更新日: 2022.12.26 その他暮らし

家賃2万8000円の事故物件! 26歳の極貧会社員が救われた理由と、住んで気付いた「賃貸物件の恐ろしさ」とは?

家賃2万8000円の事故物件! 26歳の極貧会社員が救われた理由と、住んで気付いた「賃貸物件の恐ろしさ」とは?
事故物件サイトや事故物件に関する芸人など、さまざまな媒体でホラーの題材となるのが「事故物件」だ。事故物件になる原因は多種多様だが、特に他殺、自殺、孤独死などを忌避する人が大半ではないだろうか。
 
一方、人が命を絶った事故物件に「救われた」という人も少なからず存在する。現在は都内で暮らすHさん(32歳)もその1人だという。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

引っ越し資金もままならない状況だった

「激務で安月給、そのストレスで、残り少ないお金も飲み食いに使っていた中での引っ越し。それなのにお金の援助もなく、本当に先がみえない状況での引っ越し先探しでした」
 
現在は都内で営業として活躍しているHさんは、当時をそう振り返る。
 
Hさんが26歳のころは、地元の政令指定都市に新卒入社したメーカーで営業をしており、当時の手取りは16万円程度。住宅手当などは設けられていなかった。
 
そんな中、心機一転しようと引っ越しを決意。少し相場よりも高めの家賃のマンションに入居した3ヶ月後に事件が起きたという。
 
「就寝中の夜中に突然、上階の住人に『うるさいから静かにしてくれ』と押しかけられるようになり、せっかくの新居に住み続けられない状況になってしまったんです。管理会社にも対応してもらえなかったので、『もう引っ越すしかない』と思うほかなくなりました」
 
ただでさえ、安月給なのに引っ越したばかりでほとんど貯金は残っていなかった。Hさんはこのとき、「初期費用(2ヶ月分の費用を含む)を払える程度の貯金を残しておくべき」と学んだという。
 

思わずこぼした「事故物件でもいいので……」

一刻も早く引っ越したいがお金もない。ただ、政令指定都市の繫華街が勤務地のため家賃もワンルームで最低8万円程度はかかる。敷金や礼金を払うとなると、30万円程度は必要だが、当時のHさんに余力はほとんどなかったという。
 
家賃4万円程度の物件もあったが、築40年超で、外観や設備があまりにも古すぎた。また、毎日深夜まで働くため、遠距離の物件も選べない。
 
不動産屋のカウンターで困り果てたとき、ポロリと口からこぼれ落ちたのが「事故物件でもいいので、何かありませんか?」だったという。
 

家賃2万8000円。ピンチを救った事故物件

事故物件の物件情報はすぐに出てきたという。ロフト付きのワンルームのアパートで、お金に関わる条件は以下のとおりだ。
 

・築年数:12年
・家賃:2万8000円(管理費込み)
・仲介手数料:1万4000円
・敷金礼金:ゼロ
・フルリフォーム済み

 
「正直、見た瞬間『ここしかない』と思いました。職場からも歩けない距離ではないですし、内見に行ってもリフォーム済みなので、とてもきれいでしたから。『ロフトで首を吊ってなくなっていた』という事故物件となった理由を聞いても、当時は『自分の状況の方がヤバい』と思っていたので、特に気になりませんでした」
 
それから約1ヶ月後、Hさんは持ち物をほとんど売却し、親の自家用車を借りて自力で事故物件に引っ越した。そしてその後、約2年間、事故物件に住み続けて上京した。
 
金銭的には人生でどん底だったが、決意して引っ越した物件よりも、住まざるを得なかった事故物件の方が「住んで正解」だったとHさんは振り返る。
 
「いったん、事故物件に住んでみて気付いたのが『家賃のせいでお金が貯まらなかったのではないか』ということです。これまではなんとなく『月収の3分の1』という目安で決めていたのですが、それよりもはるかに少ない家賃の事故物件に住んでみても、生活はこれまでと全然変わらないし、お金は自然と貯まるしで、良いことだらけだったんです。だからこそ、20代後半で上京する目標もできましたし、資金も貯められましたしね。無理して住み続けることがいろいろな意味で恐ろしいと思います。」
 

事故物件も物件選びの条件の1つ

事故物件は、あくまでも物件選びの究極の一択だ。ただ、事故物件の中にも「近くに墓地がある」といった条件から、Hさんのように「物件で亡くなった方がいる」といったケースまでさまざまだ。さらに亡くなった理由に関しても、許容できる範囲は人それぞれだろう。
 
また、事故物件だけでなく、駅までの距離や築年数、設備といった諸条件についても「本当に必要なのか」という意識と、「万が一のトラブルに対応できる余力」に備えておくことが、引っ越し先選びでは重要ではないだろうか。
 
「住めばなんとかなりますよ」というHさんは現在、人生で最も家賃の高い物件に、事故物件で蓄えた貯金をさらに大きくして、十分な余力を残した上で住んでいる。
 
固定費、隣人トラブル、そして事故物件。物件一つで将来まで大きく変わってしまう。これこそが賃貸住宅の「本当の怖さ」なのかもしれない。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 

ライターさん募集