更新日: 2019.05.17 子育て

知らないと損! 無利子や低利で幅広い用途に活用できる、ひとり親家庭向けの貸付金

知らないと損! 無利子や低利で幅広い用途に活用できる、ひとり親家庭向けの貸付金
ひとり親家庭には就業支援、生活支援、経済的支援などさまざまな支援制度があります。
 
今回は、経済的支援の中から、無利子または低利で借入ができる、市区町村の母子父子寡婦福祉資金貸付金について解説します。
 
ひとり親家庭の人がこの貸付金を知らず、利用しないのはもったいないと思います。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

母子父子寡婦福祉資金貸付金とは

母子家庭の母、父子家庭の父などが利用できます。資金の種類は12種類あります。
 
子どもの進学・就業資金として、修学資金・修業資金・就職支度資金・就学支度資金。生活のための資金として生活資金。親の就業などの資金として、技能習得資金・就職支度資金・事業開始資金・事業継続資金。
 
そのほかの資金としては、医療介護資金・住宅資金・転宅資金・結婚資金があります。
 
貸付に関しての資金種別と内容、具体例は以下のとおりです。
 

・修学資金 扶養している子が高校、大学、短大、高等専門学校または専修学校に修学するのに必要な経費

具体例:授業料、教材費、通学費
 

・就学支度資金 扶養している子が小・中・高等学校、高等専門学校、修業施設ならびに短大、大学へ入学、入所する際に必要な経費

具体例:入学金、引越代
 

・修業資金 扶養している子が事業を開始または就職するために必要な知識技能を習得するのに必要な経費

具体例:授業料(大学等を除く)、自動車運転免許取得費
 

・就職支度資金 就職に際し必要な経費

具体例:スーツ代、通勤用自動車購入費
 

・事業開始資金 事業を開始するのに必要な経費

具体例:設備費、機械・材料費
 

・事業継続資金 事業を継続するのに必要な経費

具体例:商品・材料購入費
 

・技能習得資金 事業を開始し、または就職するために必要な知識技能を習得するのに必要な経費

具体例:授業料、自動車運転免許取得費
 

・医療介護資金 医療や介護を受けるのに必要な経費

具体例:医療費、保険料、介護サービス費等
 

・生活資金 知識技能を習得している期間または医療や介護を受けている期間中の生活を維持するのに必要な経費、養育費取得のための裁判費用

具体例:日常生活費
 

・住宅資金 住宅の補修・増改築等をするのに必要な経費

具体例:補修等にかかる経費
 

・転宅資金 転宅するために必要な経費で賃貸借契約により、入居の際の条件として要求される敷金、前家賃など

具体例:引越代、敷金、礼金
 

・結婚資金 扶養している子(孫、曾孫等を含む)の婚姻に際し必要な経費

具体例:披露宴代
 
貸付利率は、修学資金、就学支度資金、修業資金、就職支度資金(子の就職費用の場合)は連帯保証人の有無にかかわらず無利子です。そのほかの貸付金に関しては、連帯保証人を立てた場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は年1%の利子がかかります。
 
修学資金、就学支度資金、就職支度資金(子の就職費用の場合)、修業資金の場合は、子どもが連帯借受人となります。この場合、原則、連帯保証人は不要です。子ども本人が借りる場合は、償還能力のある母または父などが連帯保証人となります。
 
貸付限度額は資金の種類により異なります。
 
修学資金は月額27,000~96,000円。就学支度資金は40,600~590,000円。技能習得資金・修業資金は月額68,000円(自動車免許取得の場合、1回460,000円)。
 
就職支度資金は1回100,000円(通勤用自動車購入の場合330,000円)。医療介護資金は、医療の場合340,000円、介護の場合500,000円。
 
生活資金は、生活中心者は月額103,000円、そのほかは月額69,000円、知識技能習得の場合は月額141,000円、養育費取得にかかる裁判費用は一括1,236,000円。
 
住宅資金は1回500,000円(火災など特別な場合は2,000,000円)。転貸資金は1回につき260,000円。事業開始資金は2,850,000円(母子・父子福祉団体4,290,000円)。事業継続資金は1回1,430,000円。結婚資金は子1人につき300,000円です。
 
償還期間は、資金の種類により3~20年以内となっています。
 
なお、貸付金の種類、償還期間などは自治体により異なりますのでご注意ください。例えば大阪府内では、通勤不便地がないので自動車購入は認められていませんし、事業開始資金や事業継続資金は、事業リスクが高いことから新規貸付は行っていません。
 

教育資金を無利子で借りることができる

修学資金や就学支度金は、母子父子寡婦福祉資金の中でも比較的よく利用されていると思いますので、詳しく見てみましょう。
 
就学支度資金は、小中学校・高校・大学等の入学に際し必要となる被服の購入や入学金等に充てる資金です。修学資金は、高校・大学等の修学において必要となる授業料・教科書代・通学費等に充てる資金です。いずれも無利子で利用できます。
 
償還期間は据置期間6カ月後20年以内です(自治体により異なります)。
 
例えば、大学の場合、就学支度資金の貸付限度額は国公立自宅通学370,000円、国公立自宅外通学380,000円、私立自宅通学580,000円、私立自宅外通学590,000円です。
 
修学資金の貸付限度額(月額)は、国公立自宅通学67,500円、国公立自宅外通学76,500円、私立自宅通学81,000円、私立自宅外通学96,000円です。
 
なお、日本学生支援機構などの公的な貸付金と重複して利用できませんので、注意しましょう。自治体によっては、貸付限度額から日本学生支援機構貸付額を差し引いた差額の範囲内を行うケースもあります。
 
契約は、親が借受人となり、子どもが連帯借受人となります。この場合、原則、連帯保証人は不要です。ただし、自治体によっては連帯保証人を必要としているところもあります。
 

母子父子寡婦福祉資金貸付金の注意点

相談、面接、申請から融資まで1カ月以上かかる場合があります。入学金等に充てる就学支度金の貸付けを希望する場合は、学校への入学が決まっていなくとも事前審査をしてもらうことができます。
 
大学等の入学金等の納付期限は合格後1~2週間以内という学校が多いので、合格後に申請したのでは間に合いません。余裕をもって早めに相談に行きましょう。
 
返済について滞納してしまうと、年5%の違約金がかかります。また、長期滞納すると、民間の債権回収会社に債権回収が委託される場合があります。滞納には注意しましょう。病気や失業などで計画どおりに返済が難しくなった場合は、早めに担当窓口に相談しましょう。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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