれば、今回制度拡充された【フラット35】などもうまく活用しながら借入金と自己資金がバランスして併存する状況は、決して否定すべきものではありません。
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士,不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー